育成就労制度は、3年間の就労を通じて、特定技能1号水準の人材を育成する制度です。
そのため、育成就労を受け入れる企業にとって重要なのは、「3年間働いてもらうこと」だけではありません。
育成就労期間の終了後、外国人本人が特定技能1号へ進めるように、技能、日本語、実務経験、試験、支援、雇用契約を計画的に整えることが重要です。
企業からは、次のような相談を受けることがあります。
・育成就労が終わると自動的に特定技能になりますか
・3年間働けば特定技能1号の試験は不要ですか
・育成就労中にどのような教育が必要ですか
・育成就労から特定技能へ移るとき、同じ会社で雇用できますか
・本人が転籍を希望した場合はどうなりますか
・企業はいつから特定技能への準備を始めるべきですか
・育成就労期間中の記録は何を残すべきですか
育成就労から特定技能への移行は、自動ではありません。
特定技能1号として在留するには、特定技能の要件を満たし、在留資格変更許可を受ける必要があります。
この記事では、育成就労から特定技能へ進む基本的な流れ、企業が準備すべき教育・日本語・試験・記録・雇用契約・支援体制について解説します。
育成就労は特定技能1号への接続を前提とする制度
育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的として創設される制度です。
厚生労働省は、育成就労制度について、令和9年4月から施行される新制度であり、技能実習制度に代わる制度として案内しています。
(出典:外国人育成就労制度について、厚生労働省ウェブサイトより)
また、介護分野の育成就労制度ページでは、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、人材を確保する制度と説明されています。
(出典:介護分野における育成就労制度について、厚生労働省ウェブサイトより)
つまり、育成就労は、それ自体で完結する制度ではなく、特定技能1号への移行を見据えた制度です。
自動的に特定技能へ移行するわけではない
育成就労期間を満了しても、自動的に特定技能1号へ変わるわけではありません。
特定技能1号として在留するには、次の要件を確認する必要があります。
・対象分野に該当すること
・特定技能1号の技能水準を満たすこと
・日本語能力要件を満たすこと
・受入れ企業と特定技能雇用契約を締結すること
・受入れ企業が特定技能所属機関として基準を満たすこと
・1号特定技能外国人支援計画を作成すること
・分野別協議会等の要件を満たすこと
・在留資格変更許可申請を行うこと
育成就労から特定技能への移行時にも、出入国在留管理庁での審査が必要です。
企業は「育成就労で受け入れたから、そのまま特定技能へ行ける」と考えず、移行要件を確認する必要があります。
育成就労期間中に準備すべきこと
育成就労から特定技能へ進むためには、育成就労期間中の準備が重要です。
企業は、次の点を計画的に進めます。
・技能習得計画
・日本語学習
・安全衛生教育
・業務記録
・評価記録
・試験受験準備
・本人との面談
・キャリア希望の確認
・特定技能への移行時期
・受入れ企業側の支援体制
・転籍希望がある場合の対応
育成就労は、単に3年間働いてもらう制度ではありません。
3年後に特定技能1号水準へ到達できるよう、教育と実務経験を設計する制度です。
技能の育成
育成就労制度では、外国人が対象分野の技能を段階的に身に付けることが重要です。
企業は、次のような育成計画を作ります。
・入社時研修
・基礎作業の習得
・安全作業の習得
・技能レベルの確認
・担当工程の拡大
・指導者によるOJT
・定期評価
・特定技能1号試験への対応
・本人の得意・不得意の把握
・キャリアパスの説明
技能の育成は、現場任せにせず、記録として残すことが大切です。
将来、特定技能への移行時に、どのような業務を経験し、どの水準まで達したかを説明できるようにしておきます。
日本語教育
育成就労から特定技能へ移行するには、日本語能力も重要です。
特定技能1号では、原則として、国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上等が求められます。
分野によっては、介護日本語評価試験など、追加の日本語要件があります。
企業は、育成就労期間中に次の支援を行います。
・日本語学習計画
・地域日本語教室の案内
・オンライン教材の活用
・職場日本語の教育
・専門用語の教育
・安全衛生用語の教育
・記録、報告の日本語練習
・試験日程の確認
・学習時間の確保
日本語教育は、本人の努力だけに任せるのではなく、企業として学習機会を確保することが重要です。
試験・評価への準備
特定技能1号へ移行するためには、分野ごとの技能水準と日本語能力を確認する必要があります。
育成就労期間中に、次の点を確認します。
・対象分野の特定技能1号試験
・試験実施時期
・試験会場
・受験資格
・日本語試験
・分野別追加要件
・育成就労修了時の評価
・技能実習時代との違い
・不合格時の対応
・再受験の計画
特定技能への移行直前になって試験を受けようとしても、試験日程や再受験の関係で間に合わないことがあります。
企業は、少なくとも育成就労期間の後半に入る前から、特定技能移行に必要な試験スケジュールを確認しておくことが望ましいです。
同じ企業で特定技能へ移行する場合
育成就労を行った企業が、引き続き特定技能所属機関として外国人を雇用する場合、比較的スムーズに移行できる可能性があります。
ただし、育成就労の雇用契約と、特定技能雇用契約は別に確認する必要があります。
移行時に必要となる主な準備は、次のとおりです。
・特定技能雇用契約の締結
・報酬の再確認
・日本人同等以上の処遇
・支援計画の作成
・登録支援機関への委託又は自社支援体制
・分野別協議会への加入
・在留資格変更許可申請
・就労開始日の管理
・育成就労から特定技能への切替え時期の調整
育成就労で働いていたからといって、特定技能の申請書類や支援計画が不要になるわけではありません。
別の企業へ移る場合
育成就労期間中又は終了後に、外国人本人が別の企業で特定技能として働くことを希望する場合があります。
この場合、転籍や転職に関する制度上の要件を確認する必要があります。
出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aでは、本人意向による転籍が可能となること、監理支援機関が関係機関との連絡調整等の役割を担うことが説明されています。
(出典:育成就労制度Q&A、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
別企業で特定技能へ移る場合、新しい受入れ企業が特定技能所属機関として基準を満たす必要があります。
また、外国人本人が新しい業務区分に対応する技能を有しているかも確認します。
育成就労と特定技能の雇用契約の違い
育成就労と特定技能では、いずれも労働者として雇用されますが、制度上求められる書類や支援内容は異なります。
特定技能1号では、1号特定技能外国人支援計画が必要になります。
また、特定技能では、日本人と同等以上の報酬、対象分野・業務区分、分野別協議会、届出義務が重要です。
育成就労期間中から、特定技能移行後の処遇を見据えておく必要があります。
・基本給
・昇給
・手当
・担当業務
・勤務場所
・残業
・支援体制
・住居
・日本語学習
・キャリアパス
育成就労から特定技能へ移る際に、処遇が不透明だと、本人の不安や転職希望につながる可能性があります。
在留資格変更の時期
育成就労から特定技能へ移行する場合、在留資格変更許可申請の時期が重要です。
確認すべき点は、次のとおりです。
・育成就労の在留期限
・育成就労計画の終了時期
・技能・日本語試験の合格時期
・特定技能雇用契約の締結時期
・支援計画の作成時期
・分野別協議会手続き
・在留資格変更許可申請日
・許可日
・特定技能としての就労開始日
申請中にどの活動ができるかは、在留資格と活動内容によって異なります。
許可前に特定技能として働かせないよう、開始日を慎重に管理します。
企業が残すべき記録
育成就労から特定技能へ円滑に進むには、育成期間中の記録が重要です。
企業は、次の記録を残しておくとよいでしょう。
・担当業務
・技能習得状況
・OJT記録
・研修記録
・安全衛生教育記録
・日本語学習記録
・評価記録
・面談記録
・本人の希望
・試験受験記録
・欠勤、遅刻、休職
・相談、苦情対応
・転籍希望の有無
記録がなければ、育成の実態や特定技能移行の準備状況を説明しにくくなります。
企業が今から準備すべきこと
育成就労制度開始前から、企業は次の準備を進めることができます。
・対象分野の確認
・既存技能実習生の在留期限確認
・監理団体との今後の方針確認
・監理支援機関候補の確認
・特定技能への移行ルート確認
・分野別運用要領の確認
・日本語教育体制の整備
・OJT担当者の選任
・相談窓口の整備
・ハラスメント防止体制
・労働条件の見直し
・特定技能支援計画の準備
育成就労制度が始まってから慌てるのではなく、技能実習から特定技能までの人材育成ルートを再設計することが重要です。
まとめ
育成就労制度は、特定技能1号水準の人材を育成することを目的とした制度です。
育成就労から特定技能へ進むには、自動的な移行ではなく、特定技能の要件を満たした上で、在留資格変更許可申請を行う必要があります。
この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。
・育成就労は、特定技能1号への接続を前提とする制度である
・育成就労期間を満了しても、自動的に特定技能になるわけではない
・特定技能1号へ移行するには、技能、日本語、雇用契約、受入れ企業の基準を満たす必要がある
・育成就労期間中に、技能育成、日本語教育、試験準備を進める必要がある
・同じ企業で移行する場合でも、特定技能雇用契約と支援計画が必要である
・別企業へ移る場合は、転籍・転職の制度上の要件を確認する
・在留資格変更許可前に特定技能として働かせてはいけない
・育成期間中の研修、評価、面談、試験記録を残すことが重要である
・企業は、育成就労開始前から特定技能への接続を前提に人材育成計画を作るべきである
育成就労は、3年間だけ働いてもらう制度ではありません。
外国人本人にとっても、企業にとっても、特定技能1号へ進み、安定して働き続けられるようにすることが制度の中心です。
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参考資料・出典
・外国人育成就労制度について 厚生労働省ウェブサイトより
・育成就労制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・育成就労制度の概要 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・育成就労制度Q&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・特定技能制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより
