Ⅲ-13.永住申請で年金記録・健康保険の納付状況を確認する方法

永住申請では、税金だけでなく、公的年金と公的医療保険の加入・納付状況も非常に重要です。

相談でも、次のような質問を受けることがあります。

・永住申請では年金の納付状況も見られますか
・会社員で厚生年金に入っていれば問題ありませんか
・国民年金に未納期間がある場合、永住申請は難しいですか
・ねんきんネットのどの画面を印刷すればよいですか
・健康保険料の納付証明書は必要ですか
・転職や退職で社会保険から国民年金・国民健康保険に変わった時期があります
・配偶者の扶養に入っていた期間はどう説明すればよいですか
・申請前にまとめて払えば大丈夫ですか

永住許可に関するガイドラインでは、公的義務として、納税だけでなく、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付、入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、同ガイドラインでは、申請時点で納付済みであっても、当初の納付期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されるとされています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

つまり、永住申請では「今は払っている」というだけではなく、「必要な期間に、期限どおり適正に納付していたか」が問題になります。

この記事では、永住申請で確認される公的年金・健康保険の資料、ねんきんネットの確認方法、会社員・自営業者・扶養に入っている方の注意点、未納や納付遅れがある場合の考え方を解説します。

1.永住申請で年金・健康保険が重視される理由

永住許可は、外国人が日本に安定して長期的に在留することを認める制度です。

そのため、申請人が日本社会の中で公的義務を適切に履行しているかが確認されます。

税金だけでなく、公的年金や公的医療保険も、日本で生活するうえで重要な公的制度です。

永住許可ガイドラインでは、「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」の中で、公的義務の適正な履行が示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

ここでいう公的義務には、次のものが含まれます。

・納税
・公的年金保険料の納付
・公的医療保険料の納付
・入管法上の届出義務

永住申請では、収入や納税だけを整えても、年金や健康保険に未納・納付遅れがあると問題になる可能性があります。

2.提出が求められる期間

永住申請の提出書類案内では、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料について、過去2年間に加入した制度に応じた資料を提出することが案内されています。
(出典:永住許可申請3、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、高度人材として永住許可申請をする場合の提出書類案内でも、申請類型に応じて、直近過去2年間又は過去1年間の資料が案内されています。
(出典:永住許可申請4-(2)-イ、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

どの期間の資料が必要かは、申請人の在留資格、申請類型、永住許可の特例を利用するかどうかによって異なります。

そのため、まずは自分がどの類型で永住申請をするのかを確認する必要があります。

3.年金の資料として提出できるもの

出入国在留管理庁の永住許可申請の提出書類案内では、公的年金の保険料の納付状況を証明する資料として、年金事務所発行の次の資料が案内されています。

・被保険者記録照会回答票
・被保険者記録照会(納付Ⅰ)
・被保険者記録照会(納付Ⅱ)

また、これらの資料のほか、次の資料を提出することも可能とされています。

・「ねんきん定期便」(全期間の年金記録情報が表示されているもの)
・ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面

ただし、ハガキ形式のねんきん定期便は全ての期間が確認できないため、提出書類としては使用できないと案内されています。
(出典:永住許可申請3、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

この点は非常に重要です。

毎年届く簡易なハガキのねんきん定期便をそのまま提出すればよい、というわけではありません。

4.ねんきんネットで確認する方法

日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認できます。

日本年金機構は、「ねんきんネット」について、パソコンやスマートフォンで24時間いつでも最新の年金記録を確認できるサービスとして案内しています。
(出典:「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認、日本年金機構ウェブサイトより)

また、日本年金機構の案内では、「ねんきんネット」による各月の年金記録照会について、年金記録を印刷したい場合は画面の「印刷する」ボタンから印刷できることが説明されています。
(出典:「ねんきんネット」による各月の年金記録照会、日本年金機構ウェブサイトより)

永住申請では、ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面が資料として利用されることがあります。

ただし、申請時の直近2年間に国民年金の被保険者であった期間がある方は、「各月の年金記録」の中にある「国民年金の年金記録(各月の納付状況)」の印刷画面も併せて提出する必要があるとされています。
(出典:永住許可申請3、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

5.会社員の場合の確認ポイント

会社員の場合、通常は勤務先で厚生年金と健康保険に加入していることが多いです。

この場合、給与から社会保険料が控除されているため、本人としては「会社がやってくれている」と考えがちです。

しかし、永住申請では、過去2年間など必要期間において、どの制度に加入していたのかを確認する必要があります。

特に注意が必要なのは、次のようなケースです。

・転職した
・退職後、次の就職まで空白期間がある
・休職期間がある
・勤務先が社会保険未加入だった
・短時間勤務で社会保険に加入していなかった
・配偶者の扶養に入っていた
・会社員から個人事業主になった
・個人事業主から会社員になった

会社員期間は問題なく見えても、転職と転職の間に国民年金・国民健康保険へ切り替えるべき期間があった場合、その期間の納付状況が問題になることがあります。

6.国民年金に加入していた期間がある場合

自営業、無職、退職後の空白期間、短時間勤務などで国民年金に加入していた期間がある場合は、特に注意が必要です。

国民年金は、自分で納付管理をする必要があります。

永住申請では、国民年金の納付状況が確認されます。

未納、納付遅れ、免除、猶予などがある場合には、その内容を整理する必要があります。

特に、納付期限を過ぎてから後納した場合、申請時点で納付済みであっても、期限内に履行していなかったことが消極的に評価される可能性があります。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

「後で払えばよい」と考えるのではなく、普段から期限どおり納付することが大切です。

7.年金の免除・猶予がある場合

国民年金には、所得が少ない場合などに保険料の免除や納付猶予の制度があります。

免除や猶予が正式に認められている場合と、単に未納のまま放置している場合は異なります。

永住申請で重要なのは、その期間がどのような扱いになっているかを正確に確認することです。

たとえば、次のような区別が必要です。

・厚生年金加入期間
・国民年金納付済期間
・国民年金免除期間
・国民年金納付猶予期間
・未納期間
・第3号被保険者期間

ねんきんネットや年金事務所の資料を確認し、どの期間がどのように記録されているかを把握する必要があります。

8.健康保険の資料として提出するもの

永住申請では、公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料も求められます。

出入国在留管理庁の提出書類案内では、過去2年間に加入した公的医療保険制度に応じた資料を提出するよう案内されています。
(出典:永住許可申請3、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

会社員として健康保険に加入していた場合と、国民健康保険に加入していた場合では、確認する資料が異なります。

一般的には、次のような資料が問題になります。

・健康保険証の写し
・資格確認書の写し
・資格情報のお知らせ
・国民健康保険料納付証明書
・国民健康保険料領収証書の写し
・勤務先の健康保険加入を示す資料
・扶養に入っていたことを示す資料

なお、出入国在留管理庁の提出書類案内では、基礎年金番号、医療保険の保険者番号、被保険者等記号・番号が記載されている書類を提出する場合には、これらの番号部分を黒塗りにするなど、復元できない状態にして提出するよう案内されています。
(出典:永住許可申請3、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

個人番号や保険者番号などは、提出時の取扱いに注意が必要です。

9.国民健康保険に加入していた場合

国民健康保険に加入していた期間がある場合は、保険料の納付状況が問題になります。

会社の健康保険と異なり、国民健康保険は自治体から納付書が届き、本人が納付することが多くあります。

そのため、未納や納付遅れが発生しやすい分野です。

特に注意すべきケースは、次のとおりです。

・退職後に国民健康保険へ切替えた
・転職までの短期間だけ国民健康保険だった
・納付書に気づかず納付が遅れた
・引っ越しで納付書が届かなかった
・世帯主にまとめて請求されていた
・家族分の保険料をまとめて納付していた
・分割納付をしていた
・過去に滞納があった

永住申請では、現在未納がないだけでなく、納付期限内に納めていたかも問題になり得ます。

10.扶養に入っていた場合

配偶者の扶養に入っていた場合、年金や健康保険の扱いが本人負担とは異なることがあります。

たとえば、会社員の配偶者の扶養に入っている場合、国民年金の第3号被保険者となることがあります。

この場合、本人が国民年金保険料を直接納付していないからといって、直ちに未納という意味ではありません。

重要なのは、その期間が年金記録上どのように扱われているかです。

また、健康保険についても、被扶養者として加入していた場合、本人が保険料を直接支払っていないことがあります。

このような場合は、配偶者の健康保険に扶養として入っていたことを示す資料を整理します。

11.転職・退職時の空白期間に注意する

永住申請でよく問題になるのが、転職・退職時の空白期間です。

たとえば、次のようなケースです。

・前職を退職してから次の会社に入るまで1か月空いた
・退職後、健康保険の任意継続をしなかった
・国民健康保険への加入手続きが遅れた
・国民年金への切替えを忘れていた
・転職先で社会保険に入るまで時間がかかった

このような空白期間があると、年金や健康保険の未加入・未納期間が発生していることがあります。

本人は「すぐ転職したから問題ない」と思っていても、記録上は未納や空白になっていることがあります。

永住申請前には、必ず年金記録と健康保険の加入状況を確認することが重要です。

12.未納・納付遅れがある場合

年金や健康保険に未納・納付遅れがある場合、永住申請では慎重な検討が必要です。

永住許可ガイドラインでは、申請時点で納付済みであっても、当初の納付期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されると明記されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

したがって、申請直前にまとめて納付すれば必ず問題がなくなるわけではありません。

未納や納付遅れがある場合は、次の点を確認します。

・どの制度で未納があったのか
・未納期間はいつか
・納付期限はいつだったか
・いつ納付したのか
・未納になった理由は何か
・現在はどのように管理しているか
・再発防止策があるか

事情によっては、すぐに申請するのではなく、一定期間、納付状況を整えてから申請する方がよい場合もあります。

13.資料取得前に確認したいこと

年金・健康保険資料を準備する前に、次の点を整理しておくとよいでしょう。

・過去2年間の勤務先
・退職、転職、休職の有無
・厚生年金加入期間
・国民年金加入期間
・第3号被保険者期間
・国民年金の免除・猶予の有無
・健康保険加入期間
・国民健康保険加入期間
・配偶者や親族の扶養に入っていた期間
・未納や納付遅れの有無
・引っ越しの有無
・自治体からの保険料通知の有無

この整理をせずに資料を集めると、どの期間のどの資料が必要か分かりにくくなります。

14.行政書士に相談するメリット

永住申請で年金・健康保険に不安がある場合、行政書士に相談することで、次の点を整理できます。

・どの期間の資料が必要か
・ねんきんネットのどの画面を確認するか
・年金事務所で取得すべき資料は何か
・国民年金の未納や免除期間をどう見るか
・健康保険と国民健康保険の切替えをどう説明するか
・扶養に入っていた期間をどう整理するか
・納付遅れがある場合、申請時期をどう考えるか
・理由書や補足説明書で何を説明すべきか
・税金資料、年金資料、健康保険資料をどう整合させるか

永住申請では、税金、年金、健康保険が一体として確認されます。

どれか一つだけ整っていても、他に未納や納付遅れがあれば問題になる可能性があります。

15.まとめ

永住申請では、公的年金と公的医療保険の納付状況が重要です。

永住許可ガイドラインでは、納税だけでなく、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付も公的義務として示されています。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・永住申請では年金・健康保険の納付状況も確認される
・過去2年間など、申請類型に応じた期間の資料が必要になる
・年金事務所発行の被保険者記録照会回答票等が資料になる
・ねんきん定期便は、全期間の年金記録情報が表示されたものが必要である
・ハガキ形式のねんきん定期便は、全期間が確認できないため使用できない
・ねんきんネットの各月の年金記録を印刷して提出することがある
・国民年金期間がある場合は、各月の納付状況を確認する
・健康保険についても、加入制度に応じた資料が必要である
・転職・退職時の空白期間に注意する
・申請前にまとめて納付しても、期限内に履行していなければ消極的に評価される可能性がある

永住申請を考える場合は、税金だけでなく、年金と健康保険の記録も早めに確認することが大切です。

特に転職、退職、自営業、扶養、国民年金・国民健康保険の期間がある方は、申請前に記録を確認し、必要に応じて説明資料を準備することが重要です。

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・Ⅲ-11.永住申請で必要になる理由書の書き方
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参考資料・出典

永住許可に関するガイドライン 出入国在留管理庁ウェブサイトより
永住許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
永住許可申請3 出入国在留管理庁ウェブサイトより
永住許可申請4-(2)-イ 出入国在留管理庁ウェブサイトより
「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認 日本年金機構ウェブサイトより
「ねんきんネット」による各月の年金記録照会 日本年金機構ウェブサイトより
ねんきんネット 日本年金機構ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より