14.申請中に転職・退職・結婚・離婚があった場合の対応

在留資格申請を提出した後、審査結果が出るまでの間に、転職、退職、結婚、離婚などの事情変更が起きることがあります。

申請中に重要な事情が変わった場合、申請時に提出した内容と現在の実態が合わなくなる可能性があります。

特に、申請の前提となっていた雇用関係や婚姻関係が変わった場合には、審査結果にも影響することがあります。

この記事では、在留資格申請中に転職・退職・結婚・離婚などがあった場合に、何を確認し、どのように対応すべきかを整理します。

1.申請中の事情変更は放置しない

入管申請では、申請時点の事情だけでなく、審査中の状況も重要です。

申請中に次のような変化があった場合には、提出済みの申請内容との関係を確認する必要があります。

  • 転職した
  • 退職した
  • 新しい勤務先が決まった
  • 配属先や職務内容が変わった
  • 雇用条件や報酬額が変わった
  • 会社名や所在地が変わった
  • 結婚した
  • 離婚又は死別した
  • 配偶者と別居した
  • 子どもが生まれた
  • 収入や扶養関係が大きく変わった
  • 住所や連絡先が変わった

変更内容が申請の審査に関係する場合、何も説明せずに審査を継続すると、申請書類と現在の実態が一致しない状態になります。

事情変更があったからといって、すべての申請を取り下げる必要があるわけではありません。ただし、変更内容によっては、追加資料の提出、申請内容の見直し、申請の取下げ及び再申請などを検討する必要があります。

2.法定の届出と申請中の変更説明は別の手続き

申請中に転職・退職・離婚などがあった場合、次の二つを分けて考えることが重要です。

手続き主な内容
法律上の届出所属機関や配偶者関係などの変更について、対象者が期限内に行う届出
申請中の変更説明審査中の申請内容と現在の実態を一致させるため、申請先の入管へ事情や資料を追加提出する対応

たとえば、転職に伴う所属機関に関する届出を行っただけで、審査中の更新申請や変更申請について勤務先変更の説明まで完了するとは限りません。

反対に、審査担当部門へ新しい雇用契約書を提出しただけで、法律上必要な所属機関に関する届出を行ったことになるとも限りません。

それぞれ提出目的が異なるため、法定の届出と審査中の申請への対応を別々に確認する必要があります。

所属機関に関する届出の対象や方法については、出入国在留管理庁の「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」をご確認ください。

3.転職・退職があった場合

「技術・人文知識・国際業務」など、会社等との契約又は所属関係に基づいて活動する在留資格では、転職や退職があった場合、所属機関に関する届出が必要になることがあります。

対象となる中長期在留者は、退職、転職、契約終了、新たな契約締結などの届出事由が生じた日から14日以内に届出を行う必要があります。

ただし、在留資格によって「所属(契約)機関に関する届出」と「所属(活動)機関に関する届出」のどちらが必要になるかが異なります。

いずれも出入国在留管理庁の公式案内です。

申請中に転職・退職した場合には、次の点を整理します。

確認項目確認する内容
前職の退職日いつ雇用契約・所属関係が終了したか
新しい勤務先新たな勤務先や契約機関が決まっているか
入社予定日いつから新しい仕事を始める予定か
業務内容現在又は申請中の在留資格に合っているか
雇用条件報酬、雇用期間、勤務時間等が変わっていないか
所属機関の届出14日以内の届出が必要か
申請中の内容提出済みの申請内容と現在の実態が一致しているか
追加資料新しい雇用契約書、会社資料、説明書等が必要か
申請の継続現在の申請を継続できるか、取下げ・再申請が必要か

3-1.在留期間更新申請中に転職した場合

前の勤務先を前提として在留期間更新許可申請を行い、その審査中に転職した場合には、新しい勤務先、職務内容、雇用条件等を申請先の入管へ説明する必要が生じることがあります。

転職後の仕事内容が現在の在留資格の範囲内であっても、新しい勤務先の会社資料や雇用契約書等について改めて審査される可能性があります。

外国人社員が転職した場合の在留資格上の確認事項については、「4.外国人社員が転職した場合、在留資格はそのままでよいのか」をご参照ください。

3-2.在留資格変更申請中に退職した場合

就職先での活動を前提として在留資格変更許可申請を行った後、その会社を退職した場合には、申請の前提となっていた雇用関係が失われる可能性があります。

新しい勤務先が決まった場合でも、会社名だけを差し替えればよいとは限りません。新しい仕事内容、本人の学歴・職歴、会社の事業内容、雇用条件などについて、改めて確認を受ける必要があります。

申請内容の根幹が変わる場合には、現在の申請を継続するのか、いったん取り下げて新しい内容で申請するのかを、申請先の入管に確認することが重要です。

3-3.在留資格によっては転職前の申請が必要になる

「技術・人文知識・国際業務」などでは、転職後の活動が現在の在留資格の範囲内であれば、在留資格変更が不要となる場合があります。

一方、次のような在留資格では、勤務先や所属機関の変更が在留資格の前提に直接関係することがあります。

  • 高度専門職
  • 特定技能
  • 企業内転勤
  • 勤務先等が指定された特定活動
  • その他、所属機関や活動先が限定されている在留資格

これらの在留資格では、所属機関に関する届出だけでなく、転職前又は新しい活動を始める前に在留資格変更許可申請等が必要になることがあります。

在留資格名だけで判断せず、新しい勤務先で予定する活動を開始できるかを個別に確認してください。

4.退職した場合は在留資格が直ちに失効するのか

外国人が会社を退職しても、その日に在留資格や在留カードが当然に失効するわけではありません。

ただし、就労系在留資格は、その在留資格に対応する活動を行うことを前提としています。正当な理由なく、その活動を一定期間継続して行っていない場合には、在留資格取消しの対象となる可能性があります。

退職後に求職活動をしていること、病気や家庭事情があることなど、活動を行っていないことについて正当な理由があるかどうかは、個別の事情により判断されます。

したがって、「退職後3か月が経過すれば必ず在留資格が取り消される」という意味ではありませんが、何もしないまま在留し続けてよいという意味でもありません。

(出典:在留資格の取消し 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

退職時に会社と外国人本人が確認すべき手続きについては、「Ⅰ-17.外国人社員の退職時に会社が確認すべき入管・労務手続き」で詳しく解説しています。

5.結婚した場合

申請中に結婚した場合、現在の申請内容に影響することがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 留学生が就労資格への変更申請中に日本人と結婚した
  • 就労資格の更新申請中に日本人又は永住者と結婚した
  • 家族滞在の申請中に婚姻関係が成立した
  • 配偶者を呼び寄せる認定申請中に追加の婚姻証明書を取得した
  • 永住申請中に結婚し、世帯構成や扶養関係が変わった

結婚したからといって、現在の在留資格が自動的に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」に変わるわけではありません。

現在の就労資格等でそのまま在留することもできますが、配偶者としての在留資格への変更を希望する場合には、別途、在留資格変更許可申請が必要です。

申請中の手続きをそのまま継続するのか、配偶者としての在留資格へ変更するのかは、今後の活動、就労予定、婚姻生活、在留期限などを踏まえて検討します。

国際結婚と在留資格の基本については、「Ⅱ-03.国際結婚と在留資格申請で注意すべきポイント」をご参照ください。

また、結婚により氏名、国籍・地域など在留カードの記載事項が変わった場合には、別途、在留カードの記載事項変更に関する手続きが必要になることがあります。

詳しくは、「16.在留カードの氏名・住所・所属機関変更手続き」をご確認ください。

6.離婚・死別した場合

配偶者としての身分に基づく在留資格で在留している方が、配偶者と離婚又は死別した場合には、原則として、その日から14日以内に配偶者に関する届出を行う必要があります。

対象となるのは、次の在留資格を有する中長期在留者のうち、配偶者として在留している方です。

  • 家族滞在
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等

(出典:配偶者に関する届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

申請中に離婚・死別があった場合には、次の点を整理します。

  • 配偶者に関する届出が必要か
  • 申請の前提となる婚姻関係が失われたか
  • 更新申請又は変更申請をそのまま継続できるか
  • 別の在留資格への変更を検討する必要があるか
  • 子どもがいる場合の親権、監護・養育状況
  • 離婚後の仕事、収入、住居等の生活基盤
  • 日本での在留歴や婚姻生活の経緯
  • DVなど、離婚・別居に至った事情があるか

離婚又は死別によって、現在の在留資格がその日に当然に失効するわけではありません。

しかし、配偶者としての在留資格の基礎となる関係が失われるため、日本での在留を希望する場合には、就労資格、定住者その他の在留資格への変更可能性を早めに検討する必要があります。

離婚・別居後の在留資格については、「Ⅱ-06.離婚・別居した場合、在留資格はどうなるのか」で詳しく解説しています。

6-1.別居と離婚・死別は分けて考える

配偶者との別居は、離婚や死別とは異なり、それ自体が「配偶者に関する届出」の届出事由ではありません。

ただし、配偶者ビザの申請又は更新申請中に別居した場合には、婚姻生活の実態に関係するため、別居の理由、開始時期、現在の交流状況、生活費の負担、今後の予定などの説明が必要になることがあります。

別居の事実を隠したまま、同居しているような説明をすることは避けなければなりません。

7.申請の種類によって影響が異なる

事情変更が申請に与える影響は、申請の種類によって異なります。

申請の種類事情変更による主な影響
在留期間更新許可申請現在の活動や身分関係を継続できるかが問題になる
在留資格変更許可申請変更後に予定していた活動や身分関係が成立するかが問題になる
在留資格認定証明書交付申請受入機関、雇用契約、婚姻・扶養関係等が変わると、申請の前提が変わることがある
永住許可申請転職、収入減少、離婚、扶養関係の変更等が、許可要件や特例の適用に影響することがある

たとえば、配偶者としての関係を前提とする更新申請中に離婚した場合や、就職先を前提とする変更申請中にその雇用契約が終了した場合には、申請の重要な前提が失われる可能性があります。

また、在留資格認定証明書交付申請中に受入れ企業が変わった場合、通常は新しい会社の資料や新しい雇用条件について改めて審査を受ける必要があります。単純に受入機関名だけを変更できるとは限りません。

8.入管へ説明する場合に整理する内容

次のような場合には、申請先の入管へ事情を説明する必要性が高くなります。

  • 申請書の記載内容と現在の事実が変わった
  • 申請の前提となる雇用関係がなくなった
  • 新しい勤務先や職務内容が決まった
  • 申請の前提となる婚姻関係が変わった
  • 収入や扶養状況が大きく変わった
  • 会社の名称、所在地、事業内容等が変わった
  • 追加資料として提出する内容に影響が生じた
  • 住所、電話番号、メールアドレス等が変わった

説明する場合には、次の事項を整理します。

  • 変更内容
  • 変更が生じた日
  • 変更理由
  • 申請時の内容との違い
  • 現在の状況
  • 今後の予定
  • 申請を継続したい理由
  • 添付する証明資料

主な添付資料としては、次のようなものが考えられます。

  • 退職証明書
  • 新しい雇用契約書・労働条件通知書
  • 新しい勤務先の登記事項証明書や会社案内
  • 職務内容説明書
  • 婚姻証明書
  • 離婚届受理証明書、戸籍謄本等
  • 住民票
  • 収入や扶養関係を示す資料
  • 事情変更を説明する理由書
  • 所属機関又は配偶者に関する届出の控え

入管から追加資料を求められた場合の対応については、「Ⅴ-6.入管から追加資料を求められた場合の対応」をご参照ください。

9.申請を継続するか、取り下げて再申請するか

事情変更があった場合の対応は、主に次のように分かれます。

  • 現在の申請をそのまま継続する
  • 変更内容を説明し、追加資料を提出して申請を継続する
  • 現在の申請を取り下げ、新しい内容で申請する
  • 別の在留資格への変更申請を検討する

どの対応が適切かは、変更内容が申請の中心的な前提に関係するかどうかによって変わります。

特にオンライン申請では、申請後に画面上で申請内容を自由に変更することはできません。出入国在留管理庁は、申請を受け付けた地方出入国在留管理官署へ連絡し、内容に応じて、申請を取り下げた上で改めて申請するか、申請を継続して書面で資料を提出するなどの対応を案内しています。

(出典:オンラインでの申請手続に関するQ&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

自己判断で新しい申請を重ねたり、元の申請を放置したりせず、受付番号を確認したうえで申請先へ相談することが重要です。

10.会社側が確認すべき届出

外国人社員が申請中に転職・退職した場合、外国人本人の入管への届出とは別に、会社側の手続きも確認する必要があります。

外国人を雇い入れた事業主及び外国人が離職した事業主には、原則として、ハローワークへの外国人雇用状況届出が必要です。

この届出は、外国人本人が行う所属機関に関する届出とは、届出義務者、提出先及び目的が異なります。

(出典:外国人雇用状況の届出について 厚生労働省ウェブサイトより)

詳しくは、「Ⅰ-18.外国人雇用状況届出とは?会社が忘れてはいけない届出」をご参照ください。

特定技能、技能実習などでは、受入機関側に別の届出や対応が必要になることがあります。一般的な外国人雇用状況届出だけで手続きを終わらせないよう注意してください。

11.申請中に在留期限が来る場合

転職・退職・結婚・離婚などへの対応を検討している間に、現在の在留期限が来ることがあります。

在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請を在留期限までに行っている場合には、一定の特例期間が認められることがあります。

ただし、申請の前提となる事情が変わったからといって、特例期間中に新しい在留資格の活動を自由に始められるわけではありません。

現在認められている活動、新しい勤務先で予定する活動、申請中の在留資格、特例期間の関係を確認する必要があります。

詳しくは、「13.在留資格申請中に在留期限が来た場合の扱い」をご確認ください。

12.よくある注意点

申請中の事情変更では、次の点に注意が必要です。

  • 申請中だから転職や結婚などは一切できないと思っている
  • 事情変更があっても、入管から聞かれるまで説明しなくてよいと考えている
  • 所属機関に関する届出をすれば、申請中の変更説明も完了すると誤解している
  • 申請先へ資料を提出すれば、14日以内の届出は不要だと誤解している
  • 転職後の仕事内容が現在の在留資格に合うか確認していない
  • 退職によって申請の前提が失われたことを説明していない
  • 新しい勤務先の資料を提出していない
  • 結婚すれば在留資格が自動的に配偶者ビザへ変わると思っている
  • 離婚又は死別後の配偶者に関する届出を忘れている
  • 別居と離婚を同じ届出手続きと考えている
  • 申請内容と現在の実態が食い違っている
  • 収入減少や無職期間を説明していない
  • オンライン申請の内容を画面上で修正できると思っている
  • 申請中の住所や連絡先を変更したのに、申請先へ連絡していない
  • 申請を取り下げないまま、同じ内容の申請を重ねている

事情変更を隠したり、申請時の内容に合わせるために事実と異なる資料を提出したりしてはいけません。

変更後の事実関係を整理し、提出済みの申請書類との違いを明確に説明することが重要です。

13.在留資格申請中の事情変更に関するご相談

在留資格申請中に転職、退職、結婚、離婚などがあった場合、法定の届出だけで足りるのか、申請先への追加説明が必要なのか、現在の申請を継続できるのかを判断する必要があります。

特に、申請の前提となる雇用関係や婚姻関係が変わった場合、在留期限が近い場合、新しい勤務先での就労開始を予定している場合には、早めの確認が重要です。

行政書士TMY総合法務事務所では、申請中の事情変更に伴う届出の整理、申請への影響の確認、追加資料・理由書の作成、申請の継続・取下げ・再申請についてご相談を承ります。

相談方法等の詳細は、以下のお問い合わせページをご確認ください。

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14.まとめ

在留資格申請中に転職・退職・結婚・離婚があった場合には、申請内容と現在の実態が一致しているかを確認する必要があります。

特に重要なポイントは、次のとおりです。

  • 申請中の重要な事情変更を放置しない
  • 法定の届出と申請中の変更説明を分けて考える
  • 転職・退職では所属機関に関する届出の要否を確認する
  • 新しい勤務先での仕事内容が現在の在留資格に合うか確認する
  • 結婚しても在留資格は自動的に変わらない
  • 離婚・死別した場合は、対象者について14日以内の配偶者に関する届出を確認する
  • 申請の前提が変わった場合は、追加資料、取下げ、再申請等を検討する
  • オンライン申請の内容は、申請後に画面上で自由に変更できない
  • 会社側は外国人雇用状況届出や在留資格ごとの手続きを確認する
  • 在留期限が近い場合は、特例期間と新しい活動の関係を確認する

事情変更の内容によって必要な対応は異なります。

変更内容、発生日、現在の状況、申請への影響を整理し、必要に応じて申請先の入管へ説明することが大切です。

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