外国人雇用と在留資格情報の管理|企業はどこまで個人情報に踏み込むべきか

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外国人を雇用する企業にとって、在留資格の確認は避けて通れない問題です。

外国人社員が日本で働くためには、その人の在留資格、在留期間、就労制限、資格外活動許可の有無などを確認する必要があります。一方で、在留資格の申請書には、過去の出入国歴、過去の在留資格認定証明書交付申請歴、犯罪歴、退去強制歴、出国命令歴など、非常に個人的な情報を記載する欄があります。企業が外国人社員の在留資格申請をサポートする場合、これらの情報を本人から確認しなければならない場面があります。

しかし、ここで難しい問題が生じます。

企業としては、不法就労や虚偽申請を防ぎ、適法な雇用管理を行う必要があります。他方で、外国人社員からすれば、過去の在留状況、申請歴、入管法上のトラブル、犯罪歴などを会社に知られることで、人事評価、昇進、配属、雇用継続に影響するのではないかという不安があります。また、企業が必要以上に個人情報を集めれば、個人情報保護や公正な採用選考の観点から問題になる可能性もあります。

この問題は、単に「聞けばよい」「聞いてはいけない」という単純な話ではありません。企業の法的リスク管理、外国人社員のプライバシー、雇用上の信頼関係、入管申請の正確性、個人情報保護、労務管理が重なり合う、非常に繊細なテーマです。

この記事では、入管業務を扱う行政書士の立場から、企業が外国人を雇用する際に、在留資格に関する個人情報をどこまで把握し、どのように管理すべきかを整理します。

  1. 1.企業には在留資格を確認する責任がある
  2. 2.一方で、必要以上に聞いてよいわけではない
  3. 3.企業が把握すべき情報は3段階に分けて考える
  4. 3-1.必ず確認すべき情報
  5. 3-2.申請の内容に応じて確認すべき情報
  6. 3-3.原則として踏み込むべきではない情報
  7. 4.在留カード確認は「差別」ではなく、適正雇用のための基本手続き
  8. 5.過去の犯罪歴や入管法上の問題をどう聞くべきか
  9. 6.「隠したくなる心理」を前提に制度設計する
  10. 7.人事評価と在留資格申請情報を混同しない
  11. 8.採用段階でどこまで聞くべきか
  12. 9.雇用後に企業が管理すべき情報
  13. 10.過去の問題が分かったとき、直ちに不利益処分をすべきではない
  14. 11.本人に説明すべきこと
  15. 12.社内で整えておきたいルール
  16. 12-1.取得する情報を決める
  17. 12-2.利用目的を明確にする
  18. 12-3.アクセス権限を限定する
  19. 12-4.評価情報と分けて保管する
  20. 13.行政書士が関与する意味
  21. 14.企業が避けるべき対応
  22. 14-1.「外国人だから」と広く身元調査をする
  23. 14-2.申請情報を直属上司や評価者に広く共有する
  24. 14-3.過去の問題だけで一律に不利益扱いする
  25. 14-4.本人に説明せず情報を集める
  26. 15.実務上の理想的な運用
  27. 15-1.採用前
  28. 15-2.内定後・申請準備時
  29. 15-3.雇用後
  30. 16.企業と外国人社員の信頼関係が最も重要
  31. 17.まとめ
  32. 次に読みたい関連記事
  33. 参考資料・出典

1.企業には在留資格を確認する責任がある

まず前提として、企業が外国人を雇用する場合、在留資格を確認することは必要です。外国人が日本で働けるかどうかは、その人の在留資格と活動内容によって決まります。在留資格によっては、就労に制限がないものもあれば、特定の業務に限って就労が認められるものもあります。また、留学や家族滞在のように、原則として就労できず、資格外活動許可を得た場合に限って一定範囲のアルバイトが可能になる在留資格もあります。

外国人雇用において、企業が最低限確認すべき情報は、次のようなものです。

・氏名、生年月日、国籍・地域
・在留資格
・在留期間
・在留期限
・就労制限の有無
・資格外活動許可の有無
・在留カード番号
・在留カードの有効性
・従事予定業務が在留資格の範囲内か

出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリケーションについて、在留カード等のICチップ内に保存されている身分事項や顔写真等の情報を読み取り、券面記載情報と見比べることで偽変造の有無を確認できるものとして案内しています。
(出典:在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、厚生労働省は、外国人を雇用する事業主に対し、外国人労働者の雇入れ及び離職の際に「外国人雇用状況の届出」を義務付けています。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となることが案内されています。
(出典:「外国人雇用状況の届出」について、厚生労働省ウェブサイトより)

したがって、企業は「個人情報だから何も聞けない」と考えるべきではありません。在留資格、在留期限、就労制限の確認は、外国人雇用における基本的なコンプライアンスです。

2.一方で、必要以上に聞いてよいわけではない

在留資格の確認が必要である一方、企業が外国人社員の個人情報を無制限に収集してよいわけではありません。特に注意が必要なのは、犯罪歴、刑事事件に関する手続、病歴、家族関係、思想・信条など、本人に不利益や差別が生じるおそれのある情報です。

個人情報保護委員会のガイドラインでは、要配慮個人情報として、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などが挙げられています。また、犯罪の経歴については、前科、すなわち有罪判決を受けこれが確定した事実が該当するとされています。
(出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、個人情報保護委員会ウェブサイトより)

さらに、同ガイドラインでは、要配慮個人情報の取得や第三者提供には、原則として本人の同意が必要であり、オプトアウトによる第三者提供は認められていないと説明されています。
(出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、個人情報保護委員会ウェブサイトより)

つまり、企業が在留資格申請のために犯罪歴や入管法上の過去の問題を確認する場合には、「なぜその情報が必要なのか」「誰が見るのか」「どの目的で使うのか」「人事評価に使わないのか」を明確にしておく必要があります。在留資格申請に必要だから確認することと、採用・評価・昇進の判断材料として過去の一身上の情報を広く集めることは、分けて考えなければなりません。

3.企業が把握すべき情報は3段階に分けて考える

外国人雇用に関する情報は、すべて同じ重さではありません。
企業としては、次の3段階に分けて考えると整理しやすくなります。

3-1.必ず確認すべき情報

まず、外国人雇用の適法性を確保するために、必ず確認すべき情報があります。

たとえば、次のような情報です。

・在留カードの有無
・在留資格
・在留期間
・在留期限
・就労制限の有無
・資格外活動許可の有無
・従事予定業務の内容
・雇用契約内容
・勤務地
・労働時間
・外国人雇用状況届出に必要な情報

これらは、外国人がその企業で働けるかどうか、企業が法令上の届出を行えるかどうかに直接関係します。したがって、企業はこれらの情報を確認すべきです。むしろ、これらを確認しないまま外国人を雇用することの方が問題です。

3-2.申請の内容に応じて確認すべき情報

次に、在留資格申請を行う場合に、申請内容に応じて確認すべき情報があります。たとえば、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請では、申請書上、過去の出入国歴、過去の申請歴、犯罪歴、退去強制歴、出国命令歴などを確認する場面があります。これらの情報は、すべての雇用管理で常時必要というわけではありません。しかし、入管申請を正確に行うためには、本人に確認しなければならないことがあります。

この場合、企業は次のように説明して確認すべきです。

「この情報は、在留資格申請書に記載するために必要です」
「人事評価や査定の目的では使用しません」
「申請業務に関わる担当者と専門家以外には共有しません」
「必要な範囲でのみ取得し、保管します」
「不明な場合は、無理に断定せず、資料で確認します」

このように、目的を限定して確認することが重要です。

3-3.原則として踏み込むべきではない情報

最後に、原則として企業が踏み込むべきではない情報があります。たとえば、次のような情報です。

・在留資格申請に関係しない家族の事情
・思想、信条、宗教、支持政党
・本籍、出生地など採用判断に不要な事項
・業務に関係しない病歴
・必要性のない犯罪歴の詳細
・過去の私生活上のトラブル
・本人の適性・能力や在留資格申請に関係しない交友関係

厚生労働省は、公正な採用選考について、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことを基本としており、適性・能力に関係のない事項について応募用紙に記入させたり、面接で質問して把握しないようにすることが重要だと説明しています。
(出典:公正な採用選考の基本、厚生労働省ウェブサイトより)

外国人雇用でも、この考え方は重要です。「外国人だから詳しく調べる」という姿勢ではなく、「その人を適法に雇用するために必要な情報だけを確認する」という姿勢が必要です。

4.在留カード確認は「差別」ではなく、適正雇用のための基本手続き

外国人社員の中には、在留カードの提示を求められることに抵抗を感じる人もいます。しかし、在留カード確認は、外国人を適法に雇用するための基本手続きです。

企業が在留カードを確認する目的は、その人を疑うことではありません。就労可能性、在留期限、資格外活動許可の有無を確認し、本人と会社の双方を不法就労リスクから守ることにあります。

確認すべき点は、次のとおりです。

・在留カードが本人のものか
・氏名、生年月日、国籍・地域
・在留資格
・在留期間
・在留期限
・就労制限の有無
・資格外活動許可欄
・カード番号の失効情報
・必要に応じたICチップ確認

出入国在留管理庁は、在留カード等の社会的信用性を保護するため、偽変造在留カード対策を行っており、在留カード等読取アプリケーションを無料配布しています。
(出典:在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

ただし、在留カードの写しを保管する場合には、保管目的、保管期間、アクセスできる担当者を明確にするべきです。「とりあえずコピーして人事フォルダに入れておく」という運用ではなく、在留期限管理、外国人雇用状況届出、在留資格申請支援など、目的を明確にした管理が必要です。

5.過去の犯罪歴や入管法上の問題をどう聞くべきか

最も難しいのが、過去の犯罪歴や入管法上の問題をどう確認するかです。在留資格申請書には、犯罪歴、退去強制歴、出国命令歴、過去の出入国歴、過去の在留資格認定証明書交付申請歴などを記載する欄があります。このため、企業が申請をサポートする場合、本人に確認せざるを得ない場面があります。

しかし、確認の仕方を誤ると、本人は「会社に知られたら評価が下がる」「昇進できなくなる」「契約を切られる」と感じ、過去の問題を隠そうとする可能性があります。

ここで重要なのは、企業が最初に次のように説明することです。

・入管申請では、本人の過去の申請歴や出入国歴を正確に記載する必要があること
・入管には過去の記録があるため、虚偽や不整合があると申請上不利になること
・会社は、申請書作成に必要な範囲で確認すること
・人事評価や査定の目的で確認しているのではないこと
・回答内容は必要最小限の担当者だけで扱うこと
・不明な場合は、本人を責めるのではなく、資料で確認すること

特に、犯罪歴については要配慮個人情報に該当し得るため、軽く扱うべきではありません。企業が安易に「過去に犯罪歴はありますか」「交通違反も全部出してください」と広く聞き取るのではなく、申請書の該当項目に沿って、必要な範囲で、目的を明示して確認することが大切です。

6.「隠したくなる心理」を前提に制度設計する

外国人社員が過去の問題を隠そうとする背景には、必ずしも悪意だけがあるわけではありません。多くの場合、次のような不安があります。

・正直に話すと採用されないのではないか
・昇進や評価に響くのではないか
・会社に居づらくなるのではないか
・上司や同僚に知られるのではないか
・本国の家族にも知られたくない
・昔の問題を今さら蒸し返されたくない
・日本の制度が分からず、何を答えればよいか分からない
・過去の申請がCOEだったのか、変更申請だったのか分からない

企業側は、「正直に言いなさい」とだけ言っても十分ではありません。正直に言える環境を作る必要があります。

そのためには、次のような運用が有効です。

・在留資格申請に関する情報は、人事評価情報と分けて管理する
・閲覧できる担当者を限定する
・本人に利用目的を説明する
・ヒアリングシートに「申請書作成目的」と明記する
・回答しにくい項目は、行政書士など外部専門家が直接確認する
・会社には必要な結論だけを共有する仕組みにする
・過去の問題がある場合でも、直ちに雇用上の不利益に結びつけない

外国人社員が安心して情報を出せる環境を作ることは、結果的に企業のリスク管理にもつながります。

7.人事評価と在留資格申請情報を混同しない

企業が特に注意すべきなのは、在留資格申請のために取得した情報を、人事評価や雇用判断に流用しないことです。たとえば、在留資格申請のために過去の入管法上のトラブルを聞いた結果、その情報が上司に伝わり、本人の評価や配属に影響するようなことがあれば、本人は次回以降、正確な情報を出さなくなります。

企業としては、次のような線引きが必要です。

・在留資格の適法性に関係する情報
・職務遂行能力に関係する情報
・安全配慮や配置に関係する情報
・人事評価には関係しない私生活上の情報
・入管申請書に必要だが社内評価には使うべきでない情報

もちろん、本人が重大な虚偽申告をした場合や、業務遂行に直接影響する法的制約がある場合には、会社として対応を検討しなければならないこともあります。しかし、「入管申請のために聞いた個人情報」と「人事評価に使う情報」は、原則として分けて管理するべきです。この区別が曖昧になると、社員は会社に本当のことを言わなくなります。

8.採用段階でどこまで聞くべきか

採用段階では、特に慎重な対応が必要です。企業は、外国人候補者がその職務に就ける在留資格を持っているか、又は採用後に在留資格を取得できる見込みがあるかを確認する必要があります。しかし、採用選考の段階で、在留資格申請に関係しない私生活上の事項まで広く聞くべきではありません。

採用段階で確認すべきことは、主に次のような事項です。

・現在の在留資格
・在留期限
・就労制限の有無
・従事予定業務と在留資格の適合性
・転職の場合、現在の在留資格でその職務に就けるか
・必要に応じて就労資格証明書を検討するか
・在留資格変更が必要か
・在留期限までに手続きが間に合うか

一方で、採用判断に不要な犯罪歴、家族関係、思想信条、過去の私生活上の問題を広く聞き出すことは避けるべきです。

厚生労働省は、公正な採用選考のためには、応募者の適性・能力に関係のない事項を応募用紙に記入させたり、面接で質問して把握しないようにすることが重要だとしています。
(出典:公正な採用選考の基本、厚生労働省ウェブサイトより)

採用段階では、「この人を採用してよいか」を判断するための情報と、「採用後に申請書を作るための情報」を分けて考えるべきです。

9.雇用後に企業が管理すべき情報

雇用後は、在留資格の維持管理が重要になります。企業が管理すべき情報としては、次のようなものがあります。

・在留資格
・在留期限
・在留カード番号
・就労制限の有無
・資格外活動許可の有無
・更新申請の予定
・業務内容
・所属部署
・勤務地
・雇用契約内容
・退職日
・外国人雇用状況届出の提出状況

特に、就労系在留資格では、職務内容と在留資格の対応関係が重要です。採用時には問題がなくても、その後の部署異動、配置転換、職務変更、勤務地変更により、在留資格上の問題が生じることがあります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」で採用した外国人社員を、専門性のない単純作業中心の部署へ異動させる場合には、在留資格該当性の問題が生じる可能性があります。

企業は、在留期限だけでなく、職務内容の変更も管理する必要があります。

10.過去の問題が分かったとき、直ちに不利益処分をすべきではない

在留資格申請の準備中に、本人の過去の問題が分かることがあります。

たとえば、次のような事情です。

・過去にCOE不交付歴があった
・過去に在留資格変更不許可があった
・短期滞在で多数回来日していた
・過去にオーバーステイに近い状況があった
・退去強制又は出国命令歴があった
・交通違反や罰金歴があった
・申請書に記載すべき犯罪歴があった

このような事情が分かった場合、企業はすぐに「問題社員」と決めつけるべきではありません。

まず確認すべきなのは、次の点です。

・その事実が現在の在留資格申請にどのように影響するのか
・本人が故意に隠していたのか、制度を理解していなかったのか
・申請書にどう記載すべきか
・追加説明や理由書で補足できるか
・現在の職務遂行に影響する事情なのか
・雇用契約上、会社として対応すべき事情なのか
・労務・法務上、弁護士や社労士に相談すべきか

入管申請上の問題と、雇用上の問題は同じではありません。たとえば、過去のCOE不交付歴があることは、今回の申請で説明が必要な事情かもしれませんが、それだけで現在の業務能力を否定するものではありません。

企業は、入管法上のリスクと人事上の評価を混同しないことが重要です。

11.本人に説明すべきこと

外国人社員に在留資格関連の情報を確認する場合、企業は次の点を説明しておくとよいでしょう。

・会社は外国人雇用を適法に行うために在留資格情報を確認すること
・在留資格、在留期限、就労制限は雇用管理上必要な情報であること
・申請書に必要な情報は、正確に記載しなければならないこと
・過去の申請歴や出入国歴は、入管記録と照合される可能性があること
・不明な場合は、分からないまま断定せず、資料で確認すること
・取得した情報は、在留資格管理・申請目的で使用すること
・人事評価や査定とは区別して扱うこと
・閲覧できる担当者を限定すること

この説明を行うことで、本人は「会社が自分を疑っている」のではなく、「適法に働き続けるために必要な確認をしている」と理解しやすくなります。

12.社内で整えておきたいルール

外国人を継続的に雇用する企業では、個別対応ではなく、社内ルールを整えておくことが重要です。

たとえば、次のようなルールです。

12-1.取得する情報を決める

まず、どの情報を取得するのかを決めます。

・在留カード情報
・在留資格
・在留期限
・就労制限
・資格外活動許可
・申請に必要な範囲の過去情報
・外国人雇用状況届出に必要な情報

必要な情報を明確にし、それ以上の情報をむやみに取得しないようにします。

12-2.利用目的を明確にする

次に、利用目的を明確にします。

たとえば、次のような目的です。

・在留資格の確認
・就労可能性の確認
・在留期限管理
・外国人雇用状況届出
・在留資格申請書類の作成
・入管からの追加資料対応
・法令遵守のための社内管理

個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人情報を取り扱うに当たり、利用目的をできる限り具体的に特定しなければならないと説明されています。
(出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、個人情報保護委員会ウェブサイトより)

「人事管理のため」といった抽象的な目的ではなく、在留資格管理や申請支援のためであることを明確にすることが望ましいです。

12-3.アクセス権限を限定する

在留資格情報、特に過去の申請歴や犯罪歴などを含む情報は、誰でも見られる状態にすべきではありません。アクセスできる担当者を限定します。

たとえば、次のような管理が考えられます。

・人事部の特定担当者のみ閲覧可
・直属上司には必要最小限の情報だけ共有
・評価担当者には詳細情報を共有しない
・申請を依頼する行政書士には本人同意のうえ共有
・ファイルには閲覧制限を設定
・紙資料は施錠保管
・退職後の保管期間を定める

在留資格情報は、本人の生活と雇用に直結する情報です。社内で安易に共有しないことが重要です。

12-4.評価情報と分けて保管する

在留資格申請関連情報は、人事評価ファイルとは分けて保管することが望ましいです。評価情報と同じ場所に、過去の犯罪歴、退去強制歴、申請不許可歴などが入っていると、評価に影響しているのではないかという疑念を生みます。また、本人が次回以降、正確な情報を出しにくくなります。

在留資格管理の目的で取得した情報は、その目的に沿って管理し、評価・昇進・配置の資料とは切り離すべきです。

13.行政書士が関与する意味

在留資格申請では、企業と外国人社員の間に行政書士が入ることで、情報管理が整理しやすくなる場合があります。行政書士が関与するメリットは、次のような点です。

・申請に必要な情報と不要な情報を整理できる
・本人が会社に直接言いにくい事情を専門家に相談できる
・会社には必要な範囲のリスク情報だけを整理して伝えられる
・申請書上の記載方法を検討できる
・虚偽申請を避ける説明ができる
・入管から追加資料を求められた場合に対応しやすい
・企業側の個人情報取得範囲を整理できる

特に、犯罪歴、退去強制歴、出国命令歴、不交付・不許可歴などがある場合、本人が会社に直接話すことをためらうことがあります。このような場合、行政書士が本人から事情を聞き、入管申請上どのように整理すべきかを検討することで、本人と企業の双方にとって負担を軽減できる場合があります。

ただし、行政書士は労務上の懲戒、解雇、損害賠償、個人情報漏えい対応などを判断する立場ではありません。雇用契約上の対応や労務トラブルが生じる場合には、弁護士や社会保険労務士との連携が必要になります。

14.企業が避けるべき対応

外国人雇用の現場では、次のような対応は避けるべきです。

14-1.「外国人だから」と広く身元調査をする

外国人であることを理由に、必要以上の身元調査、家族調査、過去の私生活調査を行うことは適切ではありません。在留資格の確認に必要な範囲を超えて、本人の適性・能力に関係のない情報を収集することは、公正な採用選考の観点からも問題になり得ます。

14-2.申請情報を直属上司や評価者に広く共有する

在留資格申請のために取得した情報を、直属上司や評価者へ広く共有することは避けるべきです。

上司が知る必要があるのは、通常、次のような実務上必要な情報です。

・在留期限
・就労可能な範囲
・従事できる業務内容
・更新申請中かどうか
・配置転換に注意が必要か

過去の犯罪歴や入管トラブルの詳細まで、上司が常に知る必要があるとは限りません。

14-3.過去の問題だけで一律に不利益扱いする

過去に不許可歴や入管法上の問題があったとしても、その内容、時期、現在の状況、今回の職務との関係を見ずに、一律に不利益扱いすることは慎重であるべきです。もちろん、現在の就労資格に直接影響する場合や、虚偽申告が重大な問題となる場合は、会社として対応が必要です。しかし、入管申請上の説明事項と、雇用上の不利益処分は別の判断です。

14-4.本人に説明せず情報を集める

在留資格申請のために必要な情報であっても、本人に目的を説明せずに取得することは避けるべきです。特に、要配慮個人情報に当たり得る情報については、本人が何のために聞かれているのか理解できるようにする必要があります。

15.実務上の理想的な運用

外国人雇用における在留資格情報の管理は、次のように運用するのが現実的です。

15-1.採用前

採用前には、在留資格と職務内容の適合性を確認します。確認するのは、主に次の情報です。

・現在の在留資格
・在留期限
・就労制限
・資格外活動許可
・希望職務
・学歴、職歴、専門性
・在留資格変更の要否

この段階では、在留資格取得見込みに関係する範囲で確認し、不要な私生活情報には踏み込みません。

15-2.内定後・申請準備時

内定後、在留資格申請が必要になった段階で、申請書に必要な情報を本人から確認します。このとき、ヒアリングシートには、次のような説明を入れるとよいでしょう。

「本シートは、在留資格申請書類の作成及び法令上必要な確認のために使用します。人事評価、査定、昇進判断を目的として使用するものではありません。回答内容は、申請業務に関与する担当者及び外部専門家に限って取り扱います。」

この一文があるだけでも、本人の心理的負担は大きく変わります。

15-3.雇用後

雇用後は、在留期限管理と職務内容管理を行います。

・在留期限の管理表を作る
・更新申請の時期を事前に通知する
・職務内容が変わる場合は在留資格との関係を確認する
・部署異動前に人事と入管担当が確認する
・退職時には外国人雇用状況届出を行う
・在留カード情報を定期的に確認する

外国人雇用では、採用時だけでなく、雇用継続中の管理が重要です。

16.企業と外国人社員の信頼関係が最も重要

在留資格の問題は、企業にとってはコンプライアンスの問題です。しかし、外国人社員にとっては、自分の生活、家族、将来、日本でのキャリアに直結する問題です。企業が高圧的に情報を求めると、本人は防御的になります。一方で、企業が何も確認しなければ、不法就労や虚偽申請のリスクが高まります。必要なのは、過度な詮索ではなく、説明された確認です。

企業は、次の姿勢を持つべきです。

・在留資格確認は本人を疑うためではなく、本人を守るためでもある
・法令上必要な情報だけを確認する
・取得した情報は目的外に使わない
・評価や査定とは切り離す
・不明点があれば責めずに確認する
・過去の問題があっても、まず申請上の影響を整理する
・本人が正直に話せる環境を作る

外国人雇用の管理は、単なる書類管理ではありません。企業と外国人社員の信頼関係を保ちながら、適法に働き続けられる環境を作ることが重要です。

17.まとめ

外国人を雇用する企業は、在留資格に関する情報を適切に把握し、管理する必要があります。在留資格、在留期限、就労制限、資格外活動許可の有無、外国人雇用状況届出に必要な情報は、企業が確認すべき基本情報です。

一方で、過去の犯罪歴、入管法上のトラブル、退去強制歴、出国命令歴などは、本人にとって非常にセンシティブな情報です。これらの情報は、在留資格申請に必要な範囲で、目的を明示し、本人の理解を得たうえで、最小限の担当者だけが取り扱うべきです。

企業が意識すべきポイントは、次のとおりです。

・在留資格確認は企業の法的リスク管理として必要
・外国人雇用状況届出は事業主の義務
・在留カード確認は本人と会社を守る手続き
・犯罪歴などは要配慮個人情報に当たり得る
・採用選考では適性・能力に関係のない情報収集を避ける
・申請情報と人事評価情報を分けて管理する
・本人が正直に話せる環境を作る
・行政書士、弁護士、社会保険労務士など専門家と役割分担する

外国人雇用では、企業が「どこまで聞くか」だけでなく、「なぜ聞くのか」「どう管理するのか」「誰が見るのか」「何に使わないのか」を明確にすることが重要です。適法な雇用管理と外国人社員のプライバシー保護は、対立するものではありません。むしろ、必要な情報を必要な範囲で正確に確認し、慎重に管理することが、企業と外国人社員双方を守ることにつながります。

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参考資料・出典

在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留カード等仕様書の公開について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
「外国人雇用状況の届出」について 厚生労働省ウェブサイトより
公正な採用選考の基本 厚生労働省ウェブサイトより
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) 個人情報保護委員会ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より
出入国在留管理庁ホームページ 出入国在留管理庁ウェブサイトより