Ⅲ-10.永住申請と帰化申請で確認されるポイントの違い

永住申請と帰化申請は、どちらも日本に長く住む外国人の方にとって重要な手続きです。

前の記事では、永住は「外国籍のまま日本で安定して暮らすための在留資格」、帰化は「日本国籍を取得する手続き」であることを解説しました。

では、実際の申請では、どのような点が確認されるのでしょうか。

「永住も帰化も、収入や税金を見るので同じようなものではないですか」

「永住が許可されれば、帰化も簡単に通りますか」

「帰化の方が難しいのですか、それとも永住の方が厳しいのですか」

このような疑問を持つ方は多くいます。

結論からいえば、永住申請と帰化申請には共通する確認ポイントもありますが、審査の目的が異なるため、重視される視点も異なります。

永住申請は、外国人として日本に引き続き安定して在留することを認めるかどうかを判断する手続きです。

帰化申請は、日本国籍を取得し、日本人となることを認めるかどうかを判断する手続きです。

そのため、永住では在留状況、公的義務の履行、生活の安定性などが中心になります。

一方、帰化では、国籍取得に関わる条件、身分関係、本国書類、日本語能力、家族関係なども大きな意味を持ちます。

この記事では、永住申請と帰化申請で確認されるポイントの違いを、制度の目的、提出先、収入、税金、社会保険、素行、家族関係、書類準備の観点から整理します。

1.永住申請と帰化申請は、そもそも目的が違う

まず、永住申請と帰化申請では、制度の目的が異なります。

永住申請は、在留資格「永住者」を取得するための手続きです。

永住許可を受けても、国籍は外国籍のままです。

出入国在留管理庁の在留資格一覧表では、「永住者」は、法務大臣から永住の許可を受けた者とされています。
(出典:在留資格一覧表、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

一方、帰化申請は、日本国籍を取得する手続きです。

国籍法では、日本国民でない者は、帰化によって日本国籍を取得できるとされ、帰化には法務大臣の許可が必要とされています。
(出典:国籍法、e-Gov法令検索より)

つまり、永住は「在留資格の安定化」、帰化は「国籍の取得」です。

この違いが、審査で確認されるポイント全体に影響します。

2.提出先が違う

永住申請と帰化申請では、提出先も異なります。

永住許可申請は、出入国在留管理庁に対して行います。

出入国在留管理庁の永住許可申請の案内では、申請先は住居地を管轄する地方出入国在留管理官署とされています。
(出典:永住許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

一方、帰化許可申請は、法務局又は地方法務局に対して行います。

法務省の帰化許可申請の案内では、帰化しようとする者が15歳以上のときは本人が、15歳未満のときは親権者等の法定代理人が、法務局又は地方法務局に自ら出頭し、書面によって申請しなければならないとされています。
(出典:帰化許可申請、法務省ウェブサイトより)

この違いは重要です。

永住は入管手続です。

帰化は国籍手続です。

相談先、準備書類、審査の流れ、本人出頭の扱いも異なります。

3.永住申請で確認される基本ポイント

永住申請では、主に次の3つの法律上の要件が確認されます。

・素行が善良であること
・独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
・その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

出入国在留管理庁の永住許可申請の案内でも、これらが審査基準として示されています。
(出典:永住許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、永住許可に関するガイドラインでは、「日本国の利益に合すること」の中で、原則として引き続き10年以上日本に在留していること、そのうち就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していること、公的義務を適正に履行していることなどが示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

永住申請では、次の点が特に重要になります。

・日本での在留年数
・現在の在留資格
・現在付与されている在留期間
・収入の安定性
・扶養家族の人数
・住民税、国税の納付状況
・年金、健康保険の納付状況
・交通違反、犯罪歴、罰金歴
・出入国の頻度
・日本での生活基盤
・身元保証人
・了解書の内容

永住は、外国籍のまま日本で安定して暮らしていけるかを確認する手続きです。

そのため、日本での在留状況が安定しているか、公的義務をきちんと履行しているかが非常に重視されます。

4.帰化申請で確認される基本ポイント

帰化申請では、国籍法上の条件が確認されます。

法務省の国籍Q&Aでは、帰化の一般的条件として、住所条件、能力条件、素行条件、生計条件、重国籍防止条件、憲法遵守条件が説明されています。
(出典:国籍Q&A、法務省ウェブサイトより)

主な条件は、次のとおりです。

・引き続き一定期間、日本に住所を有していること
・一定の年齢と能力を有していること
・素行が善良であること
・自己又は生計を一にする親族によって生計を営めること
・日本国籍取得により原則として従前の国籍を失うこと
・日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企てる等の事情がないこと

帰化では、これらに加えて、身分関係を証明する書類、本国書類、日本語能力、親族関係、婚姻・離婚・出生・認知などが重要になります。

東京法務局の案内でも、帰化が許可された場合には戸籍を創設することになるため、身分関係を証する書類も併せて提出する必要があると説明されています。
(出典:帰化について、東京法務局ウェブサイトより)

帰化は、日本国籍を取得する手続きです。

そのため、単に日本で生活できるかだけではなく、日本人としての身分関係を戸籍に反映できるか、本国の国籍関係をどう整理するかも問題になります。

5.収入・生計面の違い

永住申請でも帰化申請でも、生活の安定性は重要です。

ただし、確認のされ方には違いがあります。

永住申請では、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有することが要件とされています。

永住許可ガイドラインでは、日常生活において公共の負担にならず、資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることと説明されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

つまり、永住では、本人又は世帯として、日本で今後も安定して生活できるかが確認されます。

一方、帰化申請では、国籍法上の生計条件として、自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができることが求められます。
(出典:国籍法、e-Gov法令検索より)

帰化では、本人だけでなく、生計を一にする家族全体の生活状況が重視されます。

会社員、自営業者、会社経営者、扶養家族が多い世帯、配偶者の収入で生活している世帯などでは、収入の見方が異なります。

6.税金・社会保険の確認の違い

永住申請では、納税、公的年金、公的医療保険の保険料の納付が非常に重視されます。

永住許可ガイドラインでは、公的義務として、納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付、入管法に定める届出等の義務を適正に履行していることが示されています。また、申請時点で納税・納付済みであっても、当初の納付期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されるとされています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

つまり、永住では「未納がないか」だけでなく、「期限内に納付していたか」が重要です。

帰化申請でも、納税状況、年金、健康保険、交通違反などは素行や生計の判断に関係します。

ただし、帰化ではそれに加え、国籍取得にふさわしい生活状況か、日本社会で安定して生活しているかという観点で総合的に見られます。

永住では入管庁が在留資格の観点から確認し、帰化では法務局が国籍取得の観点から確認する、という違いがあります。

7.素行面の違い

永住申請でも帰化申請でも、素行は重要です。

永住許可ガイドラインでは、素行が善良であることについて、法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることとされています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、「日本国の利益に合すること」の中で、罰金刑や拘禁刑などを受けていないことも示されています。

帰化でも、国籍法上の条件として素行が善良であることが求められます。
(出典:国籍法、e-Gov法令検索より)

交通違反、罰金、刑事事件、税金や社会保険の滞納、各種届出義務の不履行などは、永住でも帰化でも問題になり得ます。

ただし、帰化では、日本国籍を取得するという性質上、本人の生活態度、社会生活上の信用、家族全体の状況なども含めて、より幅広く確認される傾向があります。

8.在留年数・住所歴の違い

永住申請では、原則として引き続き10年以上日本に在留していること、そのうち就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることがガイドラインで示されています。
(出典:永住許可に関するガイドライン、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

一方、帰化申請では、国籍法上、原則として引き続き5年以上日本に住所を有することが条件とされています。
(出典:国籍法、e-Gov法令検索より)

数字だけを見ると、帰化の方が短いように見えることがあります。

しかし、単純に「5年で帰化、10年で永住」と理解するのは危険です。

永住には日本人配偶者、永住者の配偶者、高度人材などの特例があります。

帰化にも、日本人配偶者や日本生まれの方などに関する条件の緩和があります。

また、帰化では本国書類、身分関係、日本語能力、国籍離脱・喪失の問題なども関係します。

したがって、在留年数だけでどちらが簡単かを判断することはできません。

9.家族関係・身分関係の違い

永住申請でも家族関係は確認されます。

たとえば、扶養家族の人数、配偶者や子どもの在留資格、世帯収入、身元保証人などが関係します。

しかし、永住申請の中心は、あくまで在留資格の安定性です。

一方、帰化申請では、家族関係や身分関係が非常に重要です。

帰化が許可されると戸籍が作られるため、出生、婚姻、離婚、親子関係、認知、養子縁組、兄弟姉妹、父母の情報などを整理する必要があります。

東京法務局の案内でも、帰化が許可された場合には戸籍を創設することになるため、身分関係を証する書類を提出する必要があるとされています。
(出典:帰化について、東京法務局ウェブサイトより)

そのため、帰化では本国の出生証明書、婚姻証明書、親族関係証明書などの取得が大きな負担になることがあります。

10.本国書類の重さが違う

永住申請でも、身分関係資料や外国語書類が必要になることがあります。

しかし、帰化申請では本国書類の重要性がより高くなります。

帰化申請では、国籍、出生、親族関係、婚姻、離婚、国籍離脱・喪失などに関する本国書類が必要になることがあります。

東京法務局の案内では、帰化許可申請に必要な書類は、国籍、職業、家族構成等により大きく異なると説明されています。
(出典:帰化手続について、東京法務局ウェブサイトより)

本国の制度によっては、書類名、発行機関、取得方法、翻訳、認証の要否が異なります。

そのため、帰化申請では、単に日本側の住民票や課税証明書を集めるだけではなく、本国書類の収集計画が重要になります。

11.日本語能力の確認

永住申請では、日本語能力が明示的な一般要件として大きく掲げられているわけではありません。

もちろん、日本で安定して生活していることを説明するうえで、日本語能力がプラスに働く場面はあります。

一方、帰化申請では、日本語の読み書きや会話能力が確認されることがあります。

帰化は日本国籍を取得する手続きであり、日本社会で生活していく意思や能力も重要です。

実際の法務局相談では、日本語での意思疎通、申請書類の理解、日常生活に必要な読み書きが問題になることがあります。

この点も、永住と帰化の大きな違いです。

12.永住は「外国人としての安定」、帰化は「日本人になる手続き」

永住申請と帰化申請の違いを一言でいうと、永住は外国人として日本で安定して在留するための手続き、帰化は日本人になるための手続きです。

永住では、次のような観点が中心になります。

・外国人としての在留状況が安定しているか
・日本で継続して生活してきたか
・収入や生活基盤が安定しているか
・納税、年金、健康保険を適正に履行しているか
・在留期間更新をしなくてもよい地位を認めてよいか

帰化では、次のような観点が中心になります。

・日本国籍を取得する意思が明確か
・国籍法上の条件を満たしているか
・日本での住所、生活、収入、素行に問題がないか
・身分関係を戸籍に反映できるか
・本国籍との関係を整理できるか
・日本語で生活できるか

どちらが上、どちらが下という関係ではありません。

制度の目的が違うため、見られるポイントも違うのです。

13.永住が不許可でも帰化が可能なことはあるか

永住と帰化は別制度です。

そのため、永住が不許可だから帰化も絶対に無理、帰化が難しいから永住も無理、という単純な関係ではありません。

ただし、収入、納税、社会保険、素行、交通違反、在留状況など、共通して見られる点があります。

永住で問題になった事情が、帰化でも問題になることは十分あります。

たとえば、税金の未納、年金の未納、重大な交通違反、犯罪歴、収入不安定などは、どちらの申請でも慎重に検討されます。

一方で、帰化では本国書類や国籍離脱の問題が大きく、永住では在留年数や現在の在留資格、在留期間がより直接的に問題になることがあります。

したがって、どちらか一方が難しい場合でも、もう一方の可能性を個別に検討する必要があります。

14.相談前に整理しておくべきこと

永住と帰化のどちらを検討する場合でも、相談前に次の点を整理しておくとよいでしょう。

・現在の在留資格
・現在の在留期間
・日本に住み始めた時期
・これまでの在留資格の履歴
・勤務先、収入、扶養家族
・住民税、国税、年金、健康保険の状況
・交通違反、罰金、刑事事件の有無
・海外出国の回数と期間
・配偶者や子どもの国籍、在留資格
・母国籍を維持したいか
・日本国籍を取得したい意思があるか
・本国書類を集められるか
・家族で同時に申請する予定があるか

これらを整理すると、永住向きか、帰化向きか、あるいは今はどちらも準備期間とすべきかが見えやすくなります。

15.まとめ

永住申請と帰化申請は、どちらも日本で長く生活する外国人にとって重要な手続きですが、確認されるポイントは同じではありません。

永住申請は、外国籍のまま、日本で安定して在留することを認めるかどうかを判断する手続きです。

帰化申請は、日本国籍を取得し、日本人となることを認めるかどうかを判断する手続きです。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・永住は在留資格、帰化は国籍取得の手続きである
・永住の提出先は出入国在留管理庁である
・帰化の提出先は法務局又は地方法務局である
・永住では在留状況、公的義務の履行、生活の安定性が重要である
・帰化では国籍法上の条件、身分関係、本国書類、日本語能力も重要である
・税金、年金、健康保険、素行は永住でも帰化でも重要である
・永住は外国人としての安定、帰化は日本人になる手続きである
・在留年数だけで、どちらが簡単かを判断することはできない

永住と帰化は、どちらを選ぶべきかだけでなく、今どちらを申請できる状態なのか、どちらに向けて準備するべきなのかを考えることが大切です。

単に「永住の方が楽そう」「帰化の方が有利そう」と判断するのではなく、本人の在留状況、収入、税金、社会保険、家族、母国との関係、将来の生活設計を総合的に整理して検討することが重要です。

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参考資料・出典

永住許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
永住許可に関するガイドライン 出入国在留管理庁ウェブサイトより
永住許可関係 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格一覧表 出入国在留管理庁ウェブサイトより
帰化許可申請 法務省ウェブサイトより
国籍Q&A 法務省ウェブサイトより
国籍法 e-Gov法令検索より
帰化について 東京法務局ウェブサイトより
帰化手続について 東京法務局ウェブサイトより