Ⅵ-12.製造業で特定技能外国人を雇用する場合の注意点

製造業では、特定技能外国人の受入れが広く行われています。

従来は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」といった区分で説明されることが多かった分野ですが、現在は「工業製品製造業分野」として整理されています。

製造現場では、機械加工、組立て、検査、塗装、溶接、表面処理、電気電子機器の組立てなど、多様な工程があります。

しかし、製造業の会社であれば、どの業務でも特定技能外国人を配置できるわけではありません。

企業からは、次のような相談を受けることがあります。

・うちの工場は特定技能の対象になりますか
・製造業なら、どの工程でも働かせられますか
・技能実習から特定技能へ移行できますか
・製造業の協議会加入は必要ですか
・派遣や請負で働かせることはできますか
・検査や梱包だけを担当させてもよいですか
・特定技能2号へ移行できますか
・複数工程を担当させる場合はどうすればよいですか

製造業分野では、対象となる産業分類、業務区分、技能試験、技能実習との対応関係、協議会、雇用形態を慎重に確認する必要があります。

この記事では、製造業で特定技能外国人を雇用する場合の対象業務、業務区分、協議会、技能実習からの移行、派遣・請負、特定技能2号への移行について解説します。

工業製品製造業分野とは

工業製品製造業分野は、一定の製造業において、専門性・技能を有する外国人を受け入れる特定産業分野です。

経済産業省の資料では、工業製品製造業分野における特定技能外国人材の受入れについて、制度概要、対象業務、試験、協議会等が説明されています。
(出典:製造業における特定技能外国人材の受入れについて(工業製品製造業分野)、経済産業省ウェブサイトより)

製造業分野では、会社の業種、事業所の日本標準産業分類、外国人が従事する業務区分の組合せを確認することが重要です。

経済産業省は、特定技能外国人が活動を行う事業所の産業分類と、従事する業務区分で想定される組合せ表を公表しています。
(出典:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会、経済産業省ウェブサイトより)

製造業なら何でも対象になるわけではない

製造業の会社だからといって、すべての業務が特定技能の対象になるわけではありません。

確認すべき点は、次のとおりです。

・事業所が行っている産業分類
・外国人が実際に従事する工程
・業務区分
・技能試験の区分
・技能実習から移行する場合の職種・作業との対応
・付随業務の範囲
・本社業務や倉庫業務との区別

たとえば、製造業の会社であっても、本社で経理、人事、営業、通訳だけを行う場合は、工業製品製造業分野の特定技能業務とはいえません。

また、製造現場内の作業であっても、対象業務ではなく、単純な清掃や倉庫内作業だけを主たる業務にする場合は注意が必要です。

業務区分の確認

工業製品製造業分野では、複数の業務区分が設けられています。

外国人本人が合格した技能試験や、技能実習で良好修了した職種・作業が、実際に従事する業務区分と対応している必要があります。

確認する事項は、次のとおりです。

・技能試験の合格区分
・技能実習の職種・作業
・特定技能で従事する業務区分
・配置予定工程
・複数工程を担当する場合の主たる業務
・製造ライン変更時の影響
・事業所異動の可能性

技能試験に合格していても、その試験区分と実際の業務がずれていると、申請や更新で問題になります。

業務区分を誤ると、在留資格上の活動内容に合わない就労となる可能性があります。

技能実習から特定技能へ移行する場合

製造業では、技能実習から特定技能へ移行するケースが多くあります。

技能実習2号を良好に修了している場合、一定の要件の下で日本語試験が免除され、技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分に関連性があれば技能試験も免除されることがあります。

ただし、技能実習で行っていた作業と、特定技能で予定している作業が一致又は対応しているかを慎重に確認する必要があります。

特に次のような場合は注意します。

・技能実習時と異なる工程に配置する
・技能実習時と別の会社へ移る
・技能実習では補助作業が中心だった
・複数工程を担当させる
・検査や梱包など付随業務が中心になる
・技能実習の職種名だけで判断している

技能実習修了者だからといって、製造業分野のどの業務にも試験免除で移行できるわけではありません。

協議・連絡会への加入

工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる場合、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への関与が重要です。

経済産業省は、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会の運営要領、構成員、審査事項等を公表しています。
(出典:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会、経済産業省ウェブサイトより)

受入れ企業は、分野別の協議会・連絡会の手続き、業界団体等への加入要否、申請時に必要な分野別資料を確認する必要があります。

製造業では、事業所の産業分類と外国人の業務区分の組合せが審査上重要になるため、協議会関係資料や経済産業省の公表資料を確認することが大切です。

直接雇用が原則

特定技能外国人は、原則として受入れ企業が直接雇用します。

製造業では、請負、派遣、構内外注、グループ会社間の応援などが多いため、雇用形態と指揮命令関係に注意が必要です。

確認すべき点は、次のとおりです。

・雇用主は誰か
・賃金を支払う会社はどこか
・指揮命令を行う会社はどこか
・就業場所はどこか
・請負先の現場で働く場合、実態は派遣になっていないか
・グループ会社間の応援勤務があるか
・雇用契約書の就業場所と実態が一致しているか

特定技能では、雇用契約と実際の就労実態が一致していることが重要です。

名目上は自社雇用でも、実際には別会社の指揮命令下で働いている場合、労働者派遣や在留資格上の問題が生じる可能性があります。

報酬と処遇

製造業分野でも、特定技能外国人の報酬は、日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上である必要があります。

製造業では、技能、経験、交替勤務、夜勤、危険作業、資格、班長業務などにより給与差が生じることがあります。

確認すべき事項は、次のとおりです。

・基本給
・交替勤務手当
・深夜手当
・残業代
・技能手当
・資格手当
・賞与
・昇給
・控除項目
・寮費
・食費
・同等業務の日本人給与

外国人だけ低い賃金、手当なし、昇給なしといった取扱いは認められません。

給与規程、賃金台帳、同等業務の日本人との比較資料を整備します。

安全衛生教育

製造現場では、機械、工具、薬品、重量物、高温、騒音、粉じんなどの危険があります。

特定技能外国人には、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育が必要です。

特に次の事項を、本人が理解できる言語・方法で説明する必要があります。

・機械操作の手順
・保護具の着用
・立入禁止区域
・危険箇所
・緊急停止装置
・化学物質の取扱い
・重量物の持ち方
・熱中症対策
・火災時の対応
・労災発生時の報告
・ヒヤリハット報告

日本語で説明しただけで本人が理解していない場合、安全教育として不十分になる可能性があります。

製造業では、技能教育と安全教育を一体として行うことが重要です。

複数工程・多能工化

製造現場では、複数工程を担当させることがあります。

多能工化自体は現場の生産性向上に役立ちますが、特定技能では、担当する業務が認められた業務区分の範囲内であるかを確認する必要があります。

注意すべき点は、次のとおりです。

・主たる業務は何か
・複数工程が同じ業務区分内か
・本人の技能試験区分と合っているか
・安全教育を実施しているか
・工程変更を記録しているか
・業務内容変更届出が必要か

業務範囲を広げる場合は、現場の判断だけで進めず、人事・総務・行政書士等と確認することが望ましいです。

特定技能2号への移行

工業製品製造業分野は、特定技能2号の対象分野です。

ただし、全ての業務区分で特定技能2号へ移行できるわけではありません。

経済産業省の資料では、工業製品製造業分野における2号について、機械金属加工区分、電気電子機器組立て区分、金属表面処理区分が示されています。
(出典:製造業における特定技能外国人材の受入れについて(工業製品製造業分野)、経済産業省ウェブサイトより)

特定技能2号へ移行するには、2号評価試験や実務経験など、分野別に定められた要件を満たす必要があります。

1号で5年間働いたからといって、自動的に2号へ移行できるわけではありません。

企業は、長期雇用を考える場合、採用時から2号対象区分かどうか、技能向上の機会、実務経験の記録を確認しておく必要があります。

製造業で企業が準備すべきこと

製造業で特定技能外国人を受け入れる企業は、次の準備を行います。

・事業所の産業分類を確認する
・担当業務が対象業務区分に該当するか確認する
・技能試験区分を確認する
・技能実習からの移行では職種・作業との対応を確認する
・雇用契約を作成する
・日本人同等以上の報酬を設定する
・協議会・連絡会関係の手続きを確認する
・直接雇用であることを確認する
・請負・派遣との区別を整理する
・安全衛生教育を多言語又は分かりやすい方法で実施する
・複数工程を担当させる場合の業務範囲を確認する
・特定技能2号への移行可能性を検討する
・支援計画、登録支援機関、届出体制を整える

製造業では、現場の実態と申請書類が一致していることが非常に重要です。

まとめ

製造業で特定技能外国人を雇用する場合、工業製品製造業分野の対象業務、産業分類、業務区分、技能試験、協議会、雇用形態、安全衛生を慎重に確認する必要があります。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・製造業分野は現在「工業製品製造業分野」として整理されている
・製造業の会社だからといって、全ての業務が対象になるわけではない
・事業所の産業分類と外国人の業務区分の組合せを確認する必要がある
・技能試験区分と実際の担当業務が一致していることが重要である
・技能実習から移行する場合は、職種・作業との対応関係を確認する
・協議会・連絡会関係の手続きを確認する必要がある
・特定技能外国人は原則として直接雇用である
・請負、派遣、構内外注との関係に注意する
・報酬は日本人と同等以上でなければならない
・製造現場では安全衛生教育が特に重要である
・複数工程を担当させる場合は、業務区分と安全教育を確認する
・工業製品製造業分野は特定技能2号の対象だが、対象区分は限定される

製造業で特定技能外国人を受け入れる場合は、単に人手が足りない工程に配置するのではなく、制度上認められる業務と現場の実態を一致させることが大切です。

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・Ⅵ-6.特定技能で外国人を雇用する場合の必要書類
・Ⅵ-8.技能実習から特定技能へ移行する場合の流れ
・Ⅵ-18.特定技能・育成就労を受け入れる企業のコンプライアンス体制

参考資料・出典

製造業における特定技能外国人材の受入れについて(工業製品製造業分野) 経済産業省ウェブサイトより
製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 経済産業省ウェブサイトより
特定技能制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「特定技能」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針 出入国在留管理庁ウェブサイトより