Ⅰ-17.外国人社員の退職時に会社が確認すべき入管・労務手続き

外国人社員が退職する場合、会社は通常の労務手続きに加えて、外国人雇用に関する届出や在留資格上の注意点を確認する必要があります。

退職そのものは労働契約の終了ですが、外国人本人にとっては、在留資格の基礎となる活動が終了する重要な出来事です。特に就労系在留資格で在留している外国人は、退職後の再就職、所属機関に関する届出、在留期限、在留資格変更の必要性などを確認しなければなりません。

一方、会社側にも、外国人雇用状況届出、雇用保険・社会保険の資格喪失手続き、退職証明書や源泉徴収票の交付など、対応すべき事項があります。

この記事では、外国人社員が退職する場合に、会社が確認しておきたい入管・労務上の手続きを整理します。


1.外国人社員にも通常の退職手続きが必要

外国人社員にも、日本人社員と同じく、労働関係法令や社会保険関係法令が適用されます。

厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」でも、外国人労働者について、労働関係法令・社会保険関係法令を遵守し、適正な雇用管理を行うことが求められています。

外国人社員が退職する場合も、まずは通常の退職手続きを確認します。

確認する手続き主な内容
退職日の確定退職届、退職合意書、雇用契約の終了日などを確認する
賃金の精算最終給与、残業代、未払い賃金、各種手当などを確認する
有給休暇未消化の年次有給休暇の取扱いを確認する
健康保険・厚生年金被保険者資格喪失手続き、健康保険証等の取扱いを確認する
雇用保険雇用保険被保険者資格喪失届、離職証明書等を確認する
退職証明書本人から請求があった場合に、必要事項を記載して交付する
源泉徴収票退職者に対して所定の期限内に交付する
貸与物の返却社員証、パソコン、携帯電話、制服、鍵などを回収する
社宅・住居退去日、費用負担、郵便物の送付先などを確認する

外国人社員の場合は、これらに加えて、外国人雇用状況届出、本人による所属機関に関する届出、退職後の在留資格などを確認する必要があります。


2.外国人雇用状況届出を忘れない

外国人社員が離職した場合、会社は、原則として外国人雇用状況届出を行う必要があります。

外国人雇用状況届出は、外国人を雇い入れたときだけでなく、離職したときにも必要です。

ただし、次の外国人は届出対象から除かれます。

  • 在留資格「外交」の外国人
  • 在留資格「公用」の外国人
  • 特別永住者

届出方法と期限は、外国人社員が雇用保険の被保険者であるかどうかによって異なります。

区分届出方法離職時の届出期限
雇用保険の被保険者雇用保険被保険者資格喪失届に、在留資格、在留期間、国籍・地域などの必要事項を記載する離職日の翌日から起算して10日以内
雇用保険の被保険者でない外国人外国人雇用状況届出書(様式第3号)をハローワークへ提出する離職した日の属する月の翌月末日まで

届出に当たっては、外国人本人から在留カードや旅券の提示を受け、氏名、在留資格、在留期間、在留期限、国籍・地域などを正確に確認します。ハローワークへ在留カードの写しを添付する必要はありません。

提出様式や電子申請の方法は変更されることがあるため、実際に手続きを行う際は、厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」で最新情報を確認してください。

外国人雇用状況届出の対象者、届出事項、提出方法については、「外国人雇用状況届出とは?会社が忘れてはいけない届出」で詳しく解説しています。


3.本人による所属機関に関する届出を案内する

就労系在留資格で在留している外国人本人には、退職時に「所属機関に関する届出」が必要になる場合があります。

例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」など、日本の会社との契約に基づいて活動する外国人が退職した場合には、原則として、契約が終了した日から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出ます。

この届出は、会社が行う外国人雇用状況届出とは別の手続きです。

届出届出をする人提出先
外国人雇用状況届出雇用していた会社ハローワーク
所属機関に関する届出対象となる外国人本人出入国在留管理庁

所属機関に関する届出は、窓口への持参や郵送のほか、出入国在留管理庁電子届出システムを利用して行うこともできます。

詳しい対象者、届出事由、提出方法については、出入国在留管理庁「所属(契約)機関に関する届出」をご確認ください。

これは外国人本人が行う手続きですが、会社から退職時に案内しておくことで、本人の届出漏れを防ぎやすくなります。ただし、会社が本人に代わって当然に届出義務を負うという意味ではありません。


4.退職後の在留資格と再就職に注意する

就労系在留資格は、日本で一定の就労活動を行うことを前提としています。

退職したからといって、その日に在留資格や在留カードが直ちに失効するわけではありません。しかし、退職後に在留資格に応じた活動を行わない状態が長期間続く場合には、注意が必要です。

入管法上、別表第一の在留資格で在留する外国人が、正当な理由なく、その在留資格に対応する活動を継続して3か月以上行っていない場合には、在留資格取消しの対象となる可能性があります。

ただし、「退職後3か月が経過すれば必ず在留資格が取り消される」という意味ではありません。再就職活動の状況、病気や家庭事情など、活動を行っていないことについて正当な理由があるかどうかを含め、個別の事情によって判断されます。

制度の詳細は、出入国在留管理庁「在留資格の取消し」をご確認ください。

退職後に次の勤務先が決まっていない場合、外国人本人は、状況に応じて次の対応を検討する必要があります。

  • 在留資格に適合する仕事を探す
  • 再就職後に新しい会社との契約締結を届け出る
  • 新しい仕事内容が現在の在留資格に適合するか確認する
  • 必要に応じて在留資格変更許可申請を行う
  • 在留期限が近い場合は、更新申請の可否を確認する
  • 日本での活動を継続しない場合は、帰国準備を進める

転職後の仕事内容が現在の在留資格に適合するかどうかについては、「外国人社員が転職した場合、在留資格はそのままでよいのか」もご参照ください。

新しい勤務先での業務が現在の在留資格の範囲内にあることを確認したい場合には、就労資格証明書の取得を検討することがあります。

詳しくは、「外国人社員が転職してきた場合、会社は何を確認すべきか|就労資格証明書の活用」で解説しています。


5.退職証明書・源泉徴収票などを適切に交付する

外国人本人が再就職した後に在留期間更新許可申請を行う場合や、就労資格証明書を取得する場合には、前職の退職日、在職期間、職務内容などを説明する資料が必要になることがあります。

会社が退職時に交付・準備する書類には、次のようなものがあります。

書類在留手続き等との関係
退職証明書退職日、在職期間、担当業務、退職理由などの確認に使用されることがある
源泉徴収票前年または退職年の収入、給与支払状況の確認に使用される
雇用保険被保険者離職票離職状況や失業給付手続きの確認に使用される
在職証明書在職期間、役職、勤務実績などの説明資料になる
職務内容証明書転職後の在留手続きで、これまでの職歴や専門的な実務経験を説明する資料になることがある
給与明細等実際の給与支払状況を確認する資料になることがある

労働基準法第22条では、退職した労働者から、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職事由などについて証明書の交付を請求された場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないとされています。

退職証明書には、労働者が請求していない事項を記載してはならない点にも注意が必要です。モデル様式は、厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」で確認できます。

会社が必要書類を適切に交付しておくことで、外国人本人の再就職や次の在留手続きが進めやすくなります。


6.特定技能・技能実習では特別な届出を確認する

在留資格「特定技能」や「技能実習」の外国人が退職・離職する場合には、一般的な就労系在留資格とは異なる届出や対応が必要になることがあります。

6-1.特定技能外国人が退職する場合

特定技能所属機関は、特定技能雇用契約を終了した場合などに、出入国在留管理庁への届出が必要です。

また、会社都合による解雇、事業上の事情、本人の行方不明などにより、特定技能外国人の受入れ継続が困難となった場合には、受入れ困難に係る届出が必要になることがあります。

退職理由や経緯によって必要な手続きが異なるため、次の事項を確認します。

  • 特定技能雇用契約の終了に関する届出
  • 受入れ困難に係る届出
  • 登録支援機関への連絡
  • 支援計画に基づく必要な支援
  • 会社都合の場合の転職支援
  • 外国人雇用状況届出

特定技能雇用契約の終了等に関する手続きは、出入国在留管理庁「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」をご確認ください。

6-2.技能実習生が離職する場合

技能実習は、通常の雇用契約だけでなく、技能実習計画、監理団体、実習実施者、外国人技能実習機構などが関係する制度です。

技能実習生が自己都合で退職を希望する場合、実習の継続が困難になった場合、会社が事業を継続できなくなった場合などには、監理団体や外国人技能実習機構への連絡・届出、転籍の可否、帰国または他の在留資格への変更などを個別に確認する必要があります。

特定技能・技能実習については、一般的な外国人社員の退職と同じ処理だけで終わらせないことが重要です。


7.退職時の在留カード・個人情報の取扱い

在留カードは外国人本人に交付された身分証明書であり、会社が保管するものではありません。会社が退職時に在留カードの原本を回収したり、返却を求めたりすることはできません。

会社が在留期限管理などのために在留カードの写しを保管していた場合には、社内の個人情報管理規程や文書保存規程に従って、退職後の保管の必要性を確認します。

退職時には、次の点も整理しておくとよいでしょう。

  • 在留カードの原本を会社が預かっていないか確認する
  • 在留カードの写しを保管する目的が退職後も残るか確認する
  • 不要となった写しや管理データを適切に廃棄・削除する
  • 閲覧できる担当者を限定する
  • 退職後に必要書類を送付できる住所・連絡先を確認する
  • 本人の同意なく、在留資格や退職理由を社内外へ広く開示しない

外国人社員の在留期限管理については、「外国人社員の在留期限管理を会社で行う方法」もご参照ください。


8.外国人社員の退職時チェックリスト

外国人社員が退職する場合、会社側では次の項目を確認すると、手続き漏れを防ぎやすくなります。

確認項目チェック
退職日と退職理由を確認した
退職届、退職合意書等を確認した
最終給与、残業代、未払い賃金を精算した
社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを確認した
外国人雇用状況届出の方法と期限を確認した
本人に所属機関に関する届出を案内した
本人の在留資格と在留期限を確認した
退職証明書、源泉徴収票、離職票等を準備した
社員証、パソコン、鍵、制服等の貸与物を回収した
社宅の退去日や退職後の連絡先を確認した
在留カードの写しなどの個人情報の取扱いを確認した
特定技能・技能実習などの特別な届出を確認した

9.まとめ

外国人社員の退職時には、通常の労務手続きに加えて、外国人雇用状況届出や、本人による所属機関に関する届出を確認する必要があります。

会社が行う外国人雇用状況届出と、外国人本人が行う所属機関に関する届出は、提出先も届出義務者も異なる手続きです。両者を混同しないように注意してください。

また、就労系在留資格の外国人にとって、退職は在留資格の基礎となる活動が終了する重要な事情です。退職しただけで直ちに在留資格を失うわけではありませんが、再就職、在留資格変更、在留期間更新などを本人が適切に検討する必要があります。

会社としても、退職証明書や源泉徴収票などを適切に交付し、必要な届出を案内しておくことが望まれます。

特定技能や技能実習については、受入機関側に追加の届出・対応が必要になることがあるため、一般的な退職手続きだけで処理しないことが重要です。


10.在留資格・外国人雇用のご相談

外国人社員の退職に伴う入管上の届出、退職後の在留資格、在留期間更新・在留資格変更、特定技能所属機関としての手続きなどは、外国人本人の在留資格や退職理由によって必要な対応が異なります。

会社が行う手続きと外国人本人が行う手続きを整理したい場合や、退職後の在留資格について判断に迷う場合は、申請取次行政書士が在籍する行政書士TMY総合法務事務所までご相談ください。

個別の状況を確認したうえで、必要な届出や在留手続き、準備すべき資料を整理してご案内します。

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