建設分野は、特定技能制度の中でも特に手続きが複雑な分野です。
通常の特定技能の要件に加え、国土交通省による「建設特定技能受入計画」の認定、建設キャリアアップシステム、月給制、報酬水準、受入人数制限、建設業特有の安全衛生教育など、多くの確認事項があります。
企業からは、次のような相談を受けることがあります。
・建設業許可があれば特定技能外国人を受け入れられますか
・入管申請だけでよいですか
・国土交通省の受入計画認定とは何ですか
・建設キャリアアップシステムへの登録は必要ですか
・日給制や時給制で雇用できますか
・技能実習から建設分野の特定技能へ移行できますか
・現場が変わるたびに届出が必要ですか
・建設分野で特定技能2号へ移行できますか
建設分野では、申請準備に時間がかかります。
特に、受入計画認定、建設キャリアアップシステム、特定技能外国人受入事業実施法人への加入などは、入管申請の直前では間に合わないことがあります。
この記事では、建設分野で特定技能外国人を雇用する場合の対象業務、受入計画認定、報酬、月給制、CCUS、安全衛生、人数制限、2号移行について解説します。
建設分野の特定技能とは
建設分野の特定技能は、建設業における人手不足に対応するため、一定の技能を有する外国人を受け入れる制度です。
建設分野では、業務区分が大きく次の3区分に整理されています。
・土木
・建築
・ライフライン・設備
国土交通省は、建設分野の特定技能制度について、申請の手引き、様式、システム操作方法、受入計画認定申請の時期等を公式ページで案内しています。
(出典:申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】、国土交通省ウェブサイトより)
建設分野では、外国人本人の技能だけでなく、受入企業の体制が厳格に確認されます。
入管申請の前に国土交通省の手続きが必要
建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合、出入国在留管理庁への申請だけでは足りません。
受入企業は、外国人に対する報酬額等を記載した「建設特定技能受入計画」について、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
国土交通省は、建設分野での特定技能外国人受入れに当たり、出入国在留管理庁への申請前に、建設特定技能受入計画の認定を受ける必要があると説明しています。
(出典:5企業9名分の「建設特定技能受入計画」を初認定、国土交通省ウェブサイトより)
国土交通省の認定を受けた後、又は並行して、出入国在留管理庁への在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行います。
しかし、国土交通省の認定を受けたからと言って、それだけで在留資格が許可されるわけではありません。
最終的な在留資格の許否は、出入国在留管理庁で審査されます。
受入計画認定申請は早めに行う
建設分野では、受入計画認定申請に時間がかかります。
国土交通省は、技能実習から継続して特定技能へ移行する場合は、技能実習計画の修了期日の6か月前から受入計画認定申請が可能であり、それ以外の場合は雇用開始日の概ね6か月前から申請可能と案内しています。
また、受入計画認定申請から認定までは1か月半から2か月程度を見込む必要があり、地方によってはさらに数か月かかることがあるとされています。
(出典:申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】、国土交通省ウェブサイトより)
建設分野では、入管申請だけを予定していると、国土交通省の認定手続きが間に合わないことがあります。
雇用開始予定日から逆算して、余裕を持って準備します。
建設キャリアアップシステムへの登録
建設分野では、建設キャリアアップシステムへの登録が重要です。
国土交通省の資料では、建設特定技能受入計画の主な認定条件として、特定技能になる外国人の建設キャリアアップシステム技能者登録が完了していることが示されています。
(出典:建設特定技能受入計画のオンライン申請について、国土交通省ウェブサイトより)
建設キャリアアップシステムへの登録には時間がかかることがあります。
受入計画認定申請前に必要となる登録や加入手続きについて、早めに確認します。
特定技能外国人受入事業実施法人への加入
建設分野では、特定技能外国人受入事業実施法人への加入も重要です。
国土交通省の手引きページでも、特定技能外国人受入事業実施法人への加入や建設キャリアアップシステムへの登録には一定の時間がかかるため、計画的に手続きを行うよう案内されています。
(出典:申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】、国土交通省ウェブサイトより)
建設分野は、他分野と比べて業界団体・制度関係者との連携が特に重要です。
月給制が求められる
建設分野では、特定技能外国人に対して、月給制により安定的に報酬を支払うことが重要な認定基準とされています。
国土交通省は、建設特定技能受入計画の主な審査基準として、同一技能の日本人と同等額以上の賃金を支払うこと、月給制により報酬を安定的に支払うこと、建設キャリアアップシステムに登録していること等を挙げています。
(出典:5企業9名分の「建設特定技能受入計画」を初認定、国土交通省ウェブサイトより)
建設業では、日給月給制や日払い、現場ごとの変動給が使われることもあります。
しかし、特定技能外国人については、制度上の要件に適合するよう、月給制・安定的支払いを前提に雇用契約を整える必要があります。
報酬は日本人同等以上
建設分野では、報酬水準が特に重要です。
単に最低賃金を上回るだけでは足りません。
同一技能の日本人と同等額以上であることが求められます。
確認すべき事項は、次のとおりです。
・基本給
・技能、経験
・同等技能の日本人賃金
・地域水準
・職種別水準
・手当
・賞与
・残業代
・控除項目
・寮費、食費
・月給制で安定的に支払われるか
建設分野では、外国人材の大都市圏集中を防ぐ観点からも、報酬額の適正性が確認されます。
受入人数制限
建設分野では、受入人数にも注意が必要です。
国土交通省の資料では、1号特定技能外国人と外国人建設就労者の合計人数が、常勤職員数を超えないことが主な審査基準として示されています。
(出典:5企業9名分の「建設特定技能受入計画」を初認定、国土交通省ウェブサイトより)
小規模な建設会社では、受入れ可能人数に限りがあります。
採用予定人数を決める前に、常勤職員数と既に受け入れている外国人材の人数を確認します。
建設業許可と対象業務
建設分野では、特定技能外国人が従事する業務内容が建設業の工事であることが求められます。
国土交通省の資料では、受入計画の主な認定条件として、特定技能外国人が就労する業務内容が建設業の工事であることが示されています。
(出典:建設特定技能受入計画のオンライン申請について、国土交通省ウェブサイトより)
受入れ前には、次の点を確認します。
・建設業許可の有無
・許可業種
・外国人が従事する工事内容
・現場での具体的作業
・業務区分
・技能試験又は技能実習との対応関係
・元請・下請の立場
・現場管理体制
建設会社で働くからといって、資材倉庫作業、営業、事務、本社管理だけを行う場合は、建設分野の対象業務とはいえません。
安全衛生教育が特に重要
建設現場は、墜落、転落、重機、感電、崩壊、熱中症などの危険がある職場です。
特定技能外国人には、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育を適切に実施する必要があります。
確認すべき点は、次のとおりです。
・入場時教育
・特別教育
・技能講習
・保護具の使用
・高所作業
・重機周辺作業
・玉掛け、足場、フルハーネス等の教育
・KY活動
・熱中症対策
・事故発生時の報告
・日本語が不十分な場合の多言語説明
建設分野では、外国人本人が危険を理解できているかが非常に重要です。
「説明した」だけでなく、「理解している」状態を作る必要があります。
現場変更・配置変更
建設業では、現場が頻繁に変わります。
現場が変わるたびに、住居、通勤、作業内容、元請、作業環境、安全教育が変わることがあります。
確認すべき点は、次のとおりです。
・雇用契約上の就業場所
・現場ごとの作業内容
・業務区分の範囲内か
・安全教育の実施
・通勤時間
・宿舎
・労働時間管理
・元請との関係
・支援担当者との連絡
・届出の要否
建設分野では、現場任せにせず、会社として外国人材の配置と安全を管理する必要があります。
技能実習から特定技能へ移行する場合
建設分野でも、技能実習から特定技能へ移行するケースがあります。
この場合、技能実習の職種・作業と、建設分野の業務区分との対応関係を確認します。
また、建設分野では、技能実習修了時期、受入計画認定、建設キャリアアップシステム、入管申請のタイミングを調整する必要があります。
国土交通省は、技能実習から継続して特定技能へ移行する場合、技能実習計画の修了期日の6か月前から建設特定技能受入計画認定申請が可能と案内しています。
(出典:申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】、国土交通省ウェブサイトより)
技能実習終了間際に準備を始めると、就労できない空白期間が生じる可能性があります。
特定技能2号への移行
建設分野は、特定技能2号の対象分野です。
特定技能2号へ移行するには、2号評価試験や実務経験など、分野別に定められた要件を満たす必要があります。
2号になると、通算在留期間の上限がなくなり、要件を満たせば配偶者と子の家族帯同も可能になります。
ただし、1号で5年間働けば自動的に2号へ移行できるわけではありません。
企業は、将来的に2号移行を目指す外国人について、技能向上、現場経験、指導経験、安全教育、業務記録を計画的に整備することが重要です。
建設分野で企業が準備すべきこと
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、次の準備が必要です。
・対象業務が建設工事に該当するか確認する
・業務区分を確認する
・技能試験又は技能実習との対応関係を確認する
・建設特定技能受入計画を作成する
・国土交通省の認定を受ける
・建設キャリアアップシステムへ登録する
・特定技能外国人受入事業実施法人への加入を確認する
・月給制で雇用契約を作成する
・日本人同等以上の報酬を設定する
・受入人数制限を確認する
・安全衛生教育を実施する
・現場変更時の管理体制を作る
・支援計画を作成する
・登録支援機関との連携体制を整える
・在留資格申請の時期を逆算する
建設分野では、入管申請だけでなく、国土交通省手続きと現場管理を一体で進める必要があります。
まとめ
建設分野で特定技能外国人を雇用する場合、他分野よりも追加手続きと管理事項が多くなります。
この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。
・建設分野では、土木、建築、ライフライン・設備の業務区分がある
・出入国在留管理庁への申請だけでなく、国土交通省の建設特定技能受入計画認定が必要である
・受入計画認定申請は、雇用開始予定日から逆算して早めに行う必要がある
・建設キャリアアップシステムへの登録が重要である
・特定技能外国人受入事業実施法人への加入も確認する
・報酬は同一技能の日本人と同等額以上である必要がある
・建設分野では月給制による安定的な報酬支払いが重要である
・受入人数制限に注意する
・建設業の工事に該当する業務であることが必要である
・安全衛生教育を本人が理解できる方法で行う必要がある
・技能実習から移行する場合は、6か月前から準備できる手続きがある
・建設分野は特定技能2号の対象であるが、自動移行ではない
建設分野の特定技能では、制度上の書類だけでなく、現場で安全に働ける体制が不可欠です。
受入れを検討する企業は、採用決定前に、国土交通省手続き、CCUS登録、報酬、現場管理、安全教育を確認することが大切です。
次に読みたい関連記事
・Ⅵ-1.特定技能制度の基本|受入れ企業が確認すべきこと
・Ⅵ-2.特定技能1号と特定技能2号の違い
・Ⅵ-6.特定技能で外国人を雇用する場合の必要書類
・Ⅵ-8.技能実習から特定技能へ移行する場合の流れ
・Ⅵ-18.特定技能・育成就労を受け入れる企業のコンプライアンス体制
参考資料・出典
・申請の手引き、様式、システム操作方法【特定技能制度(建設分野)】 国土交通省ウェブサイトより
・5企業9名分の「建設特定技能受入計画」を初認定 国土交通省ウェブサイトより
・建設特定技能受入計画のオンライン申請について 国土交通省ウェブサイトより
・特定技能制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格「特定技能」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
