Ⅱ-12.夫婦が別居している場合の配偶者ビザ申請・更新の注意点

在留資格「日本人の配偶者等」の申請や更新では、夫婦が同居しているかどうかが重要な確認ポイントになることがあります。

相談でも、次のような質問を受けることがあります。

「結婚していますが、仕事の都合で別居しています。配偶者ビザの申請はできますか」

「単身赴任で同居していない場合、更新で不利になりますか」

「夫婦仲が悪く、現在別居しています。更新はできますか」

「住民票上は同じ住所ですが、実際には別々に暮らしています。問題になりますか」

結論からいえば、夫婦が別居していることだけで、直ちに在留資格「日本人の配偶者等」が不許可になるわけではありません。

単身赴任、転勤、介護、子どもの学校、住宅事情、病気、出産準備など、合理的な理由で一時的に別居している夫婦もあります。

しかし、在留資格「日本人の配偶者等」は、法律上の婚姻だけでなく、夫婦としての実体があることが重要です。

そのため、別居している場合には、なぜ別居しているのか、夫婦関係が継続しているのか、今後同居する予定があるのかを、通常より丁寧に説明する必要があります。

この記事では、夫婦が別居している場合の配偶者ビザ申請・更新の注意点を解説します。

なお、一般には「配偶者ビザ」と呼ばれることがありますが、この記事では、正確な制度上の用語として、主に在留資格「日本人の配偶者等」と表記します。

1.在留資格「日本人の配偶者等」と夫婦の実体

在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者、日本人の特別養子、日本人の子として出生した人を対象とする在留資格です。

出入国在留管理庁の在留資格一覧表では、「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者を対象とし、在留期間は5年、3年、1年又は6月とされています。
(出典:在留資格一覧表、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

在留資格「日本人の配偶者等」を申請するには、法律上有効な婚姻が成立していることが前提です。

しかし、入管審査では、婚姻届が出されているかどうかだけでなく、夫婦としての生活実態が確認されます。

そのため、同居しているかどうかは、婚姻実体を判断する一つの事情になります。

ただし、同居していないからといって、必ず婚姻実体がないと判断されるわけではありません。

重要なのは、別居の理由と夫婦関係の実態です。

2.別居していても合理的な理由がある場合

夫婦が別居していても、合理的な理由がある場合には、その事情を説明することで申請・更新を検討できます。

たとえば、次のようなケースです。

・日本人配偶者が単身赴任している
・外国人配偶者が仕事や学校の都合で一時的に別居している
・親の介護のため、一方が実家に住んでいる
・子どもの学校や出産準備のため、一時的に別居している
・住居を探している途中である
・勤務先の社宅や寮の事情で同居開始が遅れている
・病気療養のため一時的に別居している
・海外赴任や出張の都合で一定期間離れている

このような場合には、別居の理由、期間、今後の同居予定を具体的に説明します。

たとえば、単身赴任であれば、辞令、勤務先資料、赴任期間、帰省頻度、連絡状況などを示すことが考えられます。

介護であれば、親族関係、介護の必要性、実家に滞在している理由、今後の見通しを説明します。

3.別居の理由を説明できない場合は注意が必要

一方で、別居の理由があいまいな場合は注意が必要です。

たとえば、次のようなケースです。

・結婚しているのに一度も同居していない
・同居予定がない
・住民票上だけ同居しているが、実際には別居している
・夫婦間の連絡がほとんどない
・生活費のやり取りがない
・互いの生活状況を知らない
・別居理由を説明できない
・離婚協議中である
・事実上婚姻関係が破綻している

このような場合、入管から、夫婦としての実体があるのか確認される可能性があります。

特に、初回申請で一度も同居していない場合や、更新時に長期間別居している場合は、丁寧な説明が必要です。

4.住民票と実際の生活実態は一致しているか

配偶者申請では、住民票が提出資料に含まれます。

出入国在留管理庁の「日本人の配偶者等」の提出書類では、日本人配偶者の世帯全員の記載のある住民票の写しの提出が案内されています。住民票は、個人番号を省略し、他の事項については省略のないものとするよう案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

ここで注意すべきなのは、住民票上の住所と実際の生活実態が一致しているかです。

住民票では同じ住所になっていても、実際には別々に暮らしている場合があります。

逆に、住民票上は別住所でも、実際には行き来しながら夫婦生活を続けている場合もあります。

入管審査では、形式的な住民票だけでなく、実際の生活状況が問題になります。

そのため、住民票と実態が異なる場合は、なぜそのようになっているのかを説明できるようにしておく必要があります。

5.更新申請では「現在も夫婦関係が続いているか」が重要

在留期間更新では、初回申請時と異なり、これまでの在留状況が確認されます。

出入国在留管理庁の「日本人の配偶者等」のページでは、在留期間更新許可申請について、「当該身分関係に基づいて引き続き滞在する場合の申請」と説明されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

つまり、更新では、現在も日本人の配偶者としての身分関係に基づく在留が続いているかが確認されます。

別居している場合には、次の点を整理します。

・いつから別居しているのか
・別居の理由
・別居期間
・連絡頻度
・面会頻度
・生活費の負担
・今後同居する予定
・夫婦関係が継続していることを示す資料

単身赴任や介護など合理的理由がある場合は、その資料を提出します。

一方、夫婦関係が冷え込み、連絡も取っておらず、離婚協議中である場合は、更新の可否を慎重に検討する必要があります。

6.別居中に準備したい資料

別居している場合には、夫婦関係が継続していることを示す資料が重要です。

たとえば、次のような資料が考えられます。

・別居理由を説明する理由書
・勤務先の辞令、単身赴任資料
・介護が必要な親族に関する資料
・病気や療養に関する診断書
・住居探しの状況を示す資料
・将来の同居予定を示す資料
・夫婦間のメッセージ履歴
・通話履歴
・面会時の写真
・交通費、航空券、宿泊記録
・生活費の送金記録
・共同で管理している家計資料
・親族や友人との交流資料

出入国在留管理庁の提出書類では、夫婦間の交流が確認できる資料として、スナップ写真、SNS記録、通話記録などが案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

別居している場合には、これらの資料を通常以上に意識して準備することが大切です。

7.夫婦関係が悪化している場合

別居の理由が、夫婦関係の悪化である場合もあります。

この場合は、状況を正確に整理する必要があります。

たとえば、次のような状態です。

・一時的な夫婦喧嘩で別居している
・冷却期間として別居している
・離婚協議中である
・調停中である
・DVやモラハラから避難している
・事実上婚姻関係が破綻している

単に別居しているだけでは判断できません。

夫婦関係が修復可能なのか、既に破綻しているのか、別居の理由に正当性があるのかが重要になります。

特にDVや家庭内トラブルがある場合、単純に「同居していないから不利」と考えるべきではありません。

安全確保のために別居している場合には、その事情を説明し、必要に応じて公的相談機関、警察、弁護士、支援団体などの資料を整理することがあります。

8.離婚・死別の場合は届出義務がある

別居とは異なり、離婚や死別により配偶者との身分関係が終了した場合には、届出義務が問題になります。

中長期在留者のうち、配偶者としての身分に基づく在留資格を持つ人は、配偶者と離婚又は死別した場合、その事由が生じた日から14日以内に、出入国在留管理庁長官に届け出る必要があります。
(出典:配偶者に関する届出、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

別居だけで直ちにこの届出が必要になるわけではありません。

しかし、離婚が成立した場合や、配偶者が亡くなった場合には、届出義務が発生します。

また、離婚後もそのまま「日本人の配偶者等」で在留し続けることはできません。

状況に応じて、定住者など他の在留資格への変更を検討する必要があります。

9.6か月以上、配偶者としての活動をしていない場合

日本人、永住者又は特別永住者の配偶者として在留資格を持つ外国人については、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合、正当な理由がある場合を除き、在留資格取消しの対象となることがあります。

出入国在留管理庁は、在留資格の取消しに関する案内の中で、在留資格取消しを行わない具体例として、配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等を公表しています。
(出典:在留資格の取消し、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

したがって、長期間別居している場合には、なぜ配偶者としての活動を行っていないのか、又は別居していても夫婦関係が継続しているのかを説明できるようにしておく必要があります。

正当な理由がある別居と、婚姻実体を失った別居は区別して考える必要があります。

10.国内変更申請の場合の注意点

日本国内で、他の在留資格から「日本人の配偶者等」へ変更する場合にも、別居は問題になります。

在留資格変更許可申請は、既にほかの在留資格で日本に滞在している人が、この在留資格に変更を希望する場合の申請です。
(出典:在留資格変更許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

たとえば、留学、技術・人文知識・国際業務、家族滞在などから「日本人の配偶者等」へ変更する場合、婚姻後の同居予定があるか、夫婦としての生活実体があるかが確認されます。

結婚したばかりでまだ同居していない場合には、次の点を説明します。

・いつ婚姻届を提出したか
・なぜまだ同居していないのか
・いつから同居予定か
・住居は決まっているか
・別居中も連絡や交流があるか
・結婚後の生活費をどう負担するか

同居開始前に申請する場合には、住居探しの状況や同居予定を明確にすることが重要です。

11.別居している場合の理由書の書き方

別居している場合、理由書では次の点を整理するとよいでしょう。

・別居開始日
・別居の理由
・別居先住所
・別居期間の見込み
・別居中の連絡頻度
・面会頻度
・生活費の負担
・夫婦関係が継続していること
・今後の同居予定
・同居再開が難しい場合の事情

理由書では、「別居していますが問題ありません」と書くだけでは不十分です。

入管が知りたいのは、別居していても夫婦としての実体があるのか、別居に合理的な理由があるのか、今後の生活がどうなるのかです。

12.まとめ

夫婦が別居している場合でも、在留資格「日本人の配偶者等」の申請や更新が直ちにできなくなるわけではありません。

単身赴任、転勤、介護、病気、出産準備、住居事情など、合理的な理由で別居している夫婦もあります。

しかし、在留資格「日本人の配偶者等」は、法律上の婚姻だけでなく、夫婦としての実体が重要です。

そのため、別居している場合には、次の点を整理する必要があります。

・なぜ別居しているのか
・別居は一時的なものか
・夫婦関係は継続しているか
・連絡や面会はあるか
・生活費のやり取りはあるか
・今後同居する予定はあるか
・住民票と実際の生活実態にずれがないか
・離婚や死別の場合の届出義務を理解しているか

別居の理由が合理的であり、夫婦としての実体が継続していることを説明できれば、申請・更新を検討できます。

一方で、夫婦関係が破綻している場合や、長期間連絡がない場合には、在留資格の維持や更新が難しくなる可能性があります。

別居中の配偶者申請・更新では、形式的な婚姻関係だけでなく、実際の夫婦関係を資料と説明で示すことが大切です。

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参考資料・出典

在留資格一覧表 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留期間更新許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
配偶者に関する届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格の取消し 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より