Ⅵ-14.宿泊分野で特定技能外国人を雇用する場合の注意点

宿泊分野では、ホテル、旅館、リゾート施設などで、特定技能外国人の受入れが行われています。

訪日外国人旅行者の増加、地方観光地の人手不足、フロント・接客・レストランサービスなどの人材不足を背景に、宿泊業で外国人材を活用したいという相談が増えています。

一方で、宿泊分野では、対象となる宿泊サービスの範囲、旅館業法上の施設、フロント・接客・レストランサービスの業務範囲、協議会加入、深夜勤務、多言語接客、ハラスメント対策などを確認する必要があります。

企業からは、次のような相談を受けることがあります。

・ホテルなら特定技能外国人を雇用できますか
・フロント業務だけを任せてもよいですか
・客室清掃だけでも宿泊分野になりますか
・ホテル内レストランで働く場合、宿泊分野ですか、外食業ですか
・旅館業法上の許可は関係しますか
・宿泊分野特定技能協議会への加入は必要ですか
・特定技能2号へ移行できますか
・外国人を夜勤に入れてもよいですか

宿泊分野では、業務が多岐にわたるため、実際に担当させる仕事が宿泊分野の対象業務に該当するかを整理することが重要です。

この記事では、宿泊分野で特定技能外国人を雇用する場合の対象業務、協議会、業務範囲、接客、日本語、夜勤、2号移行について解説します。

宿泊分野の特定技能とは

宿泊分野の特定技能は、宿泊施設において、宿泊サービスの提供に従事する外国人を受け入れる制度です。

制度概要資料では、宿泊分野の業務として、宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供が示されています。
(出典:外国人労働者に関する制度概要、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

宿泊分野では、宿泊客へのサービス提供を中心に、フロント、予約、接客、館内案内、レストランサービス、企画・広報など、宿泊施設の運営に関わる業務が対象となります。

対象となる主な業務

宿泊分野で特定技能外国人が従事できる主な業務は、次のようなものです。

・フロント業務
・チェックイン、チェックアウト対応
・予約受付
・館内案内
・接客
・企画、広報
・宿泊プランの案内
・レストランサービス
・宴会サービス
・売店、館内サービス
・客室管理に関する業務
・宿泊サービスに付随する業務

宿泊施設では、複数の業務を組み合わせて担当することが一般的です。

そのため、特定技能外国人にも、宿泊サービス全般の中で複数業務を担当させることがあります。

ただし、対象業務と関係の薄い仕事だけを主たる業務にすることは避ける必要があります。

客室清掃だけを主たる業務にする場合

宿泊施設では、客室清掃業務も重要です。

しかし、外国人を客室清掃だけに従事させる場合、それが宿泊分野として適切か、ビルクリーニング分野との関係も含めて確認が必要です。

宿泊分野の対象業務は、宿泊サービスの提供です。

客室清掃が宿泊サービスに付随する業務として行われる場合は問題になりにくいですが、清掃だけを専門に行い、実態としてビルクリーニングや清掃請負に近い場合には、分野の選択を慎重に検討する必要があります。

ホテル内レストランで働く場合

ホテルや旅館の中には、レストラン、宴会場、カフェ、バーを併設している施設があります。

宿泊分野では、宿泊施設におけるレストランサービス等も対象業務に含まれます。

ただし、ホテル内レストランであっても、実態として外食業務だけに従事する場合や、宿泊施設とは独立した外食事業として運営されている場合は、外食業分野との関係を確認する必要があります。

確認すべき点は、次のとおりです。

・雇用主
・勤務場所
・レストランの運営主体
・宿泊施設の一部としての業務か
・宿泊客へのサービスか
・一般外来客向けの外食業務か
・担当業務の割合
・宿泊分野の技能試験区分との整合性

宿泊分野か外食業分野かを誤ると、試験や申請書類に影響します。

旅館業法上の施設であること

宿泊分野では、実際に宿泊施設として営業していることが前提になります。

ホテル、旅館、簡易宿所など、施設の営業形態、許可、事業実態を確認します。

確認すべき事項は、次のとおりです。

・旅館業法上の営業許可
・施設名称
・所在地
・営業形態
・宿泊サービスの内容
・客室数
・レストラン、宴会場の有無
・外国人の勤務部署
・宿泊客へのサービス提供実態

単に不動産を保有している会社や、観光関連会社であるだけでは、宿泊分野の対象業務とはいえません。

外国人が実際に宿泊サービスの提供に従事する必要があります。

宿泊分野特定技能協議会

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる場合、宿泊分野特定技能協議会への加入が必要です。

観光庁は、宿泊分野特定技能協議会について、加入・登録内容変更・退会方法、電子申請方法、問い合わせ先等を案内しています。
(出典:宿泊分野特定技能協議会、観光庁ウェブサイトより)

協議会加入や登録変更は、e-Gov電子申請を利用して行う仕組みが案内されています。

受入れ前に、協議会加入の時期、必要書類、事務処理期間を確認しておくことが重要です。

宿泊分野評価試験と日本語能力

宿泊分野で特定技能1号になるには、原則として宿泊分野特定技能1号評価試験に合格する必要があります。

また、日本語能力については、国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上等が必要になります。

宿泊業では、接客、電話対応、予約対応、緊急時対応、クレーム対応など、日本語によるコミュニケーションが非常に重要です。

試験に合格していることに加え、配属後の実務日本語教育を行うことが望ましいです。

特にフロントや電話対応では、丁寧語、敬語、館内案内、防災案内、医療機関案内などの練習が必要になります。

多言語接客と日本語教育

宿泊分野では、外国語を話せる外国人材が、インバウンド対応で力を発揮することがあります。

しかし、外国語ができることと、日本の宿泊施設で安全に働けることは別です。

企業は、次の教育を行います。

・日本語での接客表現
・予約システムの操作
・館内案内
・緊急時対応
・防災案内
・苦情対応
・忘れ物対応
・個人情報保護
・宿泊約款
・現金、カード、電子決済の取扱い
・宗教、文化への配慮

外国人スタッフの母語や英語力を活かしつつ、日本語での社内連絡や記録もできるように支援することが重要です。

夜勤・深夜勤務の注意点

宿泊業では、夜勤や深夜勤務が発生することがあります。

特定技能外国人にも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などが適用されます。

夜勤に入れる場合は、次の点を確認します。

・深夜割増賃金
・休憩時間
・勤務間インターバル
・仮眠時間
・緊急時対応
・防犯体制
・複数名体制
・責任者への連絡方法
・宿泊客トラブル対応
・健康管理

外国人本人が、日本語での緊急対応や宿泊客対応を一人で抱え込むことがないよう、夜間の連絡体制を整える必要があります。

ハラスメント・カスタマーハラスメント対策

宿泊業では、宿泊客からの苦情、過度な要求、差別的発言、ハラスメントが発生することがあります。

外国人スタッフは、言語や文化の違いから、被害を訴えにくい場合があります。

企業は、次の体制を整えます。

・社内相談窓口
・登録支援機関との連携
・上司への報告ルール
・宿泊客対応マニュアル
・差別的発言への対応
・緊急時の交代体制
・メンタルヘルス支援
・定期面談での確認

特定技能1号では、相談・苦情対応や定期面談も支援計画の重要な内容です。

特定技能2号への移行

宿泊分野は、特定技能2号の対象分野です。

2号へ移行すると、通算在留期間の上限がなくなり、要件を満たせば配偶者と子の家族帯同も可能になります。

ただし、1号で働けば自動的に2号へ移行できるわけではありません。

宿泊分野の2号評価試験や実務経験など、分野ごとの要件を満たす必要があります。

企業が長期雇用を考える場合は、本人のキャリア形成、役職登用、接客能力、管理能力、実務経験を計画的に育成することが重要です。

宿泊分野で企業が準備すべきこと

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、次の準備を行います。

・施設が宿泊分野の対象になるか確認する
・旅館業法上の許可・営業実態を確認する
・担当業務が宿泊サービスに該当するか整理する
・宿泊分野評価試験の合格を確認する
・日本語能力を確認する
・雇用契約を作成する
・日本人同等以上の報酬を設定する
・協議会加入手続きを行う
・支援計画を作成する
・登録支援機関を選定する
・夜勤、深夜勤務の労務管理を整える
・接客・防災・個人情報保護の教育を行う
・カスタマーハラスメント対策を整える
・2号移行を見据えた育成計画を作る

宿泊分野では、制度上の要件と、現場での接客品質・安全対応を両立させることが重要です。

まとめ

宿泊分野で特定技能外国人を雇用する場合、宿泊サービスに該当する業務であること、協議会加入、接客・日本語教育、夜勤管理、支援体制を確認する必要があります。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・宿泊分野では、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスが対象となる
・宿泊施設で働くからといって、全ての業務が宿泊分野になるわけではない
・客室清掃だけを主たる業務にする場合は、ビルクリーニング分野との関係も確認する
・ホテル内レストランでは、宿泊分野か外食業分野かを実態で判断する必要がある
・旅館業法上の施設・営業実態を確認する
・宿泊分野特定技能協議会への加入が必要である
・フロントや接客では、実務日本語教育が重要である
・夜勤や深夜勤務では、労務管理と緊急時対応を整える必要がある
・宿泊業ではカスタマーハラスメント対策も重要である
・宿泊分野は特定技能2号の対象であるが、自動移行ではない

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、単に外国語対応力を期待するだけでなく、日本語、接客、防災、労務管理、支援体制を整えることが大切です。

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・Ⅵ-10.外食業で特定技能外国人を雇用する場合の注意点
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参考資料・出典

宿泊分野特定技能協議会 観光庁ウェブサイトより
外国人労働者に関する制度概要 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「特定技能」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針 出入国在留管理庁ウェブサイトより