海外にある親会社、子会社、関連会社、支店などで勤務している外国人社員を、日本の事業所に転勤させ、日本で働いてもらう場合、在留資格「企業内転勤」を検討することがあります。
企業内転勤は、海外拠点を持つ企業にとって利用しやすい在留資格の一つです。海外で既に勤務している社員を、日本の本社、日本法人、日本支店、関連会社などに異動させる場合に使われます。
一方で、企業内転勤は、単に「海外グループ会社の社員を日本に呼ぶ」というだけで当然に認められるものではありません。
どの会社からどの会社へ転勤するのか、転勤前後の事業所の関係はどうなっているのか、本人は転勤直前にどのような業務に従事していたのか、日本で行う業務は在留資格上認められる内容なのか、転勤期間や報酬はどのように定められているのかなど、多くの点を整理する必要があります。
また、出入国在留管理庁は、在留資格「企業内転勤」に係る提出書類一覧について、令和8年4月1日から運用開始の資料を公表しています。特にカテゴリー3・4の企業では、海外事業所の実在性、転勤前後の事業所関係、本人の海外勤務実態、日本側受入機関の事業内容などを、より具体的な資料で説明することが重要になります。
(出典:「企業内転勤」に係る提出書類一覧・令和8年4月1日運用開始、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
この記事では、企業が海外の外国人社員を企業内転勤で日本に呼ぶ場合の制度、申請の流れ、カテゴリー別の必要書類、企業が注意すべきポイントを解説します。
なお、一般には「企業内転勤ビザ」と呼ばれることがありますが、この記事では、正確な制度上の用語として、主に在留資格「企業内転勤」、在留資格認定証明書交付申請という表現を用います。
1.企業内転勤とは何か
在留資格「企業内転勤」は、外国にある事業所の職員が、日本にある事業所へ、期間を定めて転勤し、日本で一定の専門的な業務に従事するための在留資格です。
入管法上の企業内転勤は、日本に本店、支店その他の事業所がある公私の機関の外国にある事業所の職員が、日本にある事業所に期間を定めて転勤し、その事業所で「技術・人文知識・国際業務」に相当する活動を行う場合を対象としています。
(出典:在留資格「企業内転勤」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
つまり、企業内転勤で認められる業務は、工場での単純作業、現場作業、店舗での単純接客、研修だけを目的とする活動などではありません。
日本で行う業務は、基本的に「技術・人文知識・国際業務」に該当するような専門的業務である必要があります。
たとえば、次のような業務が典型例です。
・海外拠点で開発業務を担当していたエンジニアが、日本本社の開発部門に転勤する
・海外子会社で経理・財務を担当していた社員が、日本法人の管理部門に転勤する
・海外販売会社のマーケティング担当者が、日本本社の海外事業部に転勤する
・海外拠点の管理職が、日本側でグローバルプロジェクトの調整業務を行う
・海外製造拠点の品質管理担当者が、日本本社の品質保証部門で業務を行う
一方で、次のようなケースでは、企業内転勤に該当しない、または慎重な検討が必要です。
・海外会社に入社して間もない社員を日本に呼ぶ場合
・海外取引先の社員を日本に呼ぶ場合
・日本で行う業務が単純作業に近い場合
・研修や見学が中心で、実際の業務に従事しない場合
・転勤期間が定められていない場合
・海外拠点と日本側受入機関との関係が明確でない場合
企業内転勤は、海外拠点から日本拠点への「人事異動」を前提とする在留資格です。そのため、通常の中途採用や新規採用とは考え方が異なります。
2.企業内転勤で確認される主な要件
企業内転勤では、少なくとも次の点を確認する必要があります。
1年以上、海外事業所で継続して勤務していること
企業内転勤では、転勤の直前に、外国にある本店、支店その他の事業所で、継続して1年以上、一定の業務に従事していることが求められます。
ここでいう業務は、日本で行う予定の業務と同じく、「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務である必要があります。
たとえば、海外拠点でエンジニアとして1年以上勤務していた人が、日本側の開発部門に転勤する場合は、企業内転勤の要件を検討しやすいケースです。
一方で、海外拠点に入社して数か月しか経っていない社員を日本に呼ぶ場合、企業内転勤では要件を満たさない可能性があります。その場合は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」など、別の在留資格を検討することになります。
企業内転勤の上陸許可基準では、転勤直前に外国にある事業所で継続して1年以上、一定の業務に従事していること、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが定められています。
(出典:在留資格「企業内転勤」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
日本で行う業務が専門的業務であること
企業内転勤で日本に来る場合、日本で行う業務は「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務である必要があります。
したがって、申請書や理由書、職務内容説明書では、単に「営業」「管理」「研修」「技術サポート」と書くだけでは足りません。
具体的に、次のような点を説明する必要があります。
・日本で所属する部署
・担当する職務
・その職務に必要な専門知識
・海外拠点での経験との関連性
・日本側でその人を受け入れる必要性
・単純作業や現場労務ではないこと
・研修ではなく業務として従事すること
特に、製造業、建設業、外食業、宿泊業など、現場作業と専門的業務の境界が問題になりやすい業種では、職務内容の説明が重要です。
転勤期間が定められていること
企業内転勤は、海外事業所から日本事業所への「期間を定めた転勤」を前提としています。
そのため、申請書、転勤命令書、辞令、労働条件通知書、出向契約書などで、転勤期間を明確にしておくことが重要です。
たとえば、次のような記載です。
・2026年9月1日から2029年8月31日まで
・3年間
・プロジェクト期間中。ただし最長3年
・当初1年間、その後業務状況により延長の可能性あり
もっとも、「期間の定めがない」「日本法人で恒久的に採用する」という内容になると、企業内転勤よりも「技術・人文知識・国際業務」の方が適している場合があります。
報酬が日本人と同等額以上であること
企業内転勤でも、日本人が同じ業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが求められます。
報酬は、日本法人から支払われる場合も、海外法人から支払われる場合も、両方から支払われる場合もあります。
ただし、申請上は、どこから、いくら、どの通貨で、どの期間支払われるのかを明確にする必要があります。
給与が海外払いの場合には、日本側での生活費、住居費、手当、税務上の扱いなども含めて、説明に矛盾がないようにしておくことが重要です。
3.在留資格認定証明書交付申請の基本的な流れ
海外にいる外国人社員を企業内転勤で日本に呼ぶ場合、通常は、日本側で在留資格認定証明書交付申請を行います。
在留資格認定証明書交付申請は、日本に入国しようとする外国人が、日本で行おうとする活動内容が在留資格に該当し、上陸のための条件に適合していることを、入国前にあらかじめ証明するための申請です。交付された在留資格認定証明書は、在外公館での査証申請や上陸申請の際に提出・提示することで、手続を円滑に進めるために用いられます。
(出典:在留資格認定証明書交付申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
基本的な流れは、次のとおりです。
1.日本側受入企業で、企業内転勤に該当するか確認する
2.受入企業のカテゴリーを確認する
3.外国人社員本人から、経歴、入出国歴、犯罪歴、過去の在留歴などをヒアリングする
4.海外事業所と日本事業所の関係を示す資料を準備する
5.転勤命令書、辞令、労働条件通知書、出向契約書などを準備する
6.申請書、理由書、職務内容説明書などを作成する
7.受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署に申請する
8.在留資格認定証明書が交付される
9.海外にいる本人へ送付または電子メールで共有する
10.本人が在外公館で査証申請を行う
11.日本に上陸し、在留カードの交付を受ける
在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は、出入国在留管理庁のページでは1か月から3か月とされています。
(出典:在留資格認定証明書交付申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
ただし、企業内転勤では、会社のカテゴリー、提出資料の内容、過去の出入国歴、職務内容の明確性、企業間関係の分かりやすさなどによって、審査期間が変わることがあります。
4.所属機関のカテゴリーとは
企業内転勤の申請では、日本側の受入機関が、カテゴリー1からカテゴリー4に区分されます。
このカテゴリーは、会社の信用力や事業実態を形式的に区分するためのものです。カテゴリーが上位であるほど、提出資料が簡素化される傾向があります。
一方で、カテゴリー3・4では、受入企業の事業内容、財務状況、転勤の必要性、本人の経歴などを、より詳しく説明する必要があります。
カテゴリー1及び2の企業については、一定の規模を有し、公表資料により活動の実態が明らかであることなどから、在留資格認定証明書交付申請において提出資料の簡素化や審査の迅速化が図られています。
(出典:カテゴリー1又は2の企業において就労する者及びその家族に係る在留資格認定証明書交付申請手続の取扱いについて、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
5.カテゴリー1から4の区分
企業内転勤の提出書類一覧では、所属機関がカテゴリー1からカテゴリー4に区分されています。
カテゴリー1
カテゴリー1は、上場企業、公的性格の強い法人、一定の条件を満たす企業などです。
典型的には、次のような機関です。
・日本の証券取引所に上場している企業
・保険業を営む相互会社
・日本又は外国の国・地方公共団体
・独立行政法人
・特殊法人・認可法人
・日本の国又は地方公共団体認可の公益法人
・法人税法別表第1に掲げる公共法人
・イノベーション創出企業
・一定の条件を満たす企業等
カテゴリー1に該当する場合、会社の規模や実態については公表資料等で確認しやすいため、提出資料は比較的簡素化されます。
カテゴリー2
カテゴリー2は、一定規模以上の源泉徴収税額がある企業や、在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された一定の機関などです。
典型的には、次のような機関です。
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体又は個人
・カテゴリー3に該当することを立証する資料を提出した上で、在留申請オンラインシステムの利用申出が承認された機関
カテゴリー2も、一定の事業規模や実態が確認しやすい機関と扱われ、カテゴリー1と同様に、提出資料は簡素化される傾向があります。
カテゴリー3
カテゴリー3は、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出している団体又は個人のうち、カテゴリー2に該当しないものです。
多くの中小企業は、このカテゴリー3に該当することがあります。
カテゴリー3では、法定調書合計表により一定の事業実態は確認できますが、カテゴリー1・2ほど資料が簡素化されるわけではありません。
そのため、企業内転勤では、転勤の実態、企業間関係、本人の経歴、日本で行う業務内容、会社の事業内容、決算状況などを説明する資料が重要になります。
カテゴリー4
カテゴリー4は、カテゴリー1から3のいずれにも該当しない団体又は個人です。
典型的には、次のようなケースです。
・設立直後で法定調書合計表をまだ提出していない会社
・日本で新しく事業を開始したばかりの法人
・給与支払実績がまだ十分にない機関
・法定調書合計表を提出できない機関
カテゴリー4では、受入機関の事業実態や継続性を示す資料が特に重要になります。
新設会社が海外グループ会社から社員を呼ぶ場合には、事業計画、資本関係、役員構成、取引実績、事務所、給与支払体制などを丁寧に説明する必要があります。
6.カテゴリー1・2とカテゴリー3・4の大きな違い
企業内転勤の提出資料は、大きく見ると、カテゴリー1・2とカテゴリー3・4で分かれます。
カテゴリー1・2は提出資料が簡素化される
カテゴリー1・2では、基本資料とカテゴリー該当性を示す資料を提出し、その他の資料は原則として不要とされる扱いがあります。
企業内転勤のページでも、カテゴリー1及びカテゴリー2については、その他の資料は原則不要とされています。
(出典:在留資格「企業内転勤」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
もっとも、これは「審査されない」という意味ではありません。
カテゴリー1・2でも、企業内転勤の要件自体は確認されます。
たとえば、次の点に問題があれば、追加資料を求められる可能性があります。
・本人の海外勤務期間が1年未満に見える
・日本で行う業務が単純作業や研修に見える
・転勤期間が明確でない
・報酬額が不明確である
・海外拠点と日本側受入企業の関係が分かりにくい
・過去の出入国歴や申請歴に疑義がある
・申請書の記載に不整合がある
大企業であっても、申請書を簡単に書けばよいわけではありません。カテゴリー1・2は「会社資料が簡素化される」のであって、本人の活動内容や企業内転勤の該当性まで省略されるわけではない点に注意が必要です。
カテゴリー3・4は実態説明が重要になる
カテゴリー3・4では、提出資料が多くなります。
特に、令和8年4月1日から運用開始された提出書類一覧では、カテゴリー3・4を中心に、申請人の活動内容、転勤前後の事業所の関係、申請人の経歴、事業内容を示す資料が整理されています。
(出典:「企業内転勤」に係る提出書類一覧・令和8年4月1日運用開始、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
カテゴリー3・4では、単に「海外子会社から日本本社に転勤する」と説明するだけでは足りません。
次のような点を資料で示す必要があります。
・海外事業所が実在すること
・海外事業所と日本側事業所の資本関係・組織関係
・本人が海外事業所で1年以上勤務していたこと
・本人が過去1年間に従事していた業務内容、地位、報酬
・日本で行う業務内容
・転勤期間
・報酬額
・日本側受入企業の事業内容
・日本側受入企業の決算状況又は事業計画
カテゴリー3・4の申請では、申請書だけでなく、理由書、職務内容説明書、企業間関係説明書、海外勤務証明書などの補足資料が重要になります。
7.カテゴリー別に準備する主な資料
共通して必要になる資料
企業内転勤の在留資格認定証明書交付申請では、まず、カテゴリーにかかわらず、共通して必要になる資料があります。
主な資料は、次のとおりです。
・在留資格認定証明書交付申請書
・写真
・返信用封筒
・所属機関のカテゴリーを証明する資料
・その他、必要に応じた補足資料
在留資格認定証明書交付申請では、日本での活動内容に応じた申請書・資料を提出し、申請先は居住予定地又は受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署とされています。また、郵送での提出は受け付けていない旨が案内されています。
(出典:在留資格認定証明書交付申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
カテゴリー1・2で準備する資料
カテゴリー1・2では、提出資料は比較的簡素です。
カテゴリー1では、上場企業であること、公益法人であること、一定の公的性格を有する法人であることなど、カテゴリー該当性を示す資料を準備します。
カテゴリー2では、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しなどにより、源泉徴収税額が1,000万円以上であることを示す資料を準備します。
ただし、カテゴリー1・2であっても、社内では次の資料を整理しておくことをおすすめします。
・転勤命令書
・辞令
・出向契約書
・日本側の職務内容説明書
・海外勤務証明書
・海外拠点と日本拠点の関係資料
・報酬条件を示す資料
・組織図
・申請人本人の履歴書
提出が不要であっても、追加資料を求められた場合にすぐ対応できるようにしておくことが重要です。
カテゴリー3で準備する資料
カテゴリー3では、共通資料に加えて、企業内転勤の実態を示す資料を準備する必要があります。
主な資料は、次のとおりです。
・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
・申請人の活動内容、期間、地位、報酬を明らかにする資料
・法人を異にしない転勤の場合の転勤命令書又は辞令
・法人を異にする転勤の場合の労働条件を明示する文書
・役員として転勤する場合の地位、担当業務、期間、報酬額を示す資料
・転勤前後の事業所の関係を示す資料
・申請人の経歴を証明する資料
・転勤直前1年間の業務内容、地位、報酬を示す海外機関の文書
・事業内容を明らかにする資料
・直近年度の決算文書
令和8年4月1日運用開始の提出書類一覧では、カテゴリー3・4について、申請人の活動内容等を明らかにする資料、転勤前後の事業所の関係を示す資料、申請人の経歴を証明する文書、事業内容を明らかにする資料などが整理されています。
(出典:「企業内転勤」に係る提出書類一覧・令和8年4月1日運用開始、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
カテゴリー4で準備する資料
カテゴリー4は、カテゴリー1から3のいずれにも該当しない機関です。
設立直後の日本法人が海外親会社や海外関連会社から社員を呼ぶ場合などが典型です。
カテゴリー4では、カテゴリー3で必要となる資料に加え、法定調書合計表を提出できない理由を示す資料が必要になります。
たとえば、次のような資料です。
・給与支払事務所等の開設届出書の写し
・直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の写し
・納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
・事業計画書
・新設法人の事業実態を示す資料
また、令和8年4月1日運用開始の提出書類一覧では、カテゴリー3・4について、公的機関から発行された法人登記に関する資料や、納税状況、取引実績、船荷証券、輸出入許可書、広告等の資料も挙げられています。海外事業所の実在性や事業活動を示す資料として、これらの準備が重要になる場合があります。
(出典:「企業内転勤」に係る提出書類一覧・令和8年4月1日運用開始、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
カテゴリー4では、「会社を設立したばかりで、まだ実績がありません」というだけでは足りません。
少なくとも、次の点を説明できるようにしておく必要があります。
・日本法人を設立した目的
・海外本社又は海外関連会社との関係
・日本で行う事業内容
・事務所の所在
・役員構成
・資本金、資金計画
・今後の取引予定
・外国人社員を日本に転勤させる必要性
・日本で担当する業務
・給与の支払方法
カテゴリー4では、申請書だけでなく、理由書や事業計画書の作り込みが重要です。
8.企業が特に注意すべきポイント
企業内転勤と技術・人文知識・国際業務の違いを確認する
海外の外国人社員を日本に呼ぶ場合、必ず企業内転勤になるわけではありません。
場合によっては、「技術・人文知識・国際業務」の方が適していることがあります。
企業内転勤は、海外事業所から日本事業所への期間を定めた転勤です。
一方、技術・人文知識・国際業務は、日本の会社との契約に基づいて専門的業務に従事する在留資格です。
たとえば、海外グループ会社での勤務期間が1年未満の場合や、日本法人で期間の定めなく採用する場合には、企業内転勤ではなく、技術・人文知識・国際業務を検討することがあります。
海外事業所での1年以上の勤務実績を確認する
企業内転勤では、海外事業所での勤務実績が重要です。
確認すべき点は、次のとおりです。
・入社日
・所属部署
・職位
・職務内容
・勤務期間
・報酬
・日本で行う業務との関連性
・転勤直前1年間の勤務実態
単に在籍していたというだけでは足りません。
その人が実際にどのような業務を行っていたのかを説明できる必要があります。
日本での業務内容を具体的に説明する
職務内容説明書では、抽象的な表現を避けるべきです。
たとえば、次のような表現だけでは不十分です。
・営業
・管理
・サポート
・研修
・技術対応
・海外対応
これでは、在留資格上認められる専門的業務なのかが分かりません。
次のように、具体的に書く必要があります。
・海外販売会社との販売計画の調整
・既存顧客向け製品仕様の確認、見積条件の調整
・海外製造拠点との品質問題の原因分析、改善指示
・日本本社の開発部門と海外拠点の設計情報の調整
・海外拠点の経理データを用いた月次管理資料の作成
・グローバルERP導入プロジェクトにおける要件定義、運用設計
重要なのは、実際の仕事内容が専門的業務であることを、第三者が読んでも分かるようにすることです。
研修目的に見えないようにする
企業内転勤では、日本で実際に業務に従事することが前提です。
もちろん、日本の制度や社内システムを理解するための研修が含まれることはあります。
しかし、申請全体が「研修のために来日する」と見えると、企業内転勤ではなく、研修、短期滞在、又は別制度の問題と見られる可能性があります。
特に、次のような表現には注意が必要です。
・日本で学ぶ
・日本で研修を受ける
・先輩社員に同行する
・現場を見学する
・業務を習得する
このような内容が中心である場合、企業内転勤の活動として十分かどうか慎重に検討する必要があります。
短期滞在で先に働かせない
在留資格認定証明書交付申請中に、本人が短期滞在で来日し、日本で会議、打合せ、研修、引継ぎなどを行うケースがあります。
単なる商談、会議、業務連絡、短期の打合せであれば短期滞在の範囲内で行われることがあります。
しかし、日本の会社の指揮命令下で継続的に業務を行う、日本での担当業務を先行して開始する、実務上の引継ぎを本格的に行うような場合は、短期滞在の範囲を超えるおそれがあります。
企業内転勤の申請中であっても、許可前に日本で就労活動を開始してよいわけではありません。
申請書と添付資料の整合性を確認する
企業内転勤の申請では、申請書と添付資料の整合性が非常に重要です。
次のような不整合があると、追加資料を求められたり、不交付のリスクが高まったりします。
・申請書では3年滞在予定なのに、辞令では1年と書かれている
・転勤命令書の所属部署と職務内容説明書の部署が違う
・海外勤務証明書では営業担当なのに、日本での業務がエンジニアになっている
・報酬額が申請書、労働条件通知書、給与説明書で異なる
・海外会社と日本会社の関係が資料によって異なる
・本人の入社日が履歴書と会社証明書で違う
企業内転勤では、会社側が作成する資料が多いため、部署ごとに情報がずれることがあります。
人事部、海外拠点、受入部署、法務部、総務部、行政書士などの間で、同じ情報を共有し、最終的に申請書と添付資料を照合することが重要です。
9.不交付になりやすいケース
企業内転勤で不交付になりやすいのは、次のようなケースです。
海外勤務期間が1年に満たない
海外拠点に入社して間もない社員を日本に転勤させる場合、企業内転勤の要件を満たさない可能性があります。
この場合は、技術・人文知識・国際業務で申請できるかを検討します。
日本での業務が単純作業に見える
日本での業務が、現場作業、販売補助、製造ライン作業、清掃、配膳、単純な事務作業などに見える場合は、企業内転勤として認められにくくなります。
業務内容説明書で、専門性を具体的に説明する必要があります。
転勤ではなく採用に見える
海外会社を退職し、日本法人に新規採用されるような形になっている場合、企業内転勤ではなく技術・人文知識・国際業務の問題になることがあります。
転勤、出向、異動の法的・実務的な位置付けを明確にする必要があります。
企業間関係が不明確
海外事業所と日本側受入機関が、資本関係や組織関係を持たない単なる取引先である場合、企業内転勤には該当しない可能性があります。
親子会社、関連会社、支店、本店、同一法人内の事業所など、関係性を資料で示すことが必要です。
短期滞在で実質的に働いていた疑いがある
申請人が過去に短期滞在で何度も来日しており、その間に日本で実質的な業務を行っていたように見える場合、審査で問題になることがあります。
短期滞在中の活動内容を確認し、必要に応じて説明できるようにしておく必要があります。
10.まとめ
海外の外国人社員を企業内転勤で日本に呼ぶ場合、在留資格認定証明書交付申請では、単に「海外グループ会社の社員を日本に呼ぶ」という説明だけでは足りません。
企業内転勤では、次の点が重要です。
・海外事業所から日本事業所への期間を定めた転勤であること
・日本で行う業務が技術・人文知識・国際業務に相当する専門的業務であること
・転勤直前に海外事業所で1年以上継続して関連業務に従事していること
・日本人と同等額以上の報酬を受けること
・海外事業所と日本事業所の関係を資料で示せること
・受入企業のカテゴリーに応じた資料を準備すること
・申請書と添付資料の内容を一致させること
カテゴリー1・2では提出資料が簡素化されることがありますが、企業内転勤の要件そのものが軽くなるわけではありません。
カテゴリー3・4では、転勤の実態、企業間関係、本人の経歴、事業内容、決算状況などを丁寧に説明する必要があります。特に令和8年4月1日から運用開始された提出書類一覧では、カテゴリー3・4を中心に、海外事業所の実在性や事業活動を示す資料の準備がより重要になります。
海外拠点から外国人社員を日本に転勤させる場合には、早い段階で、在留資格の選択、カテゴリー確認、職務内容整理、本人ヒアリング、提出資料の準備を進めることが大切です。
参考資料・出典
・在留資格「企業内転勤」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格認定証明書交付申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・カテゴリー1又は2の企業において就労する者及びその家族に係る在留資格認定証明書交付申請手続の取扱いについて 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・「企業内転勤」に係る提出書類一覧・令和8年4月1日運用開始 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より
