Ⅰ-23.企業内転勤のCOE申請中に短期滞在で来日させる場合の注意点|赴任準備・引継ぎと不法就労リスク

海外の親会社、子会社、関連会社、支店などに勤務している外国人社員を、日本側の会社へ転勤させる場合、在留資格「企業内転勤」の在留資格認定証明書交付申請を行うことがあります。

一般には「企業内転勤ビザ」と呼ばれることがありますが、正確には、外国人が日本で行う活動に応じて認められる「在留資格」の申請です。

企業内転勤の在留資格認定証明書交付申請をしている間、企業側としては、次のように考えることがあります。

「COEが出る前に、短期滞在で一度来日してもらい、赴任準備を進めたい」
「先に日本で上司や関係者と打合せをさせたい」
「COE申請中だが、業務引継ぎのために短期商用で来日してもらいたい」
「マルチビザを持っているので、短期出張を繰り返しながら赴任準備を進めたい」

このような対応は、実務上まったくあり得ないものではありません。
しかし、短期滞在で来日している外国人社員に、日本で実質的な就労をさせてしまうと、不法就労や資格外活動の問題につながるおそれがあります。

この記事では、企業内転勤のCOE交付前、又は申請手続中に、外国人社員を短期滞在で日本に呼び寄せる場合、どのような活動が可能で、どのような活動は避けるべきかを整理します。

  1. 1 短期滞在は「赴任前の就労」を認める在留資格ではない
  2. 2 COE申請中であることは、日本で働ける根拠にはならない
  3. 3 短期滞在で可能と考えられる活動
    1. 1 社内会議への出席
    2. 2 業務連絡・打合せ
    3. 3 商談・契約調印・市場調査
    4. 4 赴任前の生活準備
    5. 5 受け身の説明・オリエンテーション
  4. 4 短期滞在では避けるべき活動
    1. 1 日本側部署の担当者として通常業務を処理すること
    2. 2 日本法人から給与・報酬を受けること
    3. 3 OJTとして実務に従事させること
    4. 4 業務引継ぎの名目で日本側業務を開始すること
    5. 5 短期滞在を繰り返して実質的に勤務すること
  5. 5 「赴任準備」と「就労」の線引き
    1. 1 その活動は日本側の業務成果を生んでいるか
    2. 2 日本側の指揮命令下に入っているか
    3. 3 日本側で給与・手当・報酬が発生しているか
    4. 4 その活動は一時的な出張か、赴任開始か
  6. 6 COE申請中に短期滞在査証を申請する場合の注意点
  7. 7 短期滞在中にCOEが交付された場合
  8. 8 COE申請中でも在留期間を超えて滞在してはいけない
  9. 9 企業側が作っておくべき管理資料
    1. 1 短期滞在中の滞在予定表
    2. 2 短期滞在中に行わせない業務リスト
    3. 3 会議・説明・引継ぎの記録
    4. 4 勤務開始日の管理
  10. 10 不法就労と企業側の責任
  11. 11 実務上の判断例
    1. 可能と整理しやすい例
    2. 避けるべき例
  12. 12 企業が取るべき安全な対応
    1. 1 短期滞在の目的を明確にする
    2. 2 滞在予定表を作成する
    3. 3 受入部署に禁止事項を伝える
    4. 4 正式な勤務開始日は企業内転勤での入国後にする
    5. 5 COE交付後の流れを事前に決めておく
  13. 13 まとめ
  14. 参照した公式情報

1 短期滞在は「赴任前の就労」を認める在留資格ではない

まず確認すべきことは、短期滞在は、日本で本格的に勤務するための在留資格ではないという点です。

外務省は、短期滞在について、「観光、商用、知人・親族訪問等90日以内の滞在」であり、「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を得る活動を行うことは認められません」と説明しています。
参照:外務省「査証(ビザ)|短期滞在

また、外務省の短期滞在査証の案内でも、短期商用等の目的として、会議出席、業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査などが例示されていますが、同時に、日本国内において収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動は認められないとされています。
参照:外務省「一次有効の短期滞在査証(ビザ)を申請する手続の概要(中国国籍の方)

つまり、短期滞在で来日している間にできることは、あくまで短期商用等として認められる範囲の活動です。
企業内転勤として日本で勤務することが予定されている場合でも、COEが交付される前、企業内転勤の査証で入国する前、又は適法に在留資格変更が認められる前に、日本で本格的な勤務を開始することはできません。

2 COE申請中であることは、日本で働ける根拠にはならない

在留資格認定証明書、いわゆるCOEは、海外にいる外国人が日本に入国しようとする際に、日本で行おうとする活動が在留資格に該当すること等を事前に確認するための証明書です。

出入国在留管理庁は、在留資格認定証明書交付申請について、日本に入国しようとする外国人が、日本で行おうとする活動内容が在留資格に該当するものであること等を証明するため、入国前にあらかじめ行う申請と説明しています。
参照:出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請

したがって、COE申請を出しているだけでは、その外国人社員が日本で働けるわけではありません。
また、COEが交付されたとしても、その時点で当然に日本国内で企業内転勤の活動を開始できるわけではありません。

通常は、COE交付後、在外公館で査証申請を行い、企業内転勤の在留資格で日本に入国してから、日本での勤務を開始します。

すでに短期滞在で日本に入国している場合でも、COEが出たからといって、短期滞在のまま直ちに企業内転勤として働き始めることはできません。
現在日本にいる根拠が短期滞在である以上、その在留資格で認められる活動範囲にとどまる必要があります。

3 短期滞在で可能と考えられる活動

企業内転勤のCOE申請中であっても、短期滞在の範囲内であれば、日本への短期出張や準備活動がすべて禁止されるわけではありません。

短期商用として認められる範囲であれば、次のような活動は可能と考えられます。

1 社内会議への出席

日本側の会社で、今後の赴任予定、業務範囲、組織体制、担当プロジェクトの概要について説明を受けるための会議に出席することは、短期商用の範囲内と整理できる場合があります。

ただし、会議への出席と、日本側の業務担当者として実際に業務を処理することは異なります。
単に説明を受ける、方針を確認する、今後の予定を調整する程度であれば比較的整理しやすい一方、会議の場で日本側の担当者として意思決定を行ったり、継続的な業務指示を出したりする場合には、実質的な就労と評価されるおそれがあります。

2 業務連絡・打合せ

外務省の短期滞在査証の案内では、短期商用等の例として「業務連絡」が挙げられています。
そのため、海外拠点の社員として、日本側拠点との業務連絡や打合せを行うこと自体は、短期滞在の範囲に収まる場合があります。

例えば、海外拠点で担当していた業務の状況を日本側に説明する、今後の転勤に向けた連絡事項を共有する、関係者との顔合わせを行うといった活動です。

ただし、打合せの名目であっても、日本側の通常業務を実際に処理している場合には注意が必要です。

3 商談・契約調印・市場調査

短期商用の例として、商談、契約調印、市場調査なども挙げられています。
そのため、海外法人の社員として、日本の取引先と短期間の商談を行ったり、市場調査を行ったりすることは、短期滞在の範囲に収まる場合があります。

もっとも、企業内転勤で日本に赴任する予定の社員については、注意が必要です。
海外法人の社員として短期商用で来日しているのか、日本法人の担当者として日本国内の営業活動を開始しているのかが曖昧になると、短期滞在の範囲を超えていると見られるおそれがあります。

4 赴任前の生活準備

赴任予定者が、住居候補の確認、生活環境の確認、通勤経路の確認、家族帯同のための学校見学、社宅や住居の内見などを行うことは、通常、就労そのものではありません。

このような生活準備は、短期滞在で行う活動として整理しやすいと考えられます。

ただし、生活準備のために来日したはずなのに、実際にはほとんどの時間を日本側オフィスで業務処理に充てている場合には、活動実態が問題になります。

5 受け身の説明・オリエンテーション

会社概要、就業規則、社内システム、赴任後の勤務条件、社内手続、生活ルールなどについて説明を受けることは、赴任前準備として整理できる場合があります。

ただし、いわゆるOJTとして、実際の業務案件を担当しながら覚えるような活動は、単なる説明・オリエンテーションとは異なります。
短期滞在中に実務を担当させる形にならないよう、内容を明確に区別する必要があります。

4 短期滞在では避けるべき活動

次に、短期滞在中には避けるべき活動を整理します。

以下のような活動は、日本での実質的な就労と見られるおそれが高いため、COE交付前や企業内転勤での入国前に行わせるべきではありません。

1 日本側部署の担当者として通常業務を処理すること

日本側の部署に席を置き、通常の勤務時間に合わせて出社し、日々の業務を担当する場合は、実質的には日本で働いていると評価される可能性があります。

例えば、次のような活動です。

  • 日本側部署のメンバーとして日常業務を処理する
  • 日本法人の担当者として顧客対応を行う
  • 日本側の社内システムで案件処理を行う
  • 日本側の承認フローに入り、業務判断を行う
  • 日本側の業務報告ラインに組み込まれる
  • 日本側で勤怠管理を受ける

これらは、単なる会議出席や業務連絡を超え、日本での就労開始と見られるおそれがあります。

2 日本法人から給与・報酬を受けること

短期滞在では、日本国内で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動は認められていません。

したがって、短期滞在中の外国人社員に、日本法人から給与、日当、業務委託料、手当などを支払う場合には、特に慎重な検討が必要です。

外務省は、短期滞在について「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を得る活動を行うことは認められません」と明記しています。
参照:外務省「査証(ビザ)|短期滞在

なお、海外法人から通常の給与が継続して支払われている場合でも、それだけで直ちに安全と考えるべきではありません。
重要なのは、日本滞在中に行っている活動の実態です。
日本国内で、日本側事業所の通常業務に従事していると見られる場合には、日本側から給与を支払っていないというだけではリスクを回避できません。

3 OJTとして実務に従事させること

赴任前研修や引継ぎという名目であっても、実際に日本側の仕事を処理させる場合には注意が必要です。

例えば、次のような活動は、短期滞在中に行わせるべきではありません。

  • 実案件を担当させる
  • 顧客への提案書を作成させる
  • 日本側の製品・サービスの設計、開発、品質管理を担当させる
  • 日本法人の営業活動を継続的に行わせる
  • 部下やチームに業務指示を出させる
  • 日本側の会議で担当者として意思決定を行わせる
  • 工場、倉庫、店舗、現場で実務作業を行わせる

このような活動は、単なる研修・説明・会議ではなく、日本での就労と評価されるおそれがあります。

4 業務引継ぎの名目で日本側業務を開始すること

企業内転勤では、海外拠点から日本拠点へ業務を引き継ぐ場面が多くあります。
しかし、「引継ぎ」は非常に曖昧な言葉です。

短期滞在中に許容されやすいのは、過去の担当業務の説明、資料の共有、今後の役割確認、関係者との打合せなどです。

一方、短期滞在中に避けるべきなのは、引継ぎを受けた後、そのまま日本側の担当者として業務を開始することです。

例えば、次のような場合はリスクがあります。

  • 日本側の顧客を正式に担当する
  • 日本側の業務メールアカウントを使い、担当者として外部対応を始める
  • 日本側部署の職務分掌に組み込まれる
  • 日本側の上司から日々の業務指示を受ける
  • 日本の勤務開始日より前に実質的な勤務が始まっている

企業側としては、「引継ぎ」と「勤務開始」を明確に分ける必要があります。

5 短期滞在を繰り返して実質的に勤務すること

短期商用のマルチビザを持っている場合、一定期間内に複数回日本へ入国できることがあります。
しかし、マルチビザがあることと、日本で働けることは別問題です。

短期滞在を繰り返しながら、日本側で継続的に業務を行っている場合、形式上は1回ごとの滞在が短期であっても、実質的には日本で就労していると見られるおそれがあります。

特に、次のような場合は注意が必要です。

  • 1か月以内の出張を何度も繰り返している
  • 日本側部署で毎回同じ業務を担当している
  • 日本側の上司・チームに組み込まれている
  • 顧客や社内関係者から、日本側担当者として扱われている
  • COE不交付後も短期滞在で実務を継続している
  • 「COEが出るまでのつなぎ」として短期滞在で勤務している

このような運用は、短期滞在の本来の趣旨から外れていると見られる可能性があります。

5 「赴任準備」と「就労」の線引き

企業担当者が最も迷いやすいのは、「赴任準備」や「引継ぎ」と「就労」の境目です。

実務上は、次の視点で整理すると分かりやすくなります。

1 その活動は日本側の業務成果を生んでいるか

単に説明を受ける、会議に参加する、今後の予定を確認するだけであれば、短期商用の範囲で整理しやすい活動です。

一方、その外国人社員が、日本側の業務成果物を作成している場合には注意が必要です。

例えば、次のような活動です。

  • 日本法人の顧客向け資料を作成する
  • 日本側の案件を処理する
  • 日本側の契約交渉を担当者として進める
  • 日本側のシステム開発、設計、品質管理を担当する
  • 日本側の営業計画や予算作成を実務担当者として行う

このような活動は、実質的な就労と見られる可能性があります。

2 日本側の指揮命令下に入っているか

短期滞在中であっても、日本側の上司から日々の業務指示を受け、日本側の勤務時間に従い、日本側の組織の一員として働いている場合には、就労性が強くなります。

逆に、海外法人の社員として短期出張し、会議・連絡・説明・調整を行っているだけであれば、短期商用として整理しやすくなります。

3 日本側で給与・手当・報酬が発生しているか

日本側から給与や報酬が発生している場合には、短期滞在の範囲を超えるリスクが高まります。

ただし、日本側から報酬を支払っていない場合でも、活動実態が日本での就労であれば問題となり得ます。
報酬の支払元だけで判断するのではなく、日本で何をしているのかを確認する必要があります。

4 その活動は一時的な出張か、赴任開始か

短期滞在で認められるのは、あくまで短期間の滞在を前提とする活動です。

企業内転勤予定者については、次のような整理が重要です。

  • 短期滞在中は、海外拠点の社員として来日している
  • 日本側勤務は、企業内転勤の在留資格で入国した後に開始する
  • 日本側の辞令・勤務開始日・勤怠管理・給与処理は、適法な在留資格取得後に合わせる
  • 短期滞在中の予定表には、会議、説明、生活準備などを具体的に記録する
  • 実務担当者としての業務開始日を曖昧にしない

この区別が曖昧になると、後日のCOE申請や更新申請で説明に困ることがあります。

6 COE申請中に短期滞在査証を申請する場合の注意点

COE申請中に、別途、短期滞在査証を申請しようとする場合にも注意が必要です。

外務省の査証Q&Aでは、査証申請を受け付けられないことがある場合の一つとして、「在留資格認定証明書交付申請中である場合」が挙げられています。
参照:外務省「よくある質問|査証(ビザ)

これは、企業内転勤などの長期滞在・就労目的でCOE申請中であるにもかかわらず、同時に短期滞在査証を申請する場合、渡航目的が短期滞在として整理できるのかが問題になるためです。

したがって、COE申請中に短期滞在で来日させたい場合には、次の点を確認する必要があります。

  • 短期滞在で来日する目的が明確か
  • その目的が短期商用等の範囲に収まるか
  • 日本で報酬を受ける活動や実務就労を行わないか
  • COE申請中の企業内転勤活動を先取りするものではないか
  • 滞在予定表の内容が短期滞在として説明できるか
  • 査証申請先の在外公館の案内と矛盾しないか

既に有効な短期商用マルチビザを持っている場合でも、同じ問題は残ります。
査証があるからといって、日本で就労できるわけではありません。

7 短期滞在中にCOEが交付された場合

短期滞在で来日している間に、企業内転勤のCOEが交付されることがあります。

この場合でも、短期滞在のまま当然に企業内転勤の活動を開始できるわけではありません。

短期滞在から企業内転勤などの就労系在留資格へ変更することは、原則的なルートではありません。
出入国在留管理庁のQ&Aでは、「短期滞在」からの在留資格変更について、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとされており、原則として認められないと説明されています。
参照:出入国在留管理庁「出入国審査・在留審査Q&A

そのため、企業内転勤のCOEが交付された場合には、原則として、いったん出国し、居住国を管轄する日本大使館・総領事館等で査証申請を行い、企業内転勤の在留資格で再入国する流れを前提に考えるべきです。

外務省も、就労・長期滞在について、日本国内において報酬を得て仕事をする時や90日以上滞在する時など、短期滞在の要件に該当しない場合には、原則として出入国在留管理庁で在留資格認定証明書を取得した上で、在外公館で査証申請を行うと案内しています。
参照:外務省「査証(ビザ)|就労・長期滞在

8 COE申請中でも在留期間を超えて滞在してはいけない

短期滞在で来日した外国人社員は、入国時に決定された在留期間内に出国する必要があります。

COE申請中であること、COE交付を待っていること、日本側企業が必要としていることは、短期滞在の在留期間を自動的に延長する理由にはなりません。

出入国在留管理庁の在留資格「短期滞在」のページでは、短期滞在の在留期間更新について、人道上の真にやむを得ない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に認められるものであり、例えば病気治療をする必要がある場合などがこれに当たると説明されています。
参照:出入国在留管理庁「在留資格『短期滞在』

したがって、「COEの審査がまだ終わらないから、日本で待たせておく」という運用は避けるべきです。

短期滞在の在留期限を超えて日本に残れば、不法残留の問題が生じます。
企業側としても、入国日、在留期限、出国予定日、COE審査の進行状況を管理し、期限内に出国できるようにスケジュールを組む必要があります。

9 企業側が作っておくべき管理資料

COE申請中に短期滞在で来日させる場合、後日説明できるよう、企業側では次の資料を残しておくことをお勧めします。

1 短期滞在中の滞在予定表

滞在予定表には、次の内容を具体的に記載します。

  • 入国日
  • 出国予定日
  • 滞在先
  • 訪問先
  • 会議予定
  • 生活準備の日程
  • 関係者との打合せ予定
  • 日本で行う活動の内容

滞在予定表の内容は、短期商用又は赴任前準備として説明できる範囲にとどめる必要があります。

2 短期滞在中に行わせない業務リスト

企業側では、短期滞在中に行わせない業務を明確にしておくことが重要です。

例えば、次のような業務は禁止事項として整理します。

  • 日本側部署の通常業務
  • 顧客担当者としての外部対応
  • 実案件の処理
  • 日本側上司からの日常的な業務指示
  • 日本側勤怠管理への組込み
  • 日本法人からの給与・報酬支払
  • 日本側職務分掌への正式組込み

このようなリストを作っておくことで、受入部署が「短期滞在だからまだ働かせてはいけない」という意識を共有しやすくなります。

3 会議・説明・引継ぎの記録

短期滞在中に会議や説明を行う場合には、議題、参加者、内容を簡単に記録しておくとよいでしょう。

特に、引継ぎを行う場合には、その内容が「説明」「共有」「確認」にとどまっていることを明確にしておくことが重要です。

4 勤務開始日の管理

企業内転勤の正式な勤務開始日は、企業内転勤の在留資格で入国した後に設定するのが安全です。

短期滞在中に、社内システム上の配属、メールアカウント付与、名刺作成、勤怠登録、給与支払などを先行させる場合には、実質的な勤務開始と見られないよう慎重に管理する必要があります。

形式上の準備と、実際の勤務開始は区別しておくべきです。

10 不法就労と企業側の責任

短期滞在で来日した外国人社員に、日本で認められていない就労活動をさせた場合、外国人本人だけでなく、企業側にも責任が生じるおそれがあります。

厚生労働省は、外国人雇用に関する資料の中で、不法就労となる例として、観光等の短期滞在目的で入国した人が許可を受けずに働くケースを挙げています。
また、不法就労させたり、不法就労をあっせんした人について、不法就労助長罪の対象となることも案内されています。
参照:厚生労働省・東京労働局「外国人の適正な雇用にご協力ください

そのため、企業としては、次の点を徹底する必要があります。

  • 短期滞在中は勤務開始させない
  • COE申請中であることを就労可能な根拠としない
  • 短期商用の範囲を超える活動をさせない
  • 日本側部署に実務担当者として組み込まない
  • 日本側から給与・報酬を支払わない
  • 在留期限を超えて滞在させない
  • COE交付後は、原則として適切な査証手続を経て企業内転勤で入国させる

不法就労リスクは、本人の問題だけではありません。
企業側の人事部門、受入部署、現場責任者が、短期滞在の活動範囲を理解しておくことが重要です。

11 実務上の判断例

ここでは、企業内転勤予定者を短期滞在で来日させる場合の判断例を整理します。

可能と整理しやすい例

次のような活動は、短期商用又は赴任前準備として整理しやすいと考えられます。

  • 日本側関係者との顔合わせ
  • 赴任後の職務内容に関する説明を受ける
  • 社内規程や生活ルールの説明を受ける
  • 海外拠点での担当業務の状況を日本側に説明する
  • 今後の転勤スケジュールを確認する
  • 会議に出席する
  • 業務連絡を行う
  • 市場調査を行う
  • 住居候補を確認する
  • 家族帯同に向けた生活環境を確認する
  • 学校や通勤経路を確認する

ただし、これらの活動であっても、実際の内容が日本側の通常業務に踏み込んでいる場合には注意が必要です。

避けるべき例

次のような活動は、短期滞在中には避けるべきです。

  • 日本側部署の一員として通常勤務する
  • 日本法人の担当者として顧客対応を始める
  • 日本側の案件を処理する
  • 日本側の業務メールで外部対応を行う
  • 日本側の上司から日々の業務指示を受ける
  • 勤怠管理を受ける
  • 日本法人から給与・報酬を受ける
  • 工場、倉庫、店舗、現場で作業する
  • 実務担当者として部下に指示する
  • COEが出るまで短期滞在を繰り返して実務を続ける

「短期だから少しだけなら大丈夫」と考えるのは危険です。
活動の名称ではなく、実態として日本で働いているかどうかが問題になります。

12 企業が取るべき安全な対応

企業内転勤のCOE申請中に短期滞在で来日させる場合、企業としては次のような運用が安全です。

1 短期滞在の目的を明確にする

短期滞在で来日する目的を、会議、業務連絡、赴任前説明、生活準備などに限定し、実務就労と混同しないようにします。

2 滞在予定表を作成する

何月何日にどこで何をするのかを整理し、短期滞在の範囲内であることを説明できるようにします。

3 受入部署に禁止事項を伝える

人事部門だけでなく、実際に受け入れる部署にも、短期滞在中は働かせてはいけないことを伝える必要があります。

現場が「もうすぐ赴任するのだから、少し手伝ってもらおう」と考えてしまうと、短期滞在の範囲を超えるおそれがあります。

4 正式な勤務開始日は企業内転勤での入国後にする

辞令、配属、勤怠、給与、社内システム上の勤務開始日は、企業内転勤の在留資格で適法に入国した後に設定するのが安全です。

5 COE交付後の流れを事前に決めておく

COEが交付されたら、どの国・地域の在外公館で査証申請を行うのか、いつ出国し、いつ再入国するのかを事前に決めておきます。

短期滞在中にCOEが出た場合でも、そのまま日本で働き始めるのではなく、適切な手続を踏む必要があります。

13 まとめ

企業内転勤のCOE申請中に、海外拠点の外国人社員を短期滞在で日本に呼び寄せること自体が、直ちに禁止されるわけではありません。

しかし、短期滞在で認められるのは、観光、親族訪問、短期商用、会議出席、業務連絡、商談、市場調査、赴任前の生活準備など、短期間の滞在を前提とする活動です。

一方で、日本側部署の一員として通常業務を処理すること、日本法人の担当者として顧客対応を始めること、日本側から給与・報酬を受けること、OJTとして実案件を担当すること、短期滞在を繰り返しながら実質的に勤務することは、短期滞在の範囲を超えるおそれがあります。

COE申請中であることは、日本で働ける根拠にはなりません。
COEが交付されたとしても、短期滞在のまま直ちに企業内転勤として働けるわけではありません。

企業としては、短期滞在で来日させる場合には、活動内容を会議、業務連絡、赴任前説明、生活準備などに限定し、勤務開始日、給与支払、勤怠管理、職務分掌、顧客対応などは、企業内転勤の在留資格で適法に入国した後に開始するよう管理することが重要です。

不法就労や不法滞在と見られないようにするためには、形式的な在留資格名だけでなく、実際に日本で何をしていたのかを説明できるようにしておく必要があります。

参照した公式情報