技能実習を修了した外国人が、日本で引き続き働くために、在留資格「特定技能1号」へ移行するケースが多くあります。
技能実習2号を良好に修了した外国人は、一定の場合、特定技能1号の技能試験や日本語試験が免除されます。そのため、技能実習から特定技能への移行は、制度上も重要なルートです。
一方で、実務上は注意点も多くあります。
企業からは、次のような相談を受けることがあります。
- 技能実習2号を終えれば、必ず特定技能へ移行できますか
- 技能実習と同じ会社で働く場合、手続きは簡単ですか
- 技能実習の職種と特定技能の分野が違う場合はどうなりますか
- 在留資格変更許可申請中も働き続けることができますか
- 技能実習が終わってから特定技能の許可まで空白が出そうです
- 「特定活動」で準備期間をつなぐことはできますか
- 外食業へ移行する場合、受入れ停止措置の影響はありますか
技能実習から特定技能へ移行する場合、特に重要なのは、在留期限、技能実習の終了日、申請日及び就労開始日の管理です。
申請を行っていても、技能実習としての活動がすでに終了している場合は、特定技能への変更が許可されるまで働けないことがあります。
この記事では、技能実習から特定技能1号へ移行する基本的な流れ、試験免除、良好修了、業務区分、申請時期、申請中の就労、特定活動による移行準備及び企業が準備すべきことを解説します。
1.技能実習から特定技能へ移行する基本的な流れ
技能実習から特定技能1号へ移行する基本的な流れは、次のとおりです。
- 技能実習2号を良好に修了したことを確認する
- 特定技能の対象分野・業務区分を確認する
- 技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分との関連性を確認する
- 技能試験・日本語試験が免除されるか確認する
- 受入れ企業と特定技能雇用契約を締結する
- 1号特定技能外国人支援計画を作成する
- 分野別協議会への加入など、分野ごとの手続きを確認する
- 在留資格変更許可申請を行う
- 変更許可後に特定技能外国人として就労を開始する
技能実習を修了しているからといって、どの分野でも自由に特定技能へ移行できるわけではありません。
外国人本人が行っていた技能実習の職種・作業と、特定技能で従事する業務との関係を確認する必要があります。また、受入れ企業、雇用契約、支援体制及び分野別基準についても、特定技能の要件を満たさなければなりません。
特定技能制度の全体像については、次の記事もご確認ください。
2.技能実習2号の良好修了による試験免除
特定技能1号では、原則として、分野別の技能試験と日本語試験に合格する必要があります。
ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人については、一定の場合に試験が免除されます。技能実習3号を修了した人についても、その前提となる技能実習2号の良好修了を確認します。
出入国在留管理庁のQ&Aでは、特定技能1号で求められる日本語能力水準が国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上である分野・業務区分について、技能実習2号を良好に修了している場合には、原則として技能実習の職種・作業にかかわらず、基本となる日本語試験が免除されるとされています。
さらに、特定技能で従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業との間に関連性が認められる場合は、技能試験も免除されます。
整理すると、一般的な取扱いは次のようになります。
| 技能実習2号良好修了者の移行先 | 日本語試験 | 技能試験 |
|---|---|---|
| 実習職種・作業と関連性がある業務区分 | 原則免除 | 原則免除 |
| 実習職種・作業と関連性がない業務区分 | 原則免除 | 合格が必要 |
| 介護など分野固有の日本語要件がある場合 | 分野別要件の確認が必要 | 関連性及び分野別運用要領により判断 |
試験免除になるかどうかは、技能実習の職種名だけでなく、具体的な作業と特定技能の業務区分を照合して判断します。
詳しくは、特定技能制度に関するQ&A及び各分野の運用要領をご確認ください。
3.「技能実習2号を良好に修了」の確認
試験免除を受けるためには、技能実習2号を良好に修了したことを資料によって確認する必要があります。
一般には、次のような資料が問題になります。
- 技能検定3級の実技試験合格証明書
- 技能実習評価試験の専門級の実技試験合格証明書
- 技能実習生に関する評価調書
- 技能実習の実施状況や修了状況を確認できる資料
技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験に合格していない場合でも、評価調書などによって良好修了を説明できる場合があります。
ただし、必要書類は申請内容や申請時点の提出書類一覧によって異なります。実習実施者や監理団体から評価調書などを取得する必要がある場合は、申請直前になって初めて依頼するのではなく、早めに準備を進めることが重要です。
特定技能申請で必要となる書類の全体像については、次の記事で解説しています。
4.技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分
技能試験免除の可否を判断するうえで、技能実習の職種・作業と、特定技能の業務区分との関係が重要です。
例えば、技能実習で食品製造関係の作業をしていたからといって、外食業分野の技能試験が必ず免除されるとは限りません。
確認すべき事項は、次のとおりです。
- 技能実習の職種
- 技能実習の具体的な作業
- 技能実習2号の修了状況
- 特定技能で従事する分野
- 特定技能の業務区分
- 分野別運用要領上の対応関係
- 技能試験免除の対象となるか
技能実習と特定技能には連続する部分がありますが、同じ制度ではありません。
試験免除の対象になるかどうかだけでなく、移行先で外国人に担当させる業務が、特定技能の対象業務に該当するかも確認する必要があります。
5.同じ会社で特定技能へ移行する場合
技能実習を行っていた実習実施者が、引き続き特定技能所属機関として外国人を雇用する場合があります。
本人の仕事内容、職場、住居及び生活環境が大きく変わらないため、別会社へ移る場合より移行しやすいように見えます。
しかし、技能実習と特定技能では、制度の目的、雇用条件、支援内容及び必要書類が異なります。
同じ会社で移行する場合でも、次の準備が必要です。
- 特定技能雇用契約の締結
- 日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上の報酬の設定
- 1号特定技能外国人支援計画の作成
- 登録支援機関への全部委託又は自社支援体制の整備
- 受入れ企業としての基準確認
- 分野別協議会への加入など、分野ごとの手続き
- 地方公共団体への協力確認書の提出
- 在留資格変更許可申請
- 就労開始日の管理
技能実習時代の雇用条件をそのまま使用するのではなく、特定技能の基準に適合する雇用契約へ切り替える必要があります。
支援計画については、次の記事もご確認ください。
なお、2025年4月1日以降、特定技能所属機関には、地方公共団体の共生施策への協力に関する取組も求められています。協力確認書の提出先や提出時期については、特定技能制度における地域の共生施策に関する連携で確認できます。
6.別の会社へ移行する場合
技能実習を修了した後、別の会社で特定技能外国人として働く場合もあります。
この場合は、新しい受入れ企業が特定技能所属機関としての基準を満たしている必要があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
- 新しい会社の事業が対象分野に該当するか
- 外国人が担当する業務が対象業務区分に該当するか
- 雇用契約が特定技能の基準に適合しているか
- 報酬が日本人と同等以上であるか
- 支援体制が整っているか
- 登録支援機関へ支援を全部委託するか
- 分野別協議会に関する手続きが行われているか
- 技能実習の職種・作業と特定技能業務との関連性があるか
- 技能試験・日本語試験が免除されるか
- 技能実習修了日と入社予定日の間に空白が生じないか
- 特定技能への変更許可前に就労させていないか
別会社へ移る場合は、実習実施者、監理団体、新しい受入れ企業、登録支援機関及び行政書士の間で、必要な範囲の情報共有が必要になることがあります。
登録支援機関と行政書士などの役割の違いについては、次の記事で解説しています。
7.在留資格変更許可申請中も働けるとは限らない
技能実習から特定技能へ移行する際、特に注意すべきなのが申請中の就労です。
出入国在留管理庁は、技能実習生が特定技能への在留資格変更許可申請を行った後、稼働できなくなるケースが発生しているとして、就労開始予定日の2か月以上前の申請を案内しています。
技能実習生が「特定技能」に在留資格変更許可申請を行った後、稼働できなくなるケースが発生しています(出入国在留管理庁・PDF)
在留期限までに変更申請を行い、審査中の在留が認められている場合でも、それによって直ちに特定技能の仕事ができるわけではありません。
審査中に行える活動は、原則として変更前の在留資格で認められていた活動です。技能実習計画上の実習が終了している場合は、在留資格変更許可申請中であっても、技能実習として働き続けることができない場合があります。
また、特定技能外国人として働くことができるのは、原則として特定技能への変更が許可された後です。
企業は、次の日付を整理しておく必要があります。
- 技能実習の在留期限
- 技能実習計画上の実習終了日
- 技能実習の雇用契約終了日
- 在留資格変更許可申請日
- 特定技能としての就労開始予定日
- 審査中に就労できない期間が生じる可能性
入社日や勤務開始日を許可前の日付で確定すると、資格外の就労をさせるおそれがあります。本人と企業の双方が困らないよう、技能実習の終了直前ではなく、余裕をもって申請準備を進めることが重要です。
8.「特定活動」で移行準備期間をつなぐ場合
特定技能1号への移行を予定しているものの、在留期限までに受入れ企業側の申請書類をそろえられない場合には、一定の要件のもとで「特定活動(特定技能1号への移行を希望する場合)」への変更を検討できることがあります。
ただし、この特定活動は、単に準備が遅れた場合に自動的に認められる制度ではありません。
原則として、外国人本人が技能試験・日本語試験の合格又は技能実習2号良好修了による試験免除など、特定技能外国人としての要件を満たしており、受入れ機関側の書類準備が在留期限までに整わない場合などが対象となります。
また、この特定活動で在留した期間は、特定技能1号の通算在留期間に算入されます。残りの通算在留可能期間などについても確認が必要です。
詳しい要件及び必要書類は、次の公式ページをご確認ください。
分野によって受入れ上限や特別な運用が行われている場合には、一般的な特定活動の取扱いとは異なることがあります。必ず申請時点の公式情報を確認してください。
9.受入れ企業が準備すべきこと
技能実習から特定技能へ移行する企業は、次の事項を確認します。
- 本人の在留期限
- 技能実習計画上の修了予定日
- 技能実習2号の良好修了を証明する資料
- 技能試験・日本語試験の免除の可否
- 特定技能の対象分野及び業務区分
- 特定技能雇用契約書
- 日本人との報酬比較資料
- 1号特定技能外国人支援計画
- 登録支援機関との支援委託契約又は自社支援体制
- 分野別協議会への加入などの分野別手続き
- 地方公共団体への協力確認書
- 在留資格変更許可申請
- 特定技能としての就労開始日
- 技能実習終了後に就労できない期間が生じないか
特に重要なのは、技能実習の終了時期と申請時期です。
「技能実習が終わる月に申請すればよい」と考えると、許可までの間に働けない期間が発生する可能性があります。試験免除の確認、評価調書の取得、支援計画及び分野別資料の作成には時間がかかることがあるため、早めに準備を始める必要があります。
10.外食業へ移行する場合の注意
外食業分野では、2026年4月13日以降、特定技能1号の受入れ上限に関する措置が行われています。
同日以降に受理された外食業分野の特定技能1号の在留資格認定証明書交付申請は不交付とされ、日本国内から外食業分野の特定技能1号へ変更する申請も、原則として不許可とされています。
ただし、次のような申請については、別の取扱いが示されています。
- すでに外食業分野の特定技能1号で在留する人が、転職などに伴って行う変更申請
- 技能実習「医療・福祉施設給食製造作業」を修了し、外食業分野の特定技能1号へ移行する人の変更申請
- 一定の外食業分野の特定活動から特定技能1号へ移行する人の変更申請
「医療・福祉施設給食製造作業」の技能実習修了者については、審査のうえ、受入れ見込数の範囲内で順次許可する取扱いが示されています。
ただし、許可時点の在留者数によっては、特定技能1号ではなく、特定活動への変更又は当該特定活動の在留期間更新を案内される場合があります。
また、外食業分野の特定活動への変更についても、受入れ停止措置に伴う個別の取扱いがあります。外食業へ移行する場合は、申請前に必ず最新情報を確認してください。
11.技能実習から特定技能への移行で起こりやすい失敗
技能実習から特定技能への移行では、次のような失敗が起こりやすくなっています。
- 技能実習の終了日と在留期限を同じものと考えている
- 変更申請をすれば、そのまま働き続けられると思っている
- 特定技能の変更許可前に就労を開始している
- 技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分を確認していない
- 技能実習を修了すれば、すべての試験が免除されると思っている
- 良好修了を証明する資料を準備していない
- 受入れ企業側の支援体制が整っていない
- 分野別協議会などの手続きが遅れている
- 報酬が日本人と同等以上になっていない
- 技能実習時代の住居費や食費の控除をそのまま使用している
- 地方公共団体への協力確認書を提出していない
- 分野別の受入れ上限や最新の運用を確認していない
技能実習から特定技能への移行は一般的な手続きですが、準備の時期や就労開始日を誤ると、就労できない期間や不許可のリスクが生じます。
12.技能実習から特定技能への移行についてのご相談
技能実習から特定技能への移行では、試験免除の可否だけでなく、良好修了を証明する資料、技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分との対応関係、受入れ企業の基準、雇用契約、支援計画及び申請時期を一体として確認する必要があります。
特に、技能実習の終了時期が近い場合や、別会社への移行を予定している場合は、申請が遅れることで就労できない期間が生じる可能性があります。
行政書士TMY総合法務事務所では、技能実習から特定技能への在留資格変更許可申請、試験免除の確認、必要書類の整理及び受入れ企業側の申請準備についてご相談を承っています。
手続きに不安がある場合は、技能実習の終了直前ではなく、できるだけ早い段階でお問い合わせページからご相談ください。
13.まとめ
技能実習から特定技能1号へ移行する場合、技能実習2号を良好に修了していれば、一定の場合に技能試験や日本語試験が免除されます。
しかし、技能実習を修了すれば自動的に特定技能へ移行できるわけではありません。
この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。
- 技能実習2号良好修了者は、基本となる日本語試験が原則として免除される
- 技能実習の職種・作業と特定技能業務との関連性が認められれば、技能試験も免除される
- 良好修了を証明する資料が必要になる
- 移行先の業務が特定技能の対象業務に該当するか確認する
- 同じ会社で移行する場合でも、特定技能雇用契約と支援計画が必要になる
- 別会社へ移行する場合は、新しい受入れ企業の基準適合性を確認する
- 在留資格変更許可申請中でも、技能実習として働けない期間が生じることがある
- 特定技能として働けるのは、原則として変更許可後である
- 一定の場合には、特定活動による移行準備を検討できる
- 外食業など特別な受入れ措置が行われている分野では、最新情報の確認が必要になる
技能実習から特定技能への移行では、在留期限、実習終了日、申請日、許可日及び就労開始日を正確に管理することが重要です。
本人と企業の双方が困らないよう、移行予定日の数か月前から準備を始めることをおすすめします。
14.次に読みたい関連記事
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Ⅵ-16.育成就労から特定技能へ進む流れと企業が準備すべきこと
育成就労制度の開始後、特定技能1号へ移行する流れを解説しています。
15.参考資料・出典
- 在留資格「特定技能」(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- 「特定技能1号」への移行を希望する場合の特定活動(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度における地域の共生施策に関する連携(出入国在留管理庁)
- 技能実習から特定技能への変更申請後の就労に関する注意喚起(出入国在留管理庁・PDF)
- 外食業分野における外国人材の受入れについて(農林水産省)
- 令和6年入管法等改正について―育成就労制度の創設等(出入国在留管理庁)
※本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成しています。分野別の受入れ基準、試験、協議会手続き及び受入れ上限の運用は変更されることがあるため、実際の申請時には最新情報をご確認ください。

