8. 特定技能と技術・人文知識・国際業務の違い

Ⅰ 外国人雇用・就労ビザ

外国人を雇用する際に、企業が迷いやすい在留資格に、**「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」**があります。

どちらも外国人が日本で働くための在留資格ですが、対象となる業務、必要な要件、働ける分野、在留期間、家族帯同の可否などに違いがあります。

特に、宿泊、外食、製造、介護、建設、自動車整備などの分野では、どちらの在留資格を検討すべきか迷う場面があります。

この記事では、特定技能と技術・人文知識・国際業務の違いを、企業向けにわかりやすく整理します。


基本的な違い

大きく整理すると、次のようになります。

項目技術・人文知識・国際業務特定技能
主な対象専門的・技術的なホワイトカラー業務人手不足分野の現場業務を含む業務
分野制限業種自体の限定は比較的少ない特定産業分野に限定
主な要件学歴・職歴と業務内容の関連性技能試験・日本語試験等
単純作業原則として対象外分野内で一定の現場業務が対象
家族帯同一定の場合に可能1号は原則不可、2号は可能
支援計画原則不要1号では支援計画が必要
代表例IT、通訳、翻訳、貿易、企画介護、外食、宿泊、建設、製造など

出入国在留管理庁は、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」の違いについて、両者の対象業務の考え方を整理した資料を公表しています。


技術・人文知識・国際業務とは

「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や技術、または外国の文化に基づく思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。

代表的な業務には、次のようなものがあります。

  • ITエンジニア
  • 機械・電気設計
  • 経理・財務
  • 法務
  • 経営企画
  • マーケティング
  • 通訳・翻訳
  • 海外営業
  • 貿易業務
  • デザイン
  • 語学指導

重要なのは、実際の仕事内容が専門的な業務であることです。

たとえば「ホテル勤務」であっても、海外向けマーケティング、外国人顧客対応、通訳翻訳、企画業務などであれば検討余地があります。
一方、客室清掃、配膳、ベッドメイク、単純な接客業務が中心であれば、技人国では説明が難しい場合があります。


特定技能とは

「特定技能」は、人材確保が困難な特定産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格です。

特定技能には、特定技能1号特定技能2号があります。

特定技能1号は、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定技能2号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。出入国在留管理庁は、特定技能の概要や申請書類を在留資格別に案内しています。

特定技能では、技能試験や日本語試験の合格、または技能実習からの移行などが問題になります。

また、特定技能1号では、受入れ機関による支援計画や、登録支援機関の関与が重要になる場合があります。


どちらを選ぶべきか

どちらの在留資格を検討すべきかは、業種名ではなく、実際の仕事内容によって判断します。

仕事内容検討しやすい在留資格
システム開発技術・人文知識・国際業務
海外営業・貿易技術・人文知識・国際業務
通訳・翻訳技術・人文知識・国際業務
外食店舗での調理・接客特定技能を検討
宿泊施設でのフロント・接客等内容により特定技能または技人国を検討
介護現場での介護業務特定技能または介護等を検討
工場での製造業務特定技能を検討
建設現場の作業特定技能を検討
経営企画・マーケティング技術・人文知識・国際業務

たとえば、同じ宿泊業でも、ホテルの海外向け営業やマーケティングであれば技人国を検討することがあります。
一方、フロント、接客、レストランサービス、客室清掃など、現場業務を広く担当する場合には、特定技能が問題になることがあります。


学歴要件と技能試験の違い

技人国では、本人の学歴・職歴と業務内容の関連性が重要です。

大学や専門学校で学んだ内容、または実務経験が、採用後の業務と関係しているかを説明する必要があります。

一方、特定技能では、原則として、分野ごとの技能試験と日本語試験、または技能実習2号良好修了などによって、必要な技能・日本語能力を確認します。

つまり、技人国は学歴・職歴と専門業務の関連性、特定技能は分野ごとの技能水準と日本語能力が重要になると整理できます。


企業側の負担の違い

企業側の負担にも違いがあります。

技人国では、主に次の点を整理します。

  • 職務内容
  • 本人の学歴・職歴との関連性
  • 雇用契約
  • 報酬水準
  • 会社の事業実態
  • 採用理由

特定技能では、これに加えて、次のような点が問題になります。

  • 特定産業分野に該当するか
  • 分野別の要件を満たすか
  • 支援計画の作成
  • 生活オリエンテーション
  • 相談対応体制
  • 登録支援機関への委託の要否
  • 協議会加入など分野別の手続き

そのため、特定技能は、技人国とは異なる制度運用や受入体制の確認が必要になります。


よくある誤解

特定技能と技人国については、次のような誤解が見られます。

  • 技人国ならどの業務でも正社員採用できる
  • 外国語を使えば技人国になる
  • 大学卒業者なら現場作業でも技人国でよい
  • 特定技能は単純労働なら何でもよい
  • 特定技能ならどの業種でも使える
  • 技能実習からは必ず特定技能へ移行できる
  • 特定技能の支援体制を整えなくてもよい
  • 職種名だけで在留資格を選んでいる

どちらの在留資格も、単に人手不足を補うために自由に使えるものではありません。
業務内容、本人の要件、会社の受入体制を確認することが必要です。


まとめ

「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」は、どちらも外国人雇用で重要な在留資格ですが、性質は大きく異なります。

技人国は、専門的・技術的な知識や国際業務に関する仕事を想定しています。
特定技能は、人材確保が困難な特定産業分野で、一定の技能を持つ外国人を受け入れる制度です。

企業が確認すべきポイントは、次のとおりです。

  • 予定業務が専門的業務か、現場業務か
  • 業種が特定技能の対象分野に入るか
  • 本人の学歴・職歴で技人国を説明できるか
  • 技能試験・日本語試験など特定技能の要件を満たすか
  • 会社に必要な受入体制があるか
  • 支援計画や登録支援機関の要否を確認しているか

外国人を採用する際には、職種名ではなく、実際の仕事内容から在留資格を検討することが重要です。


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