永住申請では、日本での在留年数だけでなく、日本での生活実態や生活基盤が確認されます。
そのため、海外出張、一時帰国、家族の介護、海外勤務、長期出国が多い方は注意が必要です。
相談でも、次のような質問を受けることがあります。
・海外出張が多いと永住申請で不利になりますか
・年間どのくらい出国していると問題になりますか
・本国に長く帰国していた期間があります
・家族の介護で数か月海外にいました
・再入国許可を取っていれば問題ありませんか
・みなし再入国許可で出国した期間はどう見られますか
・日本に住民票があれば、海外滞在が長くても大丈夫ですか
・日本での在留年数は足りているのに、出国が多い場合はどう説明すればよいですか
永住許可に関するガイドラインでは、原則として「引き続き10年以上本邦に在留していること」が示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
ここで問題になるのが、「引き続き在留している」といえるかどうかです。
単に在留カードを持っているだけではなく、日本に生活の本拠があるか、日本で継続して生活してきた実態があるかが重要です。
この記事では、海外出国が多い場合の永住申請で確認されるポイント、再入国許可・みなし再入国許可との関係、長期出国がある場合の説明方法、理由書で整理すべき事項を解説します。
1.永住申請では「引き続き在留」が重要
永住許可ガイドラインでは、原則として引き続き10年以上日本に在留していること、その期間のうち就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることが示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
この「引き続き」という部分が重要です。
永住申請では、単に初めて来日した日から10年以上経過していればよいというものではありません。
日本を生活の本拠として、継続して在留してきたかが確認されます。
海外出国が多い場合、次のような点が問題になります。
・日本に生活拠点があるか
・日本で継続して仕事をしているか
・日本の住居を維持しているか
・家族の生活拠点は日本にあるか
・出国理由は何か
・出国期間が長すぎないか
・出国が反復していないか
・日本での納税、年金、健康保険に問題がないか
出国があること自体が直ちに問題になるわけではありません。
しかし、出国期間や頻度によっては、「日本に生活基盤がある」といえるか慎重に見られることがあります。
2.海外出張が多い場合
仕事上、海外出張が多い方もいます。
商社、メーカー、IT企業、海外営業、技術支援、現地法人管理、国際プロジェクトなどでは、短期の海外出張が多くなることがあります。
海外出張が多い場合に確認すべき点は、次のとおりです。
・出張の目的
・出張先
・出張期間
・年間の出国日数
・勤務先との雇用関係
・給与の支払元
・日本の住居
・日本での納税、社会保険
・家族の生活拠点
・今後の勤務予定
出張であれば、会社の指示に基づく業務上の出国であることを説明できる場合があります。
たとえば、在職証明書、出張命令書、海外出張記録、給与明細、会社説明書などが資料になることがあります。
重要なのは、海外出張が多くても、日本の会社に所属し、日本で雇用され、日本に生活基盤があることを説明できるかです。
3.本国への一時帰国が多い場合
本国への一時帰国が多い場合も注意が必要です。
一時帰国の理由としては、次のようなものがあります。
・親族訪問
・親の介護
・家族の病気
・子どもの手続き
・結婚式、葬儀
・本国の不動産や相続手続き
・出産
・本国の事業対応
このような事情がある場合、一時帰国自体が直ちに問題になるわけではありません。
ただし、出国期間が長い場合や、毎年長期間本国に滞在している場合は、日本に生活の本拠があるのかが問題になります。
理由書では、出国の目的、期間、日本での生活基盤、今後の予定を整理する必要があります。
4.長期出国がある場合
長期出国がある場合は、永住申請で特に慎重に見られる可能性があります。
明確に何日以上なら必ず不許可という単純な基準が公表されているわけではありません。
しかし、長期に日本を離れている場合、日本で「引き続き在留」しているといえるか、日本に生活の本拠があるかが問題になります。
長期出国がある場合は、次の点を整理します。
・出国期間
・出国理由
・出国中の勤務先との関係
・日本の住居を維持していたか
・家族は日本にいたか
・日本で給与が支払われていたか
・日本で納税していたか
・社会保険は継続していたか
・出国後に日本へ戻った理由
・今後も日本を生活拠点とする意思
たとえば、海外赴任、長期出張、親の介護、病気療養など、やむを得ない事情がある場合は、その事情を資料で説明することが重要です。
5.再入国許可とみなし再入国許可
海外へ一時的に出国し、日本へ戻る場合には、再入国許可又はみなし再入国許可が関係します。
出入国在留管理庁は、再入国許可について、日本に在留する外国人が一時的に出国し再び日本に入国しようとする場合に、入国・上陸手続を簡略化するため、法務大臣が出国に先立って与える許可と説明しています。再入国許可の有効期間は、現に有する在留期間の範囲内で、最長5年とされています。
(出典:再入国許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
また、みなし再入国許可については、在留資格をもって在留する外国人で有効な旅券を所持している方のうち、「3月」以下の在留期間を決定された方及び「短期滞在」の在留資格を持つ方以外の方が、出国の日から1年以内に再入国する場合、原則として通常の再入国許可の取得を不要とするものと説明されています。
(出典:再入国許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
再入国許可やみなし再入国許可を利用して出国していれば、在留資格を維持したまま日本へ戻ることができます。
しかし、それだけで永住申請上の「継続在留」や「生活基盤」の問題が完全に解決するわけではありません。
永住申請では、実際に日本でどのように生活してきたかが確認されます。
6.再入国許可を受けずに出国した場合
再入国許可又はみなし再入国許可を受けずに出国した場合は、在留資格そのものに大きな影響があります。
出入国在留管理庁は、再入国許可を受けずに出国した場合、その外国人が有していた在留資格及び在留期間は消滅してしまうと案内しています。
(出典:再入国許可(入管法第26条)、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
在留資格が消滅すると、その後あらためて日本に入国するための手続きが必要になります。
永住申請においても、日本での継続在留が途切れているかどうかが問題になります。
海外へ出国する際は、再入国許可又はみなし再入国許可の扱いを正確に確認することが重要です。
7.出国が多い場合に確認される生活基盤
海外出国が多い場合、永住申請では、日本での生活基盤があるかが確認されます。
確認される主な点は、次のとおりです。
・日本に住居があるか
・家族が日本で生活しているか
・日本の勤務先に所属しているか
・日本で給与を受けているか
・日本で納税しているか
・日本の年金、健康保険に加入しているか
・日本の学校に子どもが通っているか
・日本で継続した生活実態があるか
・出国は一時的なものか
・将来の生活拠点は日本か
住民票があるだけでは十分とは限りません。
実際に日本で生活している実態が重要です。
8.税金・年金・健康保険との関係
海外出国が多い場合、税金や社会保険の資料にも影響が出ることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
・海外勤務により日本での所得が変動した
・住民税の課税関係が変わった
・年金や健康保険の加入状況が変わった
・会社の海外赴任制度で社会保険が継続している
・本国で収入を得ていた
・日本で非課税期間がある
・扶養関係が変わった
永住申請では、海外出国の理由だけでなく、税金、年金、健康保険の履行状況も確認されます。
海外出国が多い方は、出国歴だけでなく、税証明や社会保険資料との整合性も確認する必要があります。
9.理由書で説明すべき内容
海外出国が多い場合は、理由書や補足説明書で説明を行うことがあります。
説明すべき内容は、次のとおりです。
・出国期間
・出国目的
・出国先
・出国中の活動内容
・出国が業務上必要だった理由
・本国の家族事情
・日本の住居を維持していたこと
・日本での勤務先との関係
・日本での納税・社会保険の状況
・家族の生活拠点
・今後は日本を生活拠点とする意思
理由書では、「出国が多いが問題ありません」とだけ書いても不十分です。
なぜ出国が多かったのか、それでも日本に生活基盤があるといえる理由を具体的に説明します。
10.資料として準備できるもの
海外出国が多い場合、次のような資料を準備することがあります。
・出入国記録
・パスポートの出入国スタンプ
・出張命令書
・会社の出張証明書
・海外勤務命令書
・在職証明書
・給与明細
・日本の住居に関する資料
・家族の住民票
・子どもの学校資料
・介護や病気に関する資料
・本国での手続き資料
・航空券、渡航記録
・日本での納税証明書
・年金、健康保険資料
資料は、出国理由と日本での生活基盤を説明するために使います。
提出すべき資料は、事情によって異なります。
11.海外勤務・海外赴任がある場合
会社の命令で海外勤務や海外赴任をしていた場合は、特に整理が必要です。
日本の会社に所属したまま海外赴任していたのか、現地法人に転籍していたのかによって、在留状況や生活基盤の見方が変わることがあります。
確認すべき点は、次のとおりです。
・日本の会社との雇用関係が継続していたか
・給与は日本で支払われていたか
・日本で社会保険に加入していたか
・日本の住居を維持していたか
・家族は日本にいたか、帯同していたか
・海外赴任期間はどのくらいか
・赴任後、日本に戻って勤務しているか
・今後も日本で勤務する予定か
海外赴任がある場合は、会社側の資料が重要になります。
単なる私的な長期出国ではなく、業務上必要な海外赴任であったことを説明できる資料を準備します。
12.本国の家族介護・病気が理由の場合
本国の親や家族の介護、病気、葬儀、相続手続きなどで長期出国した場合は、その事情を説明します。
確認すべき点は、次のとおりです。
・誰の介護又は看病だったのか
・どのくらいの期間出国したのか
・なぜ申請人が対応する必要があったのか
・日本の住居や仕事は維持していたのか
・家族は日本にいたのか
・今後も同じような長期出国が続く見込みがあるのか
介護や病気はやむを得ない事情として説明できることがあります。
ただし、証明資料が何もない場合、単なる長期出国との区別が難しくなります。
診断書、介護関係資料、親族関係資料、渡航記録などを整理することがあります。
13.子どもの出産・教育が理由の場合
配偶者の出産や子どもの教育のために本国へ長く滞在することもあります。
この場合も、理由と生活拠点を整理します。
たとえば、次のような事情です。
・本国で里帰り出産した
・子どもの出生手続きを本国で行った
・子どもの学校手続きがあった
・一時的に家族が本国に滞在していた
・その後、日本へ戻り家族で生活している
子どもや配偶者の事情がある場合、日本での家族生活が継続していることを説明する必要があります。
14.出国が多い場合の申請時期
海外出国が多い場合、すぐに永住申請をするより、一定期間、日本で安定して生活してから申請した方がよいことがあります。
特に、次のような場合です。
・直近で長期出国がある
・直近数年間の出国日数が非常に多い
・日本での勤務実態が弱い
・家族が長期間本国にいる
・日本での納税や社会保険に空白がある
・海外赴任から戻ったばかりである
・日本での生活基盤を改めて整えている途中である
永住申請では、今後も日本を生活拠点とする見込みが重要です。
長期出国直後よりも、日本での生活実態が安定してから申請する方がよい場合があります。
15.行政書士に相談するメリット
海外出国が多い方の永住申請では、在留年数だけで判断できません。
行政書士に相談することで、次の点を整理できます。
・出国期間が永住申請に与える影響
・日本での生活基盤をどう説明するか
・出張、赴任、一時帰国、介護などの理由整理
・必要な証明資料
・理由書の書き方
・申請時期の検討
・税金、年金、健康保険との整合性
・家族の生活拠点の説明
・再入国許可、みなし再入国許可の確認
海外出国が多い場合、単に出入国履歴を提出するだけではなく、なぜ出国が多かったのか、それでも日本に生活基盤があるといえるのかを説明する必要があります。
16.まとめ
海外出国が多い場合、永住申請では「引き続き日本に在留している」といえるか、日本に生活基盤があるかが重要になります。
出国があること自体が直ちに問題になるわけではありません。
しかし、出国期間が長い場合、出国回数が多い場合、日本での生活実態が弱い場合は、慎重に説明する必要があります。
この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。
・永住申請では、原則として引き続き日本に在留していることが重要である
・海外出国が多い場合、日本での生活基盤が確認される
・海外出張、本国帰国、家族介護、海外赴任など、出国理由を整理する必要がある
・再入国許可やみなし再入国許可は、在留資格を維持して再入国するための制度である
・再入国許可等を利用していても、永住申請上の生活基盤の説明は別に必要である
・再入国許可を受けずに出国すると、在留資格及び在留期間が消滅する可能性がある
・税金、年金、健康保険、勤務先、家族の生活拠点との整合性が重要である
・長期出国がある場合は、理由書や補足資料で説明することがある
・出国が多い場合、申請時期を慎重に検討すべきことがある
海外出国が多い方の永住申請では、「日本に住んでいるつもり」だけでは足りません。
実際に日本に生活の本拠があり、今後も日本で安定して生活していくことを、資料と理由書で分かりやすく説明することが大切です。
次に読みたい関連記事
・Ⅲ-11.永住申請で必要になる理由書の書き方
海外出国が多い場合の理由書作成にも関係します。
・Ⅲ-12.永住申請で必要になる住民税・国税の証明書
海外出国が税証明に与える影響を確認できます。
・Ⅲ-13.永住申請で年金記録・健康保険の納付状況を確認する方法
海外出国中の社会保険状況の確認にも関係します。
・Ⅲ-16.扶養家族が多い場合の永住申請で確認されること
家族が本国と日本に分かれている場合の整理にも関係します。
・Ⅴ-16.在留カードの氏名・住所・所属機関変更手続き
住所や所属機関の変更届出について確認できます。
参考資料・出典
・永住許可に関するガイドライン 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・永住許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・再入国許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・みなし再入国許可(入管法第26条の2) 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・再入国許可(入管法第26条) 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・出入国審査・在留審査Q&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より
