Ⅵ-9.特定技能外国人が転職する場合の在留資格上の注意点

Ⅵ 特定技能・育成就労・技能実習・登録支援

特定技能外国人は、一定の条件の下で転職することができます。

しかし、特定技能の転職は、日本人の転職のように、退職して新しい会社に入社すれば終わるものではありません。

新しい受入れ企業、対象分野、業務区分、雇用契約、支援体制について、改めて在留資格変更許可申請が必要になります。

企業や外国人本人からは、次のような相談を受けることがあります。

・特定技能外国人は自由に転職できますか
・同じ外食業の店舗へ移るだけなら届出だけでよいですか
・退職後、次の会社でいつから働けますか
・転職先が決まるまでアルバイトできますか
・登録支援機関を変更する場合はどうなりますか
・前の会社が書類を出してくれない場合はどうすればよいですか
・外食業分野の受入れ停止措置中でも転職できますか

特定技能外国人が転職する場合に最も重要なのは、許可前に新しい会社で働き始めないことです。

また、同じ分野内の転職であっても、業務区分や受入れ企業が変わるため、在留資格変更許可申請が必要になります。

この記事では、特定技能外国人が転職する場合の在留資格上の注意点、転職可能な範囲、申請前就労のリスク、受入れ企業側の確認事項、退職後の届出を解説します。

特定技能外国人は転職できる

特定技能外国人は、制度上、転職が可能です。

ただし、どの会社へでも自由に転職できるわけではありません。

転職先が、特定技能の対象分野・対象業務に該当し、受入れ企業としての基準を満たしている必要があります。

また、外国人本人が、新しい業務に対応する技能水準を有していることも必要です。

出入国在留管理庁のQ&Aでは、同一分野内でも複数の業務が存在する場合には、外国人が従事する業務に対応する技能を有していることが確保されて初めて転職が認められると説明されています。

転職が認められるのは、同一の業務区分内又は試験等により技能水準の共通性が確認されている業務区分間です。
(出典:特定技能制度に関するQ&A、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

つまり、「特定技能だからどの仕事でもよい」というものではありません。

転職時には在留資格変更許可申請が必要

特定技能外国人が所属機関を変更する場合は、在留資格変更許可申請が必要です。

出入国在留管理庁の在留資格「特定技能」のページでも、在留資格「特定技能」の方が所属機関を変更する場合は、在留資格変更許可申請が必要であると案内されています。
(出典:在留資格「特定技能」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

この点は非常に重要です。

同じ分野、同じ業務、同じ地域での転職であっても、受入れ企業が変わる場合は、変更許可申請が必要になります。

「届出だけでよい」と誤解しないように注意が必要です。

新しい会社で働けるのは許可後

転職先が決まっていても、在留資格変更許可を受ける前に新しい会社で働き始めることはできません。

特定技能として働けるのは、許可された受入れ企業との特定技能雇用契約に基づく活動です。

転職先での就労は、変更許可後に開始します。

許可前に新しい会社で勤務を開始すると、資格外活動や不法就労助長の問題が生じる可能性があります。

受入れ企業は、次の点を明確に管理します。

・内定日
・雇用契約締結日
・在留資格変更許可申請日
・許可日
・入社日
・実際の就労開始日

「人手が足りないから研修だけ先に始める」「短時間だけ手伝ってもらう」という対応は避けるべきです。

転職先で確認される事項

転職先の企業では、初めて特定技能外国人を受け入れる場合と同様に、受入れ企業としての基準が確認されます。

確認事項は、次のとおりです。

・対象分野に該当するか
・担当業務が対象業務区分に該当するか
・外国人本人の技能が業務に対応しているか
・雇用契約が適正か
・報酬が日本人と同等以上か
・労働条件が適正か
・社会保険、労働保険に加入しているか
・税金、社会保険料に未納がないか
・支援計画を作成できるか
・登録支援機関へ委託するか
・分野別協議会へ加入しているか
・地方自治体への協力確認書を提出しているか

転職先が特定技能の受入れ基準を満たしていなければ、外国人本人に技能や在留期間が残っていても、変更許可は難しくなります。

業務区分が違う場合

同じ分野内での転職でも、業務区分が変わる場合は注意が必要です。

たとえば、工業製品製造業分野では、複数の業務区分があります。

外国人本人が合格している試験区分又は技能実習で良好修了した職種・作業が、新しい業務区分に対応していなければ、転職が認められない可能性があります。

確認すべき点は、次のとおりです。

・現在の分野
・現在の業務区分
・転職先の分野
・転職先の業務区分
・本人の技能試験合格区分
・技能実習職種・作業との関連性
・業務区分間の共通性
・分野別運用要領上の取扱い

同じ会社内の異動であっても、業務が大きく変わる場合は、届出又は変更申請が必要になることがあります。

異なる分野へ転職する場合

特定技能外国人が異なる分野へ転職する場合は、原則として、その分野の技能試験等に合格している必要があります。

たとえば、外食業分野で働いていた外国人が、宿泊分野や製造分野へ転職する場合には、新しい分野の技能水準を満たしていることを証明する必要があります。

また、受入れ企業も新しい分野の基準を満たす必要があります。

異分野への転職では、次の点を確認します。

・新分野の技能試験合格
・日本語要件
・分野別協議会加入
・業務区分
・雇用契約
・支援計画
・通算在留期間
・在留資格変更許可申請

特定技能1号の通算在留期間は、分野を変えても原則として通算されます。

新しい分野へ転職しても、5年のカウントがリセットされるわけではありません。

退職時の届出

特定技能外国人が退職した場合、外国人本人と受入れ企業の双方に届出が関係します。

外国人本人は、所属機関に変更があった場合、所属機関に関する届出が必要です。

出入国在留管理庁の特定技能ページでも、所属機関に関する届出が案内されています。
(出典:在留資格「特定技能」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

受入れ企業側は、特定技能雇用契約の終了、受入れ困難、支援委託契約の変更など、該当する届出を行う必要があります。

届出を怠ると、今後の受入れや更新に影響する可能性があります。

転職活動中の在留資格

退職後、すぐに転職先が決まらない場合があります。

この場合でも、特定技能外国人は、原則として、在留資格で認められた活動を継続している必要があります。

退職後に長期間就労していない場合、在留資格上の活動を行っていない状態となり、在留資格取消しの問題が生じる可能性があります。

また、転職活動中に別の会社でアルバイトすることはできません。

出入国在留管理庁のQ&Aでも、特定技能外国人が別の会社でアルバイトすることはできないとされています。
(出典:特定技能制度に関するQ&A、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

転職先が決まっていない場合は、早めに専門家や入管へ相談することが重要です。

本人の責任によらない離職の場合

会社都合の解雇、事業縮小、店舗閉鎖、受入れ困難など、外国人本人に責任がない理由で離職する場合、特定技能1号では転職支援が必要になります。

支援計画の10項目には、本人の責任によらない理由で特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援が含まれています。

転職支援としては、次のような対応が考えられます。

・転職先探しの支援
・ハローワークの案内
・推薦状の作成
・求職活動のための有給休暇付与
・必要な行政手続きの案内
・登録支援機関との連携

本人に責任がない離職なのに、企業が何も支援しない場合、支援計画の実施義務に問題が生じます。

前職企業から資料が出ない場合

転職時には、前職での就労状況、退職日、報酬支払、支援状況などを確認する必要が出ることがあります。

しかし、前職企業との関係が悪化している場合、資料取得が難しいことがあります。

この場合は、本人が持っている資料を確認します。

・雇用契約書
・給与明細
・源泉徴収票
・退職証明書
・在留カード
・指定書
・支援計画
・過去の申請書類控え
・社会保険資料
・住民税資料

前職の書類が不足している場合でも、別資料で補えるかを検討します。

ただし、退職理由や雇用実態が不明確な場合は、申請で説明が必要になることがあります。

登録支援機関の変更

転職により受入れ企業が変わる場合、登録支援機関も変わることがあります。

新しい受入れ企業が自社支援を行う場合もありますし、新しい登録支援機関へ委託する場合もあります。

確認すべき点は、次のとおりです。

・旧登録支援機関との契約終了
・新登録支援機関との契約締結
・支援計画の作成
・相談窓口の変更
・外国人本人への説明
・支援の空白防止
・必要な届出

転職直後は、住居、給与、生活環境、人間関係が変わるため、支援が特に重要になります。

外食業分野の転職

外食業分野では、2026年4月13日以降、特定技能1号の新規受入れに関する在留資格認定証明書交付申請は不交付とされ、同日以降の在留資格変更許可申請も原則不許可とされています。

ただし、農林水産省の案内では、同日以降も、外食業分野で特定技能1号として在留する方からの転職等に伴う申請は通常どおり審査するとされています。
(出典:外食業分野における外国人材の受入れについて、農林水産省ウェブサイトより)

したがって、既に外食業分野の特定技能1号として在留している外国人が、外食業分野内で転職する場合は、停止措置中でも通常どおり審査されます。

ただし、通常どおり審査されるというだけで、必ず許可されるわけではありません。

転職先企業の協議会加入、業務内容、雇用契約、支援体制、届出状況を確認する必要があります。

転職前のチェックリスト

転職を検討する場合、次の点を確認します。

・現在の在留期限
・現在の分野、業務区分
・転職先の分野、業務区分
・本人の技能試験、技能実習修了状況
・転職先企業の受入れ基準
・雇用契約内容
・報酬水準
・支援計画
・登録支援機関
・分野別協議会
・地方自治体への協力確認書
・前職の退職日
・新会社での就労開始予定日
・在留資格変更許可申請日
・許可前就労を防ぐ社内管理

特定技能の転職では、採用内定と就労開始の間に、在留資格変更許可申請という重要な手続きが入ります。

まとめ

特定技能外国人は転職できますが、日本人の転職と同じように、すぐ新しい会社で働けるわけではありません。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・特定技能外国人は一定の条件の下で転職できる
・所属機関を変更する場合は在留資格変更許可申請が必要である
・同じ分野内の転職でも、業務区分や技能水準の確認が必要である
・新しい会社で働けるのは、変更許可後である
・許可前に働かせると資格外活動や不法就労助長の問題が生じる
・転職先企業も受入れ企業としての基準を満たす必要がある
・異なる分野へ転職する場合は、新分野の技能試験等が必要になる
・退職時には本人と企業の双方に届出が関係する
・転職活動中に別会社でアルバイトすることはできない
・本人に責任のない離職では、転職支援が必要になる
・外食業分野では、既に外食業分野の特定技能1号として在留する方の転職等に伴う申請は、停止措置中でも通常どおり審査される

特定技能外国人の転職では、退職日、申請日、許可日、入社日を正確に管理することが大切です。

企業も本人も、許可前就労を避けるため、早めに在留資格上の手続きを確認する必要があります。

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参考資料・出典

在留資格「特定技能」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能制度に関するQ&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能所属機関・登録支援機関による届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより
1号特定技能外国人支援・登録支援機関について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
外食業分野における外国人材の受入れについて 農林水産省ウェブサイトより