製造業では、特定技能外国人の受入れが広く行われています。
従来は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」といった区分で説明されていましたが、現在は「工業製品製造業分野」として整理されています。
さらに、2026年6月1日以降、特定技能1号の受入れ対象は76産業分類、業務区分は17区分となっています。
製造現場には、機械加工、組立て、検査、塗装、溶接、表面処理、電気電子機器の組立てなど、多様な工程があります。しかし、製造業の会社であれば、どの事業所・工程でも特定技能外国人を配置できるわけではありません。
企業担当者が確認したい点として、次のようなものがあります。
- 自社工場は特定技能の対象になるか
- 製造業であれば、どの工程でも働かせられるか
- 技能実習から特定技能へ移行できるか
- JAIMや協議・連絡会に関する手続きは必要か
- 派遣や請負の形で働かせることができるか
- 検査や梱包だけを担当させてもよいか
- 特定技能2号へ移行できるか
- 複数工程を担当させる場合はどうすればよいか
工業製品製造業分野では、事業所の産業分類、外国人が担当する業務区分、技能試験、技能実習との対応関係、JAIMへの加入、雇用形態などを慎重に確認する必要があります。
この記事では、製造業で特定技能外国人を雇用する場合の対象業務、17の業務区分、JAIMへの加入、技能実習からの移行、派遣・請負、特定技能2号への移行などについて解説します。
※この記事は2026年9月時点の公表情報をもとに作成しています。対象となる産業分類や業務区分、受入れ手続きは改正されることがあるため、申請時には経済産業省及び出入国在留管理庁の最新情報をご確認ください。
1.工業製品製造業分野とは
工業製品製造業分野は、一定の製造業において、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を持つ外国人を受け入れる特定産業分野です。
2026年6月1日以降、工業製品製造業分野では、次の産業分類が受入れ対象となっています。
- 特定技能1号:76産業分類
- 特定技能2号:46産業分類
また、2027年4月1日に始まる育成就労制度については、76産業分類が受入れ対象として定められています。
製造業分野では、会社全体の事業内容だけでなく、外国人が実際に働く事業所の日本標準産業分類と、外国人が従事する業務区分との組合せを確認することが重要です。
経済産業省は、対象となる産業分類と業務区分の組合せを公表しています。
経済産業省「工業製品製造業分野で外国人の受入れ可能な産業分類・業務区分」
2.製造業の会社ならすべて対象になるわけではない
製造業を営んでいる会社だからといって、すべての事業所や業務が特定技能の対象になるわけではありません。
確認すべき点は、次のとおりです。
- 外国人が働く事業所の産業分類
- その事業所で実際に製造している製品
- 製造品の出荷実績などの事業実態
- 外国人が実際に従事する工程
- 特定技能の業務区分
- 合格した技能試験の区分
- 技能実習から移行する場合の職種・作業との対応
- 付随的に担当させる業務の範囲
- 本社業務・倉庫業務・物流業務との区別
法人の登記事項証明書や会社案内に「製造業」と記載されているだけでは、工業製品製造業分野の対象になるとは限りません。
例えば、自動車部品を扱う会社であっても、外国人が働く事業所で実際に対象製品を製造しているのか、単なる販売・保管・物流の拠点なのかによって判断が異なります。
また、自動車部品の製造と自動車の点検・整備は、制度上同じ分野ではありません。自動車整備を主な業務とする場合は、「自動車整備分野」の要件を別に確認する必要があります。
3.工業製品製造業分野には17の業務区分がある
工業製品製造業分野の特定技能1号では、2026年1月の閣議決定による追加後、次の17業務区分が設けられています。
- 機械金属加工
- 電気電子機器組立て
- 金属表面処理
- 紙器・段ボール箱製造
- コンクリート製品製造
- RPF製造
- 陶磁器製品製造
- 印刷・製本
- 紡織製品製造
- 縫製
- 電線・ケーブル製造
- プレハブ住宅製品製造
- 家具製造
- 定形・不定形耐火物製造
- 生コンクリート製造
- ゴム製品製造
- かばん製造
外国人本人が合格した技能試験や、良好に修了した技能実習の職種・作業が、実際に従事する業務区分と対応している必要があります。
確認する事項は、次のとおりです。
- 技能試験の合格区分
- 技能実習の職種・作業
- 特定技能で従事する業務区分
- 配置を予定している工程
- 複数工程を担当する場合の主たる業務
- 製造ラインを変更する場合の影響
- 別の事業所へ異動する可能性
技能試験に合格していても、その試験区分と実際の業務が一致していなければ、在留資格申請や在留期間更新で問題になる可能性があります。
4.検査・梱包・清掃などの付随業務に注意する
特定技能外国人は、同じ事業所で同じ業務に従事する日本人が通常行っている関連業務について、付随的に従事できる場合があります。
ただし、関連業務だけを専ら行わせることはできません。
次のような配置には注意が必要です。
- 検査だけを継続して担当させる
- 製品の梱包だけを担当させる
- 倉庫内での運搬・仕分けだけを行わせる
- 工場内の清掃だけを行わせる
- 材料や完成品の積卸しだけを行わせる
- 対象となる製造工程にほとんど従事していない
検査や梱包については、事業所の産業分類や業務区分によって取扱いが異なる場合があります。製造現場で行われる作業だから当然に認められると判断せず、主たる業務との関係を確認する必要があります。
5.技能実習から特定技能へ移行する場合
製造業では、技能実習から特定技能1号へ移行するケースが多くあります。
技能実習2号を良好に修了している場合、原則として特定技能1号に必要な日本語試験が免除されます。
また、技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分に関連性がある場合には、技能試験も免除されることがあります。
ただし、次のような場合は注意が必要です。
- 技能実習時と異なる工程に配置する
- 技能実習時とは別の会社・事業所へ移る
- 技能実習では補助的な作業が中心だった
- 複数の製造工程を担当させる
- 検査・梱包などの関連業務が中心になる
- 技能実習の職種名だけで対応関係を判断している
- 移行先の事業所が対象産業分類に該当しない
技能実習2号を良好に修了した人であっても、工業製品製造業分野のすべての業務へ、無条件で試験免除により移行できるわけではありません。
技能実習から特定技能への移行については、次の記事もご参照ください。
6.すべての受入れ事業所についてJAIMへの加入が必要
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる場合には、特定技能外国人が働くすべての事業所について、一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)への加入が必要です。
JAIMは、工業製品製造業分野の特定技能制度を運営する「特定技能外国人受入事業実施法人」として、経済産業大臣の登録を受けた法人です。
複数の工場・事業所で特定技能外国人を受け入れる企業は、本社だけが加入すればよいとは限りません。実際に外国人を受け入れる事業所ごとに、加入対象や必要手続きを確認する必要があります。
在留資格申請を準備する際には、次の点を確認します。
- 外国人が勤務する事業所がJAIMへ加入しているか
- 事業所の産業分類が受入れ対象か
- JAIMへの届出・登録内容と申請内容が一致しているか
- 外国人を別の事業所へ異動させる場合に追加手続きが必要か
- JAIMの会費・手続期間を採用計画に織り込んでいるか
入会方法や最新の必要書類については、JAIMの公式サイトをご確認ください。
7.協議・連絡会で定められた措置にも注意する
工業製品製造業分野では、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会が設置されています。
現在は、受入れ事業所についてJAIMへの加入が必要となっていますが、それとは別に、協議・連絡会で定められた事項や、特定の産業分類に関する上乗せ基準も確認する必要があります。
特に、次の産業分類で特定技能外国人を受け入れる場合には、追加措置が定められています。
- 中分類11「繊維工業」
- 中分類15「印刷・同関連業」
- 小分類484「こん包業」
該当する事業所では、通常の受入れ要件だけで判断せず、経済産業省が公表する最新の措置・審査事項を確認する必要があります。
8.直接雇用が必要
工業製品製造業分野では、特定技能外国人を受入れ企業が直接雇用する必要があります。
製造業では、請負、構内外注、労働者派遣、グループ会社間の応援勤務などが多いため、雇用関係と指揮命令関係に注意しなければなりません。
確認すべき点は、次のとおりです。
- 雇用主はどの会社か
- 賃金を支払う会社はどこか
- 日常的に指揮命令を行う会社はどこか
- 外国人が実際に働く事業所はどこか
- 請負先の現場で働く場合、実態が労働者派遣になっていないか
- グループ会社間で応援勤務を行わせていないか
- 雇用契約書・申請書に記載した就業場所と実態が一致しているか
- 実際の就業場所が対象産業分類に該当するか
請負契約のもとで他社の構内で業務を行うことが、直ちにすべて禁止されるわけではありません。
ただし、注文主側が外国人へ直接作業指示を出している場合には、偽装請負や無許可の労働者派遣と判断される可能性があります。また、実際の活動場所や事業内容が工業製品製造業分野の要件を満たすかについても確認が必要です。
9.報酬と処遇を確認する
工業製品製造業分野でも、特定技能外国人の報酬は、同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上でなければなりません。
製造業では、技能、経験、交替勤務、夜勤、危険作業、保有資格、班長業務などによって給与差が生じることがあります。
次の事項を確認します。
- 基本給
- 交替勤務手当
- 深夜勤務手当
- 時間外・休日労働の割増賃金
- 技能手当
- 資格手当
- 役職手当
- 賞与
- 昇給
- 給与からの控除
- 寮費・食費
- 同等業務に従事する日本人の給与
賃金に差がある場合は、経験、技能、担当業務、責任の程度などに基づいて合理的に説明できる必要があります。
給与規程、賃金台帳及び比較対象となる日本人労働者の資料を整理しておくことが重要です。
10.安全衛生教育を理解できる方法で行う
製造現場には、機械、工具、薬品、重量物、高温、騒音、粉じんなど、さまざまな危険があります。
特定技能外国人にも、労働安全衛生法などに基づく安全衛生教育が必要です。
特に次の事項を、外国人本人が理解できる言語・方法で説明します。
- 機械操作の手順
- 保護具の着用方法
- 立入禁止区域
- 危険箇所
- 緊急停止装置
- 化学物質の取扱い
- 重量物の安全な運搬方法
- 熱中症対策
- 火災・地震発生時の対応
- 労働災害発生時の報告
- ヒヤリハットの報告方法
日本語で説明しただけで外国人本人が理解していなければ、実効的な安全教育とはいえません。
図、写真、動画、実演、多言語資料などを活用し、本人が理解したことまで確認する必要があります。
11.複数工程・多能工化に注意する
製造現場では、生産性の向上や人員配置の都合から、一人の従業員に複数の工程を担当させることがあります。
多能工化自体が禁止されるわけではありませんが、特定技能外国人が担当する業務は、認められた業務区分の範囲内でなければなりません。
次の点を確認します。
- 主たる業務は何か
- 複数工程が同じ業務区分に含まれるか
- 本人の技能試験区分と対応しているか
- 関連業務だけが中心になっていないか
- 工程ごとに必要な安全教育を実施しているか
- 工程変更の経緯を記録しているか
- 雇用条件・申請内容の変更や届出が必要か
担当工程を変更する場合は、製造現場だけの判断で進めず、人事・総務部門や専門家と確認することが重要です。
12.特定技能2号への移行
工業製品製造業分野は、特定技能2号の対象分野です。
ただし、特定技能2号の対象となるのは、現在のところ次の3業務区分です。
- 機械金属加工
- 電気電子機器組立て
- 金属表面処理
特定技能2号へ移行するには、所定の試験への合格と実務経験など、分野別に定められた要件を満たす必要があります。
特定技能1号として5年間働けば、自動的に特定技能2号へ移行できるわけではありません。
長期雇用を予定する企業は、採用時から次の事項を確認しておく必要があります。
- 担当業務が特定技能2号の対象区分か
- 2号移行に必要な試験
- 必要となる実務経験
- 現場での指導・管理経験を積めるか
- 実務経験を証明する記録を残しているか
- 在留期間が終了するまでの受験計画
13.育成就労制度との関係
2027年4月1日から、工業製品製造業分野でも育成就労制度が始まります。
工業製品製造業分野では、育成就労外国人の受入れ対象として76産業分類、業務について17区分が定められています。
また、2026年6月30日には、JAIMが工業製品製造業分野の「育成就労外国人受入事業実施法人」として登録されています。
育成就労は、原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度です。現在の技能実習制度の名称を変更しただけの制度ではありません。
企業には、認定を受けた育成就労計画に基づいて、技能教育、日本語教育、適正な労務管理及び外国人保護を行うことが求められます。
育成就労制度については、次の記事もご参照ください。
14.製造業の企業が準備すべきこと
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、次の準備を行います。
- 外国人が働く事業所の産業分類を確認する
- 事業所で対象製品を実際に製造していることを確認する
- 担当業務が対象業務区分に該当するか確認する
- 技能試験の合格区分を確認する
- 技能実習からの移行では、職種・作業との対応を確認する
- 特定技能雇用契約を作成する
- 日本人と同等以上の報酬を設定する
- 受入れ事業所についてJAIMへの加入手続きを行う
- 協議・連絡会で定められた追加措置を確認する
- 直接雇用であることを確認する
- 請負と労働者派遣の区別を整理する
- 安全衛生教育を理解できる方法で実施する
- 複数工程を担当させる場合の業務範囲を確認する
- 特定技能2号への移行可能性を検討する
- 支援計画、登録支援機関及び届出の体制を整える
製造業では、現場の実態、JAIMへの登録内容、雇用契約及び在留資格申請書類が一致していることが非常に重要です。
特定技能の申請書類については、次の記事もご参照ください。
15.製造業の特定技能申請に関するご相談
工業製品製造業分野の申請では、会社が製造業に該当するというだけでは不十分です。
外国人が働く事業所の産業分類、実際に製造している製品、担当業務、技能試験区分、JAIMへの加入状況及び雇用形態を確認する必要があります。
「自社工場が受入れ対象になるか分からない」「技能実習から特定技能へ移行させたい」「自動車部品工場の工程が対象業務に該当するか確認したい」「JAIMへの加入と在留資格申請をどの順番で進めるべきか整理したい」という企業の方は、当事務所へご相談ください。
ご相談の内容やお問い合わせ方法については、次のページをご確認ください。
16.まとめ
製造業で特定技能外国人を雇用する場合は、工業製品製造業分野の対象産業分類、業務区分、技能試験、JAIM、雇用形態、安全衛生などを慎重に確認する必要があります。
この記事のポイントは、次のとおりです。
- 2026年6月1日以降、特定技能1号の受入れ対象は76産業分類である
- 特定技能1号の対象業務は17区分である
- 製造業の会社であっても、すべての事業所・業務が対象になるわけではない
- 事業所の産業分類と外国人の業務区分の組合せを確認する
- 技能試験区分と実際の担当業務を一致させる
- 技能実習からの移行では、職種・作業との関連性を確認する
- 受入れ対象となるすべての事業所についてJAIMへの加入が必要である
- 特定の産業分類では追加措置も確認する
- 工業製品製造業分野では直接雇用が必要である
- 請負、労働者派遣、構内外注の実態に注意する
- 検査・梱包・清掃などの関連業務だけを担当させない
- 製造現場では理解できる方法による安全衛生教育が重要である
- 特定技能2号の対象は3業務区分であり、自動的に移行できるわけではない
工業製品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、単に人手が不足する工程へ配置するのではなく、制度上認められる業務と実際の就労内容を一致させることが大切です。
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