外国人を採用する場合、企業と本人の双方が採用に合意していても、在留資格の申請が必ず許可されるとは限りません。
特に就労系の在留資格では、仕事内容、本人の学歴・職歴、会社の事業実態、雇用条件などが総合的に確認されます。
この記事では、外国人雇用で不許可になりやすいケースと、申請前に確認しておきたい対策を整理します。
不許可になりやすい理由は一つではない
在留資格申請が不許可になる理由は、単に書類が足りないというだけではありません。
代表的には、次のような理由が考えられます。
- 仕事内容が在留資格に合っていない
- 本人の学歴・職歴と業務内容に関連性がない
- 単純作業や現場作業が主な業務になっている
- 会社の事業実態が不十分
- 雇用条件が適切でない
- 報酬水準が低い
- 申請内容と実際の活動に矛盾がある
- 過去の在留状況に問題がある
- 税金・社会保険関係に問題がある
- 説明資料が不足している
特に「技術・人文知識・国際業務」では、出入国在留管理庁が不許可事例を含む資料を公表しており、主たる業務が荷物運搬、客室清掃、配膳、駐車誘導などである場合に不許可とされた例が示されています。
ケース1:仕事内容が在留資格に合っていない
最も多い問題の一つが、仕事内容と在留資格の不一致です。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」で申請しているにもかかわらず、実際の業務が次のような内容である場合には注意が必要です。
- 工場ライン作業
- 倉庫内作業
- 清掃
- 配膳
- 皿洗い
- レジ打ち
- 商品の陳列
- 配送補助
- 調理補助
- 客室清掃
これらの業務がすべて外国人に認められないという意味ではありません。
ただし、「技術・人文知識・国際業務」として説明することは難しい場合があります。
このような場合には、特定技能、技能、介護、身分系在留資格など、別の在留資格を検討すべきことがあります。
ケース2:職種名だけで説明している
申請書や雇用契約書に「通訳」「マーケティング」「海外営業」「事務」と記載していても、それだけでは十分ではありません。
入管手続きでは、実際の仕事内容が確認されます。
たとえば、次のようなケースは注意が必要です。
| 職種名 | 実際の業務 | 問題点 |
|---|---|---|
| 通訳 | ほとんど通訳業務がない | 業務量の説明が難しい |
| 海外営業 | 国内店舗での接客中心 | 国際業務性が弱い |
| マーケティング | 商品陳列・販売補助中心 | 専門業務といえない可能性 |
| 事務 | 単純入力作業中心 | 専門性の説明が必要 |
| 総合職 | 配属先・業務内容が不明 | 活動内容が不明確 |
対策としては、職務内容説明書を作成し、具体的な業務内容、業務割合、使用する知識・語学力、担当部署、取引先などを整理することが重要です。
ケース3:学歴・職歴と業務内容の関連性が弱い
「技術・人文知識・国際業務」では、本人の学歴・職歴と業務内容との関連性が重要です。
たとえば、情報工学を学んだ人がシステム開発を行う場合は説明しやすい一方、専攻とまったく関係のない業務に従事する場合には、関連性の説明が必要になります。
専門学校卒業者の場合は、専攻内容と業務内容との関連性がより重視されることがあります。
対策としては、次の資料を整理します。
- 卒業証明書
- 成績証明書
- 専攻内容の説明資料
- 職務経歴書
- 在職証明書
- 資格証明書
- 採用後の職務内容説明書
「何を学び、その知識を採用後の業務でどのように活かすのか」を説明できるようにすることが大切です。
ケース4:会社の事業実態が説明できない
外国人を雇用する企業側の実態も確認されます。
特に中小企業、設立間もない会社、赤字決算の会社では、次のような資料を通じて、事業の継続性や採用の必要性を説明することが重要です。
| 資料 | 説明する内容 |
|---|---|
| 会社案内 | 事業内容 |
| 登記事項証明書 | 会社の基本情報 |
| 決算書類 | 財務状況 |
| 取引契約書 | 取引の実態 |
| 請求書・発注書 | 業務量 |
| ホームページ | 事業の外部表示 |
| 組織図 | 配属部署 |
| 事業計画書 | 今後の展開 |
会社の規模が小さいこと自体が問題ではありません。
問題は、外国人を採用する必要性や、担当させる業務の実態を説明できないことです。
ケース5:報酬や雇用条件に問題がある
就労系在留資格では、報酬や雇用条件も確認されます。
特に「技術・人文知識・国際業務」では、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬を受けることが求められます。
注意すべき点は次のとおりです。
- 給与が著しく低い
- 雇用契約書がない
- 業務内容が曖昧
- 勤務時間が不明確
- 社会保険の扱いが不明確
- 同じ業務の日本人社員より条件が悪い
- 実際の勤務内容と契約書が異なる
対策として、雇用契約書や労働条件通知書を整備し、報酬水準や勤務条件を明確にしておくことが必要です。
ケース6:過去の在留状況に問題がある
本人側の過去の在留状況も確認されることがあります。
たとえば、次のような事情がある場合には、申請前に整理が必要です。
- 留学生時代の資格外活動時間超過
- 長期間の無職期間
- 転職後の届出漏れ
- 税金や社会保険の未納
- 交通違反や法令違反
- 過去の申請で不許可になった
- 申請内容と実際の活動に相違があった
問題がある場合でも、必ず不許可になるとは限りません。
ただし、事実関係を確認し、説明すべき事情があれば整理しておく必要があります。
事前対策として確認すべきこと
外国人雇用の申請前には、次のチェックを行うことが重要です。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留資格 | 予定業務に合う在留資格か |
| 業務内容 | 専門性・国際性を説明できるか |
| 学歴・職歴 | 業務との関連性があるか |
| 会社実態 | 事業内容・業務量を説明できるか |
| 雇用条件 | 報酬・勤務条件が適切か |
| 本人の在留状況 | 過去の違反や届出漏れがないか |
| 必要資料 | 会社資料・本人資料が整っているか |
| 理由書 | 採用理由や業務内容を説明できるか |
不許可を避けるためには、申請直前に書類をそろえるだけでなく、採用段階から在留資格との整合性を確認することが大切です。
よくある注意点
外国人雇用で不許可を招きやすい注意点は、次のとおりです。
- 採用を決めてから在留資格を確認している
- 職種名だけで判断している
- 実際の業務が単純作業中心になっている
- 本人の専攻と業務内容の関連性を説明できない
- 会社資料が不足している
- 報酬が日本人と同等額以上になっていない
- 理由書の内容が抽象的である
- 過去の在留状況を確認していない
- 在留期限直前に準備を始めている
まとめ
外国人雇用で不許可になりやすい原因は、仕事内容、本人の経歴、会社の実態、雇用条件、過去の在留状況など、複数の要素に関係します。
特に重要なのは、次の点です。
- 仕事内容が在留資格に合っているか
- 本人の学歴・職歴と業務内容に関連性があるか
- 会社に事業実態と採用の必要性があるか
- 報酬・雇用条件が適切か
- 申請内容と実際の活動が一致しているか
外国人を採用する場合には、内定前または雇用契約締結前の段階で、在留資格との関係を整理しておくことが重要です。
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