在留資格「日本人の配偶者等」の申請では、夫婦としての実体だけでなく、日本で生活していける収入や生活基盤も確認されます。
相談でも、次のような質問を受けることがあります。
「収入が少ないと配偶者ビザは不許可になりますか」
「正社員ではなくアルバイトですが、外国人配偶者を呼べますか」
「転職したばかりで住民税の証明書がありません」
「無職ですが、預金や親の援助があれば申請できますか」
「収入が低い場合、どのような資料を追加すればよいですか」
結論からいえば、収入が少ないことだけで、直ちに在留資格「日本人の配偶者等」が不許可になるわけではありません。
しかし、日本で夫婦として安定して生活できるかどうかは、重要な審査ポイントです。
そのため、収入が少ない場合には、現在の収入だけでなく、預貯金、住居、親族からの援助、就職予定、生活費の見通しなどを含めて、丁寧に説明する必要があります。
この記事では、収入が少ない場合の配偶者ビザ申請で確認すべきこと、準備したい資料、注意点を解説します。
なお、一般には「配偶者ビザ」と呼ばれることがありますが、この記事では、正確な制度上の用語として、主に在留資格「日本人の配偶者等」と表記します。
1.在留資格「日本人の配偶者等」と生活の安定性
在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者、日本人の特別養子、日本人の子として出生した人を対象とする在留資格です。
出入国在留管理庁の在留資格一覧表では、「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者を対象とし、在留期間は5年、3年、1年又は6月とされています。
(出典:在留資格一覧表、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
この在留資格で最も重要なのは、法律上有効な婚姻と、夫婦としての実体です。
ただし、それだけではなく、日本での生活費をどうまかなうかも確認されます。
在留資格「日本人の配偶者等」の提出書類では、日本での滞在費用を証明する資料として、申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税課税証明書及び納税証明書などが案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
つまり、入管は、夫婦が日本で生活していけるだけの経済的基盤があるかを確認します。
2.収入が少ないと必ず不許可になるのか
収入が少ないことだけで、必ず不許可になるわけではありません。
入管審査では、個別の事情を総合的に見ます。
たとえば、次のような事情があれば、収入が少なくても補足説明の余地があります。
・預貯金がある
・実家に住むため家賃負担が少ない
・親族から生活援助を受けられる
・外国人配偶者が来日後に就職予定である
・日本人配偶者が転職直後で、今後収入が安定する見込みがある
・一時的に収入が減っているだけである
・生活費が低く抑えられている
・扶養家族が少ない
・家族所有の住宅に住む予定である
一方で、次のような場合は注意が必要です。
・無職で預貯金も少ない
・住居が決まっていない
・親族援助の具体性がない
・税金の未納がある
・収入資料を提出できない
・生活費の見通しを説明できない
・過去にも生活困窮や滞納がある
・扶養家族が多く、収入とのバランスが悪い
収入の金額だけで機械的に判断されるわけではありませんが、生活の見通しを説明できない場合は不利になります。
3.住民税課税証明書・納税証明書が重要
配偶者申請では、収入を示す基本資料として、住民税課税証明書と納税証明書が重要です。
出入国在留管理庁の提出書類では、申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税の課税又は非課税証明書及び納税証明書について、1年間の総所得及び納税状況が記載されたものを提出するよう案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
ここで確認されるのは、単に収入額だけではありません。
税金を適切に納めているかも確認されます。
注意すべき点は、次のとおりです。
・課税証明書に所得額が記載されているか
・納税証明書に未納がないか
・非課税の場合、その理由を説明できるか
・転職や退職により前年所得と現在収入が違う場合、補足資料を出すか
・証明書の発行日が古すぎないか
収入が少ない場合でも、納税状況に問題がないことは重要です。
未納がある場合は、申請前に納付状況を確認し、必要に応じて整理しておく必要があります。
4.転職直後・就職直後の場合
転職直後や就職直後の場合、住民税課税証明書に現在の収入が反映されていないことがあります。
たとえば、前年は無職だったが、現在は正社員として働いている場合です。
このような場合、住民税課税証明書だけを見ると収入がないように見えるため、現在の収入を示す資料を補足する必要があります。
準備する資料としては、次のようなものがあります。
・在職証明書
・雇用契約書
・労働条件通知書
・給与明細
・採用通知書
・源泉徴収票
・会社からの給与見込証明書
・内定通知書
出入国在留管理庁の提出書類でも、入国後間もない場合や転居等により通常の資料で滞在費用を証明できない場合には、預貯金通帳の写し、雇用予定証明書又は採用内定通知書などの提出が案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
転職直後の場合は、「前年所得」だけでなく、「現在の収入」と「今後の収入見込み」を説明することが重要です。
5.無職の場合
日本人配偶者が無職の場合でも、直ちに申請できないわけではありません。
ただし、生活費をどのようにまかなうかを具体的に説明する必要があります。
確認すべき点は、次のとおりです。
・預貯金はいくらあるか
・失業給付を受けているか
・就職活動中か
・内定や採用予定があるか
・親族から援助を受けられるか
・住居費はかかるか
・生活費の見通しはあるか
・外国人配偶者の収入や就労予定はあるか
無職であっても、十分な預貯金がある、家賃負担がない、親族から継続的な援助がある、近く就職予定があるといった事情があれば、補足説明の余地があります。
一方で、収入も預貯金もなく、援助者もおらず、住居も決まっていない場合は、生活基盤の説明が難しくなります。
6.親族から援助を受ける場合
収入が少ない場合、親や親族から援助を受けるケースがあります。
この場合、単に「親が助けてくれます」と書くだけでは不十分です。
援助の実態と継続性を示す資料が重要です。
たとえば、次のような資料が考えられます。
・援助者の身元保証書又は援助に関する説明書
・援助者の住民税課税証明書、納税証明書
・援助者の在職証明書
・援助者の預貯金通帳の写し
・同居予定の場合は住民票や住宅資料
・毎月いくら援助するのかを説明する文書
親族援助は、生活基盤を補足する資料として有効な場合があります。
ただし、援助者自身の収入や生活状況が不明確な場合、十分な説明にならないことがあります。
7.預貯金で補足する場合
収入が少ない場合でも、一定の預貯金がある場合には、生活費の補足資料になります。
出入国在留管理庁の提出書類では、通常の滞在費用資料で証明できない場合の資料として、預貯金通帳の写しも案内されています。Web通帳の画面の写し等についても、取引履歴が分かり、加工等できない状態で印刷されたものであれば差し支えないとされています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
預貯金を提出する場合は、次の点に注意します。
・残高だけでなく取引履歴も分かるようにする
・急に大きな入金がある場合は理由を説明する
・借入金を一時的に入金しただけに見えないようにする
・生活費としてどれくらい使えるのかを説明する
・夫婦の生活費との関係を整理する
預貯金は有効な補足資料になり得ますが、収入の代わりとして常に十分というわけではありません。
長期的な生活の見通しとあわせて説明することが大切です。
8.外国人配偶者が来日後に働く予定の場合
在留資格「日本人の配偶者等」は、就労制限のない身分系在留資格です。
そのため、許可後は、外国人配偶者が日本で働くことも可能です。
ただし、申請時点では、まだ来日していない、又は就職先が決まっていないことも多くあります。
外国人配偶者の就労予定を生活基盤の一部として説明する場合は、次の資料が考えられます。
・採用予定証明書
・内定通知書
・雇用予定先の資料
・本人の職歴、資格、技能を示す資料
・日本語能力を示す資料
・就職活動状況を示す資料
ただし、「来日したら働くつもりです」というだけでは、生活費の確実な裏付けとしては弱い場合があります。
日本人配偶者や親族援助、預貯金などとあわせて、生活全体の見通しを説明することが重要です。
9.住居費が少ない場合は説明する
収入が少なくても、住居費がかからない場合には、生活費の見通しが変わります。
たとえば、次のようなケースです。
・実家で同居する
・親族所有の住宅に住む
・会社の社宅に住む
・住宅ローンが完済済みの自宅に住む
・家賃負担が低い公営住宅に住む
このような場合には、住居費が少ないことを説明するとよいでしょう。
準備する資料としては、次のようなものがあります。
・住民票
・賃貸借契約書
・不動産登記事項証明書
・社宅使用許可書
・同居する親族の住民票
・親族からの同居承諾書
・家賃額が分かる資料
収入額だけを見ると少なくても、住居費がほとんどかからない場合には、生活の安定性を説明しやすくなります。
10.税金の未納がある場合
収入が少ない場合以上に注意すべきなのが、税金の未納です。
配偶者申請では、住民税課税証明書だけでなく、納税証明書も提出資料として案内されています。
納税証明書では、税金を納めているかどうかが確認されます。
未納がある場合、生活の安定性だけでなく、公的義務を適切に履行しているかという点で問題になります。
未納がある場合は、申請前に納付状況を確認し、納付できるものは整理しておくことが重要です。
やむを得ず分納中である場合には、分納計画や納付状況を説明する資料を用意することがあります。
11.収入が少ない場合に作成したい理由書
収入が少ない場合には、理由書で生活状況を説明することが有効です。
理由書では、次の点を整理します。
・現在の収入額
・収入が少ない理由
・一時的な事情か、継続的な事情か
・今後の収入見込み
・預貯金の有無
・親族援助の有無
・住居費の負担
・夫婦の生活費見込み
・外国人配偶者の就労予定
・税金や社会保険の状況
大切なのは、単に「収入は少ないですが生活できます」と書くことではありません。
具体的な数字と資料に基づき、夫婦が日本で生活していける見通しを示すことです。
12.更新申請で収入が下がった場合
在留期間更新の際に、前回申請時より収入が下がっていることもあります。
たとえば、次のようなケースです。
・転職した
・退職した
・産休、育休に入った
・病気で休職した
・勤務時間が減った
・自営業の売上が下がった
・扶養家族が増えた
在留期間更新許可申請は、現在の身分関係に基づいて引き続き在留するための申請です。
(出典:在留期間更新許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
更新時に収入が下がった場合は、収入減少の理由、今後の見通し、生活費の補足資料を説明することが重要です。
一時的な収入減少であれば、その事情を資料で示します。
13.まとめ
収入が少ない場合でも、在留資格「日本人の配偶者等」の申請が直ちにできなくなるわけではありません。
しかし、日本で夫婦として安定して生活できるかどうかは、重要な確認ポイントです。
特に、次の点を整理する必要があります。
・住民税課税証明書、納税証明書を準備できるか
・現在の収入額を説明できるか
・収入が少ない理由を説明できるか
・預貯金があるか
・親族からの援助があるか
・住居費を抑えられる事情があるか
・外国人配偶者の就労予定があるか
・税金の未納がないか
・夫婦の生活費の見通しを具体的に説明できるか
収入が少ない場合に大切なのは、資料を出さないことではなく、資料を補うことです。
課税証明書や納税証明書だけで生活基盤を十分に説明できない場合には、預貯金、雇用予定、親族援助、住居資料、理由書などを組み合わせて、夫婦が日本で生活していけることを説明します。
配偶者ビザの申請では、婚姻の実体と生活の安定性の両方が重要です。
収入面に不安がある場合には、早めに資料を整理し、どのような補足説明が必要かを検討することが大切です。
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参考資料・出典
・在留資格一覧表 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格「日本人の配偶者等」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格認定証明書交付申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留期間更新許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より
