Ⅵ-4.特定技能の支援計画とは?企業が準備すべき内容

Ⅵ 特定技能・育成就労・技能実習・登録支援

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、その計画に基づいて支援を行う必要があります。

支援計画は、単なる添付書類ではありません。

特定技能外国人が、日本で安定して働き、生活し、地域社会の中で孤立しないようにするための実行計画です。

企業からは、次のような相談を受けることがあります。

・支援計画には何を書けばよいですか
・支援は登録支援機関に全部任せればよいですか
・空港送迎や生活オリエンテーションは必ず必要ですか
・日本語学習は会社が授業を用意しなければいけませんか
・定期面談はどのくらいの頻度で行うのですか
・支援計画を作れば、その後は何もしなくてもよいのですか
・支援を実施していないと、どのような問題になりますか

支援計画は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請の際に、他の申請書類と一緒に提出します。

しかし、重要なのは申請時だけではありません。

許可後も、計画どおりに支援を実施し、相談対応や定期面談を行い、必要に応じて行政機関へ通報する体制が必要です。

この記事では、特定技能の支援計画とは何か、10項目の支援内容、企業が準備すべきこと、自社支援と登録支援機関への委託の違いを解説します。

支援計画とは

支援計画とは、1号特定技能外国人が「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援をどのように行うかを定める計画です。

出入国在留管理庁の制度概要資料では、受入れ機関は、1号特定技能外国人に対して、特定技能1号の活動を安定的かつ円滑に行うことができるよう、支援計画を作成し、その計画に基づき支援を行わなければならないとされています。
(出典:外国人労働者に関する制度概要、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

支援計画は、特定技能2号外国人には必要ありません。

特定技能2号は、熟練した技能を有し、日本で一定程度の就労・生活経験を有することが想定されているため、特定技能1号のような法定支援の対象ではありません。

支援計画を提出する場面

支援計画は、特定技能1号に関する在留諸申請の際に提出します。

主な場面は、次のとおりです。

・海外から特定技能1号外国人を呼び寄せる場合の在留資格認定証明書交付申請
・日本国内にいる外国人を特定技能1号へ変更する場合の在留資格変更許可申請
・転職により新たな受入れ機関で特定技能1号として働く場合の在留資格変更許可申請
・支援計画の変更を伴う場合の届出

支援計画は、申請書類の一つとして提出するだけでなく、その後の支援実施状況にも関わります。

計画と実態が大きく異なる場合、更新や届出、定期報告で問題になる可能性があります。

支援計画に記載する主な内容

支援計画には、主に次の事項を記載します。

・10項目の支援内容と実施方法
・支援責任者
・支援担当者
・支援を実施する言語
・相談対応の方法
・登録支援機関へ委託する場合の委託先
・支援委託契約の内容
・生活オリエンテーションの実施方法
・日本語学習機会の提供方法
・定期面談の実施方法
・地方自治体の共生施策を踏まえた支援内容

出入国在留管理庁の資料でも、支援計画の主な記載事項として、10項目の支援の実施内容・方法、支援責任者及び支援担当者、委託先、登録支援機関などが挙げられています。
(出典:外国人労働者に関する制度概要、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

支援は外国人が理解できる言語で行う

支援計画で重要なのは、外国人本人が理解できる方法で支援を行うことです。

特に、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談・苦情対応などは、外国人が十分に理解できる言語で実施する必要があります。

日本語で一方的に説明しただけでは、実質的な支援にならないことがあります。

企業は、次の点を確認します。

・本人が理解できる言語は何か
・通訳者を確保できるか
・登録支援機関が対応できる言語は何か
・書面資料の翻訳は必要か
・緊急時に連絡できる体制があるか
・相談窓口は本人に伝わっているか

特に、労働条件、住居、社会保険、税金、医療、防災、退職、転職などは、本人が正しく理解できるようにする必要があります。

10項目の支援内容

1号特定技能外国人支援計画には、省令で定められた10項目の支援が含まれます。

以下、各項目を確認します。

事前ガイダンス

事前ガイダンスでは、在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、労働条件、活動内容、入国手続、保証金徴収の有無などについて説明します。

対面だけでなく、テレビ電話等で実施することもできます。

説明すべき内容には、次のようなものがあります。

・雇用契約の内容
・報酬
・労働時間
・休日、休暇
・仕事内容
・勤務場所
・入国手続
・住居
・支援内容
・本人が負担する費用
・保証金、違約金の有無

事前ガイダンスは、外国人が日本で働く前に、契約内容や生活条件を理解するための重要な支援です。

出入国する際の送迎

海外から入国する場合、空港等から事業所又は住居までの送迎を行います。

帰国時には、空港の保安検査場まで同行する支援が求められます。

特に初めて日本に来る外国人の場合、交通機関の利用、乗り換え、住居までの移動が難しいことがあります。

送迎支援は、単なる親切ではなく、支援計画上の支援項目です。

住居確保・生活に必要な契約支援

外国人が日本で生活するためには、住居、銀行口座、携帯電話、電気、ガス、水道などの契約が必要になります。

企業は、次のような支援を行います。

・賃貸住宅を探す
・連帯保証人になる
・社宅を提供する
・銀行口座開設を支援する
・携帯電話契約を支援する
・電気、ガス、水道の契約を支援する
・契約内容を本人が理解できるよう説明する

住居費や初期費用を本人が負担する場合は、その内容が適正であり、本人が理解していることが重要です。

生活オリエンテーション

生活オリエンテーションでは、日本で円滑に社会生活を送るために必要なルールや制度を説明します。

主な内容は、次のとおりです。

・ごみ出しルール
・交通ルール
・公共交通機関の利用
・医療機関の利用
・災害時の対応
・警察、消防、救急
・税金
・社会保険
・年金
・住民登録
・銀行、郵便
・近隣トラブル防止
・会社内のルール

生活オリエンテーションは、入国後又は在留資格変更後、遅滞なく実施する必要があります。

説明を行った記録も残しておくことが大切です。

公的手続等への同行

必要に応じて、住居地の市区町村での手続き、社会保障、税金などの手続きに同行し、書類作成の補助を行います。

主な手続きは、次のとおりです。

・住民登録
・国民健康保険
・国民年金
・マイナンバー
・税金
・転入、転出
・銀行口座
・医療機関
・各種行政サービス

ただし、書類作成や申請手続きには、行政書士法その他の法令が関係する場合があります。

支援としての同行・補助と、専門士業が行うべき書類作成・代理手続きは区別して考える必要があります。

日本語学習機会の提供

企業は、外国人に日本語学習の機会を提供する必要があります。

これは、会社が必ず自前で日本語教室を開かなければならないという意味ではありません。

次のような方法があります。

・地域の日本語教室を案内する
・オンライン日本語教材を紹介する
・日本語学校の情報を提供する
・社内で日本語学習機会を設ける
・日本語教材を提供する
・学習時間の確保に配慮する

重要なのは、実際に本人が日本語を学ぶ機会にアクセスできるようにすることです。

案内だけで終わらせず、本人が利用できているかを確認することが望ましいです。

相談・苦情への対応

外国人からの職場や生活上の相談・苦情について、本人が十分に理解できる言語で対応する必要があります。

相談内容には、次のようなものがあります。

・職場の人間関係
・給与
・労働時間
・住居
・病気
・家族
・行政手続き
・ハラスメント
・退職、転職
・生活トラブル

相談窓口を形式的に設けるだけでは足りません。

本人が誰に相談すればよいかを理解し、実際に相談できる環境を整えることが重要です。

日本人との交流促進

地域社会の中で孤立しないよう、日本人との交流を促進する支援も必要です。

たとえば、次のような支援があります。

・自治会活動の案内
・地域イベントの案内
・祭り、清掃活動、防災訓練への参加支援
・社内交流会
・地域日本語教室の紹介
・地域住民との接点づくり

外国人が会社と住居だけを往復する生活になると、地域で孤立しやすくなります。

地域共生の観点からも、交流促進は重要です。

本人の責任によらない離職時の転職支援

会社都合、人員整理、事業縮小など、外国人本人に責任がない理由で雇用契約を終了する場合、企業は転職支援を行う必要があります。

具体的には、次のような支援です。

・転職先を探す手伝い
・推薦状の作成
・求職活動のための有給休暇付与
・必要な行政手続きの情報提供
・ハローワーク等の案内

特定技能外国人は、在留資格上、対象分野・業務に従事する必要があります。

離職後に何も支援しないと、外国人本人の在留資格に大きな影響が出る可能性があります。

定期面談・行政機関への通報

支援責任者等は、外国人本人及びその上司等と、定期的に面談を行う必要があります。

出入国在留管理庁の制度概要資料では、定期的な面談について、3か月に1回以上行い、労働基準法違反等があれば通報することが示されています。
(出典:外国人労働者に関する制度概要、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

面談では、次の点を確認します。

・仕事内容
・労働時間
・給与支払い
・職場環境
・住居
・健康状態
・生活上の困りごと
・日本語学習
・ハラスメントの有無
・転職希望
・会社とのトラブル

面談記録を残し、問題があれば早期に対応することが重要です。

地方自治体の共生施策を踏まえた支援

2025年4月以降、特定技能所属機関は、地方自治体の共生施策を踏まえて支援計画を作成・実施する必要があります。

出入国在留管理庁の資料では、特定技能所属機関は、支援計画の作成・実施において、地方公共団体が実施する共生施策を確認し、これを踏まえて支援計画を作成・実施するとされています。
(出典:特定技能制度における地域の共生施策に関する連携、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

具体的には、次のような情報を確認します。

・日本語教室
・外国人相談窓口
・防災情報
・ごみ出しルール
・地域イベント
・医療情報
・生活ガイド
・行政サービス

支援計画は、会社内だけで完結するものではありません。

外国人が実際に生活する自治体の制度や地域ルールを踏まえて作成する必要があります。

自社支援と委託支援

支援計画の実施方法には、大きく分けて次の2つがあります。

・受入れ企業が自社で支援する
・登録支援機関へ支援の全部を委託する

自社支援を行う場合は、企業が支援責任者、支援担当者、相談対応体制、言語対応体制を整える必要があります。

登録支援機関へ全部委託する場合は、受入れ企業に支援体制があるものとみなされます。

ただし、登録支援機関に委託しても、雇用主としての企業責任は残ります。

企業は、支援が実際に行われているかを確認し、登録支援機関と連携する必要があります。

支援計画を変更する場合

支援計画の内容を変更する場合、出入国在留管理庁への届出が必要になることがあります。

たとえば、次のような場合です。

・支援担当者が変わった
・登録支援機関を変更した
・支援方法を変更した
・相談対応言語を変更した
・委託範囲を変更した
・住居支援の内容が変わった
・支援体制に変更があった

支援計画は、作成して終わりではなく、実際の状況に応じて適切に管理する必要があります。

支援を実施しない場合のリスク

支援計画を提出して許可を受けたにもかかわらず、実際には支援を行っていない場合、受入れ企業の適格性に問題が生じます。

考えられるリスクは、次のとおりです。

・在留期間更新で問題になる
・新規受入れが難しくなる
・出入国在留管理庁から指導を受ける
・改善を求められる
・届出義務違反が問題になる
・外国人の離職、失踪、トラブルにつながる
・労働法令違反の発見が遅れる

支援は、外国人本人を守るだけでなく、企業を守るための仕組みでもあります。

企業が準備すべき実務体制

支援計画を適切に実施するため、企業は次の体制を準備します。

・支援責任者の選任
・支援担当者の選任
・相談窓口
・通訳・翻訳体制
・生活オリエンテーション資料
・自治体情報の確認
・定期面談のスケジュール
・面談記録の様式
・緊急連絡体制
・登録支援機関との連絡ルール
・届出管理表
・現場責任者への制度説明

支援計画を申請書類として作るだけでなく、実際に動く体制を用意することが重要です。

まとめ

特定技能の支援計画は、特定技能1号外国人が日本で安定して働き、生活するための重要な計画です。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・支援計画は特定技能1号で必要になる
・特定技能2号では法定の支援計画は不要である
・支援計画は在留資格認定証明書交付申請や変更申請時に提出する
・支援は外国人が理解できる言語で行う必要がある
・支援内容は10項目に整理されている
・事前ガイダンス、送迎、住居確保、生活オリエンテーションなどが必要である
・相談・苦情対応や定期面談は継続的に行う必要がある
・定期面談は3か月に1回以上行う
・地方自治体の共生施策を踏まえて支援計画を作成・実施する必要がある
・登録支援機関へ全部委託することもできる
・委託しても、企業の雇用主としての責任は残る
・支援計画の変更や支援実施状況は届出・報告の対象となる

支援計画は、入管に提出するための形式的な書類ではありません。

外国人本人が職場と地域で安定して生活するための実務計画であり、企業のコンプライアンス体制そのものでもあります。

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参考資料・出典

1号特定技能外国人支援・登録支援機関について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
外国人労働者に関する制度概要 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能外国人受入れに関する運用要領 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能制度における地域の共生施策に関する連携 出入国在留管理庁ウェブサイトより
特定技能所属機関・登録支援機関による届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより