Ⅱ-10.交際期間が短い国際結婚で在留資格申請をする場合の注意点

国際結婚の相談では、「交際期間が短いのですが、配偶者ビザの申請はできますか」という質問を受けることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

・知り合って数か月で結婚した
・実際に会った回数が少ない
・オンラインでの交際期間が中心だった
・海外旅行中に出会い、その後すぐに結婚した
・マッチングアプリやSNSで知り合った
・家族や友人に十分紹介する前に結婚した

このような場合、在留資格「日本人の配偶者等」の申請が絶対にできないわけではありません。

結婚の形は人によって異なります。交際期間が短くても、真実の婚姻であり、夫婦として生活していく実体があれば、在留資格申請を検討することは可能です。

しかし、交際期間が短い国際結婚では、入管審査において、婚姻の実体や交際経緯が慎重に確認されやすくなります。

この記事では、交際期間が短い国際結婚で在留資格「日本人の配偶者等」を申請する場合に、どのような点を確認されやすいのか、どのような資料を準備すべきかを解説します。

なお、一般には「配偶者ビザ」と呼ばれることがありますが、この記事では、正確な制度上の用語として、主に在留資格「日本人の配偶者等」と表記します。

1.交際期間が短いこと自体で不許可になるわけではない

まず確認しておきたいのは、交際期間が短いことだけを理由に、直ちに不許可になるわけではないという点です。

在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者、日本人の特別養子、日本人の子として出生した人を対象とする在留資格です。出入国在留管理庁の在留資格一覧表でも、日本人の配偶者等の該当例として「日本人の配偶者・子・特別養子」が挙げられ、在留期間は5年、3年、1年又は6月とされています。
(出典:在留資格一覧表、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

したがって、法律上有効な婚姻が成立しており、夫婦としての実体がある場合には、在留資格「日本人の配偶者等」の申請対象となり得ます。

ただし、入管が確認するのは、婚姻届が出されているかどうかだけではありません。

実際には、次のような点が確認されます。

・どのように知り合ったのか
・いつから交際を始めたのか
・どの程度連絡を取り合っていたのか
・実際に会った回数や期間
・結婚を決めた経緯
・双方の家族や友人が結婚を知っているか
・言語や生活習慣の違いをどう乗り越えているか
・結婚後どこで、どのように生活する予定か
・金銭の授受や紹介業者の関与がないか

交際期間が短い場合、これらの点について、通常より丁寧な説明が必要になります。

2.なぜ交際期間が短いと慎重に見られるのか

交際期間が短い場合に慎重に見られる理由は、偽装婚や在留目的の婚姻ではないかを確認する必要があるからです。

日本人と結婚すれば、在留資格「日本人の配偶者等」を申請できる可能性があります。

この在留資格は、就労制限がない身分系在留資格です。そのため、真実の婚姻でないにもかかわらず、日本で生活したり働いたりする目的で婚姻を装うケースが問題になることがあります。

入管審査では、法律上の婚姻だけでなく、夫婦としての実体があるかが確認されます。

出入国在留管理庁の「日本人の配偶者等」の提出書類では、質問書のほか、夫婦間の交流が確認できる資料として、二人で写っているスナップ写真、SNS記録、通話記録などの提出が案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

交際期間が短い場合には、この「夫婦間の交流が確認できる資料」が特に重要になります。

3.質問書では交際経緯を具体的に説明する

在留資格「日本人の配偶者等」の申請では、質問書の提出が求められます。

質問書では、出会った時期、場所、交際の経緯、結婚に至った事情などを記載します。

交際期間が短い場合、質問書の内容が非常に重要です。

たとえば、次のような点を整理します。

・最初に知り合った年月日
・知り合った場所や方法
・初めて実際に会った時期
・交際を始めた時期
・結婚を意識したきっかけ
・プロポーズの時期と場所
・婚姻届を提出した日
・双方の家族に紹介した時期
・結婚式、食事会、親族への挨拶の有無
・今後の生活予定

ここで重要なのは、単に「愛し合っている」「結婚したいと思った」と書くだけではなく、時系列で具体的に説明することです。

たとえば、次のような説明の方が分かりやすくなります。

「2024年3月に友人の紹介で知り合い、同年4月からSNSで毎日連絡を取るようになった。2024年7月に日本人配偶者が相手国を訪問し、本人とその家族に会った。その後もビデオ通話を継続し、2024年12月に再度現地を訪問して婚約した。2025年2月に日本で婚姻届を提出した。」

このように、交際の流れが自然に分かるように説明します。

4.短期間でも関係性を裏付ける資料を用意する

交際期間が短い場合、期間の長さを補うためには、関係性を裏付ける資料が重要です。

具体的には、次のような資料が考えられます。

・二人で写っている写真
・家族や友人と一緒に写っている写真
・SNSやメッセージアプリのやり取り
・通話履歴
・ビデオ通話の記録
・渡航履歴
・航空券、ホテル予約、出入国記録
・送金記録
・婚約指輪、結婚式、食事会に関する資料
・家族への紹介状況が分かる資料
・結婚後の住居資料

写真は、単に枚数が多ければよいわけではありません。

時期、場所、関係性が分かることが重要です。

たとえば、同じ日に撮影した写真を大量に提出するよりも、複数の時期、複数の場所で撮影された写真の方が、交際の継続性を示しやすくなります。

また、SNSや通話記録も、必要以上に大量に提出する必要はありません。

ただし、交際が継続していたこと、連絡頻度がある程度あったことが分かるように、時期を分けて整理するとよいでしょう。

5.オンライン交際の場合に注意すべきこと

近年は、SNS、マッチングアプリ、オンラインゲーム、語学学習アプリなどを通じて知り合い、国際結婚に至るケースもあります。

オンラインで知り合ったこと自体は、不自然ではありません。

しかし、オンライン交際の場合、実際に会った回数や期間が少ないことが多いため、婚姻の実体をどう説明するかが重要になります。

確認されやすい点は、次のとおりです。

・どのアプリやサービスで知り合ったのか
・いつから連絡を取っていたのか
・どの言語で会話しているのか
・実際に会ったことがあるのか
・会った回数、期間、場所
・相手の家族や友人と会ったことがあるか
・結婚を決めるまでの経緯
・金銭のやり取りがないか

オンライン交際の場合、メッセージ履歴、通話履歴、ビデオ通話記録、渡航記録などを整理して、単なる短期的なやり取りではなく、継続的な交際であったことを説明する必要があります。

6.紹介業者やマッチングサービスを利用した場合

結婚紹介所、国際結婚紹介業者、マッチングサービスを通じて知り合った場合も、申請自体が直ちに不利になるわけではありません。

しかし、入管審査では、金銭目的の婚姻や偽装婚ではないかが確認されやすくなります。

特に、次の点を整理しておく必要があります。

・どのようなサービスを利用したのか
・紹介者や業者の関与内容
・費用の支払者
・相手方本人への金銭提供の有無
・結婚を決めるまでの交流内容
・本人同士の意思で結婚したこと
・相手の家族や生活状況を理解していること

紹介を受けたこと自体を隠す必要はありません。

むしろ、隠して後から判明すると、申請全体の信用性が下がる可能性があります。

重要なのは、出会いのきっかけを正直に説明し、その後、本人同士がどのように交際し、結婚を決めたのかを具体的に示すことです。

7.言語の問題も確認されることがある

交際期間が短い国際結婚では、夫婦間でどのように意思疎通しているのかも確認されることがあります。

たとえば、次のような場合です。

・共通言語がない
・翻訳アプリだけで会話している
・相手の母語をほとんど理解していない
・結婚後の生活について十分話し合えていない
・重要な生活上の事項を共有していない

言語が違うこと自体は、国際結婚では珍しくありません。

しかし、夫婦として生活していくためには、一定の意思疎通が必要です。

質問書や理由書では、どの言語で会話しているのか、翻訳アプリを使っている場合はどのように意思疎通しているのか、将来の生活についてどのように話し合っているのかを説明するとよいでしょう。

8.生活基盤も確認される

在留資格「日本人の配偶者等」では、婚姻実体だけでなく、日本での生活基盤も確認されます。

出入国在留管理庁の提出書類では、日本での滞在費用を証明する資料として、滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税課税証明書及び納税証明書などが案内されています。入国後間もない場合や転居等によりこれらの資料で証明できない場合には、預貯金通帳の写し、雇用予定証明書、採用内定通知書などの提出も案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

交際期間が短い場合、婚姻の実体に加えて、結婚後の生活計画も丁寧に説明することが重要です。

たとえば、次の点を整理します。

・どこに住むのか
・誰が生活費を負担するのか
・日本人配偶者の収入
・外国人配偶者が来日後に働く予定があるか
・親族の援助があるか
・住居の広さや契約状況
・将来の生活設計

生活基盤が不明確な場合、婚姻後の実生活が見えにくくなります。

9.短期滞在中に急いで結婚した場合

外国人配偶者が短期滞在で来日中に知り合い、短期間で婚姻届を提出するケースもあります。

この場合は、短期滞在から在留資格変更を行うか、いったん帰国して在留資格認定証明書交付申請を行うかを慎重に検討する必要があります。

短期滞在から他の在留資格への変更は、入管法上、「やむを得ない特別の事情」に基づくものでなければ許可しないものとされています。
(出典:出入国審査・在留審査Q&A、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

短期滞在中に結婚したからといって、当然に国内で「日本人の配偶者等」へ変更できるわけではありません。

交際期間が短い場合は、無理に国内変更を狙うより、いったん帰国し、在留資格認定証明書交付申請として資料を整える方がよい場合もあります。

10.不自然に見えやすいケース

交際期間が短い国際結婚で、特に注意が必要なのは次のようなケースです。

・知り合ってすぐに結婚している
・実際に会った回数が極端に少ない
・共通言語がほとんどない
・相手の家族に会ったことがない
・結婚式や親族への紹介がない
・相手の生活状況をよく知らない
・金銭の送金が頻繁にある
・紹介業者への高額な支払いがある
・過去に同様の申請歴がある
・日本人配偶者に離婚歴が多い
・外国人配偶者に過去の不交付、不許可、退去歴がある

これらの事情があるからといって、必ず不許可になるわけではありません。

しかし、説明を省略すると不自然に見える可能性があります。

申請では、不利に見える事情ほど、隠さず、合理的に説明することが重要です。

11.理由書を作成した方がよいケース

通常の提出書類に加えて、理由書を作成した方がよいケースがあります。

たとえば、次のような場合です。

・交際期間が短い
・会った回数が少ない
・オンライン交際が中心
・年齢差が大きい
・再婚歴がある
・相手の国への渡航回数が少ない
・短期滞在中に結婚した
・家族にまだ紹介していない
・収入や住居に補足説明が必要
・過去の申請歴や在留歴に説明が必要

理由書では、単に「真実の結婚です」と書くだけでは足りません。

出会いから結婚までの経緯、夫婦としての生活予定、資料だけでは分かりにくい事情を、時系列で整理して説明します。

12.まとめ

交際期間が短い国際結婚でも、在留資格「日本人の配偶者等」の申請を検討することは可能です。

しかし、交際期間が短い場合、入管審査では、婚姻の実体や交際経緯が慎重に確認されやすくなります。

特に重要なのは、次の点です。

・法律上有効な婚姻が成立していること
・夫婦としての実体があること
・出会いから結婚までの経緯を具体的に説明できること
・写真、SNS記録、通話記録など交流資料を準備できること
・オンライン交際や紹介業者利用の場合は、その経緯を正直に説明すること
・言語、生活基盤、住居、収入についても整理すること
・短期滞在中に結婚した場合は、国内変更の可否を慎重に検討すること

交際期間が短いこと自体が問題なのではありません。

問題になるのは、交際の実態や結婚に至った経緯を説明できないこと、資料で裏付けられないことです。

短期間で結婚した場合ほど、感情的な説明だけでなく、時系列、資料、生活計画を整理し、夫婦としての実体を分かりやすく示すことが重要です。

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参考資料・出典

在留資格一覧表 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国審査・在留審査Q&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格認定証明書交付申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より