Ⅱ-15.日本人との子どもを養育する外国人親の在留資格

日本人と外国人の間に子どもがいる場合、外国人親の在留資格について相談を受けることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

・日本人と結婚し、日本人の子どもを育てている
・日本人配偶者と離婚したが、子どもを日本で養育している
・日本人配偶者が亡くなり、外国人親が子どもを育てている
・婚姻していない日本人との間に子どもが生まれた
・日本人父から認知された子どもを外国人母が養育している
・外国人親が日本で子どもを育て続けるための在留資格を知りたい

このような場合、外国人親の在留資格は、婚姻関係が続いているか、離婚しているか、子どもの国籍や親子関係がどうなっているか、実際に誰が子どもを養育しているかによって変わります。

日本人との子どもがいるからといって、外国人親が当然に日本に在留できるわけではありません。

しかし、日本人の子どもを日本で養育している事情は、在留資格の判断において重要な事情となります。

この記事では、日本人との子どもを養育する外国人親の在留資格について、婚姻中、離婚後、死別後、未婚で子どもを養育している場合に分けて解説します。

1.子ども本人の在留資格と外国人親の在留資格は別に考える

まず、子ども本人の在留資格と、外国人親の在留資格は別に考える必要があります。

子どもが日本国籍を持っている場合、その子ども自身には在留資格は必要ありません。

一方で、外国人親は外国籍ですので、日本に在留するためには、何らかの在留資格が必要です。

また、子どもが日本国籍を持っていない場合でも、日本人の実子又は特別養子である場合には、子ども本人について在留資格「日本人の配偶者等」を検討することがあります。

在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者、日本人の特別養子又は日本人の子として出生した人を対象とする在留資格です。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

ただし、この記事で中心に扱うのは、子ども本人ではなく、その子どもを養育する外国人親の在留資格です。

2.日本人と婚姻中であれば「日本人の配偶者等」を検討する

外国人親が日本人と法律上婚姻しており、夫婦としての実体がある場合には、通常、在留資格「日本人の配偶者等」を検討します。

この在留資格では、日本人の配偶者として日本で生活することが前提になります。

子どもがいることは、夫婦の生活実態や家族関係を示す重要な事情になります。

ただし、子どもがいるからといって、婚姻実体の確認が不要になるわけではありません。

申請では、次のような点が確認されます。

・日本人との法律上の婚姻が成立しているか
・夫婦としての実体があるか
・子どもとの親子関係
・同居状況
・生活費の負担
・日本での生活基盤
・過去の在留状況

在留資格「日本人の配偶者等」の提出書類では、日本人配偶者の戸籍謄本、外国側の結婚証明書、日本での滞在費用を証明する資料、身元保証書、住民票、質問書、夫婦間の交流資料などが案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

婚姻中で夫婦関係が継続している場合は、まず「日本人の配偶者等」を検討します。

3.離婚後は「日本人の配偶者等」のままではいられない

日本人配偶者と離婚した場合、外国人親は、もはや日本人の配偶者ではありません。

そのため、離婚後もそのまま「日本人の配偶者等」として在留し続けることはできません。

離婚した場合には、配偶者に関する届出も必要です。

出入国在留管理庁は、「日本人の配偶者等」など配偶者としての身分を有する中長期在留者が、配偶者と離婚又は死別した場合、その事由が生じた日から14日以内に届け出る必要があると案内しています。
(出典:配偶者に関する届出、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

離婚後に日本で在留を続けたい場合には、状況に応じて別の在留資格への変更を検討します。

日本人との子どもを養育している場合には、在留資格「定住者」への変更を検討することがあります。

4.日本人の子どもを養育する外国人親と「定住者」

日本人との間に生まれた子どもを外国人親が日本で養育している場合、離婚後や死別後に、在留資格「定住者」への変更を検討することがあります。

この分野では、「日本人の実子を扶養する外国人親」の取扱いが重要です。

出入国在留管理庁の資料では、日本人の実子を扶養する外国人親の取扱いについて、地方入国管理局長が諸般の事情を考慮して「定住者」と認めることが相当と判断した場合には本省に進達し、本省で個々に許否の判断を行う取扱いが説明されています。
(出典:資料編、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

実務上は、日本人の子どもを現に監護・養育している外国人親について、定住者への在留資格変更が問題になります。

ただし、日本人との子どもがいるだけで、当然に定住者が認められるわけではありません。

重要なのは、実際にその外国人親が子どもを監護・養育しているかどうかです。

5.確認されやすいポイント

日本人との子どもを養育する外国人親が「定住者」を検討する場合、次のような点が確認されます。

・子どもが日本人の実子であること
・子どもが未成年であること
・外国人親と子どもの親子関係
・外国人親が親権者又は監護者であること
・現に子どもを養育していること
・日本での養育実績
・子どもの生活状況、学校、保育園等
・日本人親との関係
・養育費の支払い状況
・外国人親の生活基盤
・素行や納税状況
・今後も日本で子どもを養育する必要性

特に重要なのは、「親であること」だけでなく、「実際に養育していること」です。

子どもと別居しており、養育実態がない場合には、定住者への変更が難しくなる可能性があります。

6.親権・監護権の整理

離婚後に外国人親が日本人の子どもを育てる場合、親権や監護権が問題になります。

確認すべき資料としては、次のようなものがあります。

・子どもの戸籍謄本
・親権者の記載が分かる戸籍
・離婚届受理証明書
・調停調書
・審判書
・判決書
・養育費に関する合意書
・監護状況を説明する資料

日本の戸籍に親権者が記載されている場合でも、実際に誰が子どもを養育しているかが問題になることがあります。

親権者であっても、子どもと別居し、養育実態がない場合は注意が必要です。

逆に、親権者ではない場合でも、実際に子どもを監護している事情がある場合には、個別に検討が必要です。

7.子どもの国籍と認知の問題

日本人との子どもであっても、子どもの国籍や認知の状況によって、必要な説明が変わります。

たとえば、婚姻中に出生した子どもであれば、日本人親との親子関係が戸籍上明確になっていることが多いです。

一方、婚姻していない日本人父と外国人母との間に生まれた子どもの場合、認知が問題になることがあります。

子ども本人が在留資格「日本人の配偶者等」を取得する場合にも、日本で出生した場合は出生届受理証明書や認知届受理証明書、海外で出生した場合は出生証明書や認知に係る証明書などが提出書類として案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の実子・特別養子である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

外国人親の在留資格を考える場合にも、子どもが日本人の実子であること、親子関係が明確であることは重要です。

8.養育実態を示す資料

日本人の子どもを養育していることを示すためには、客観的な資料が重要です。

たとえば、次のような資料が考えられます。

・子どもの住民票
・母子健康手帳
・保育園、幼稚園、学校の在園・在学証明書
・学校からの連絡書類
・通院記録
・健康保険証
・児童手当関係資料
・養育費の送金記録
・子どもとの同居を示す資料
・写真
・生活費の支出記録
・親子の日常生活を説明する理由書

単に「子どもを育てています」と説明するだけではなく、日常的に監護・養育していることを資料で示す必要があります。

9.生活費と収入の説明

子どもを養育する外国人親については、生活費の見通しも確認されます。

収入が十分でない場合でも、直ちに申請できないわけではありません。

しかし、子どもを養育しながら日本で生活していくための基盤を説明する必要があります。

準備する資料としては、次のようなものがあります。

・住民税課税証明書
・納税証明書
・在職証明書
・給与明細
・預貯金通帳の写し
・児童手当等の資料
・養育費の支払い記録
・親族援助の資料
・住居資料

在留資格「日本人の配偶者等」の提出書類でも、日本での滞在費用を証明する資料として、住民税課税証明書、納税証明書、預貯金通帳の写し、雇用予定証明書などが案内されています。
(出典:在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

定住者への変更でも、生活の安定性は重要な説明事項になります。

10.日本人親と連絡が取れない場合

日本人親と離婚後、連絡が取れない場合もあります。

この場合でも、外国人親が子どもを現に養育しているのであれば、申請を検討できることがあります。

ただし、日本人親との関係については、可能な範囲で説明する必要があります。

確認すべき点は、次のとおりです。

・離婚の経緯
・親権者
・養育費の有無
・面会交流の有無
・日本人親の所在
・連絡が取れない事情
・子どもの養育に日本人親が関与しているか

日本人親の協力が得られない場合でも、戸籍、住民票、学校資料、養育実態の資料などで補うことを検討します。

11.DVや家庭内トラブルがある場合

日本人配偶者との間にDVや家庭内トラブルがあり、外国人親が子どもを連れて避難している場合もあります。

この場合、単に「別居している」「夫婦関係が悪い」と見るのではなく、安全確保のための別居であること、子どもを養育していることを説明する必要があります。

FRESCにおける相談対応・連携事例では、「日本人の配偶者等」の在留資格で来日した人が配偶者から暴力を受けたケースについて、離婚後の在留申請手続やDV被害者に対して入管手続上配慮されることを説明した事例が紹介されています。
(出典:FRESCにおける相談対応・連携事例、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

DVがある場合には、入管手続だけでなく、安全確保、住居、子どもの保護、法律相談も重要になります。

12.短期滞在からの変更は慎重に考える

外国人親が短期滞在で来日し、日本人の子どもを養育するために在留資格変更を希望する場合もあります。

短期滞在から他の在留資格への変更は、原則として簡単ではありません。

入管法上、短期滞在からの在留資格変更は、「やむを得ない特別の事情」に基づくものでなければ許可しないものとされています。
(出典:出入国審査・在留審査Q&A、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

日本人の子どもを養育する必要がある場合でも、国内変更が認められるかは個別判断です。

在留期限が短い場合には、早急に資料を整理する必要があります。

13.在留資格変更のタイミング

日本人配偶者と離婚した場合、「日本人の配偶者等」の在留期限がまだ残っていることがあります。

しかし、離婚後は配偶者としての身分関係がなくなります。

そのため、在留期限が残っているからといって、何もしないままでよいわけではありません。

離婚後も日本で子どもを養育する場合には、早めに在留資格変更を検討する必要があります。

在留資格変更許可申請は、既にほかの在留資格で日本に滞在している人が、在留目的に変更があった場合に行う申請です。
(出典:在留資格変更許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)

特に、在留期限が迫っている場合は、資料準備に時間が足りなくなることがあります。

14.不許可になりやすいケース

日本人との子どもを養育する外国人親の申請で注意が必要なのは、次のようなケースです。

・子どもと同居していない
・養育実態がない
・親権や監護状況が不明確
・子どもを本国の親族に預けたままである
・日本で養育する具体的予定がない
・生活費をまかなう見通しがない
・日本人親との親子関係が不明確
・認知や戸籍の記載が整理されていない
・過去の在留状況に問題がある
・虚偽説明や資料の不整合がある

子どもがいるという事情は重要ですが、それだけで許可が保証されるわけではありません。

実際に日本で子どもを養育していること、又は今後確実に養育することを、資料で説明する必要があります。

15.まとめ

日本人との子どもを養育する外国人親の在留資格は、状況によって検討すべき在留資格が変わります。

日本人と婚姻中で、夫婦としての実体がある場合は、在留資格「日本人の配偶者等」を検討します。

離婚後や死別後に、日本人の子どもを日本で養育する場合には、在留資格「定住者」への変更を検討することがあります。

重要なのは、次の点です。

・子どもが日本人の実子であること
・外国人親との親子関係が明確であること
・外国人親が親権者又は監護者であること
・現に子どもを養育していること
・日本での養育実態を資料で示せること
・生活費や住居の見通しを説明できること
・離婚や死別の場合は、配偶者に関する届出や在留資格変更を検討すること
・DVや家庭内トラブルがある場合は、安全確保を優先すること

日本人の子どもを養育する外国人親の在留資格は、子どもの生活と将来に関わる重要な問題です。

形式的な親子関係だけでなく、実際の養育状況、生活基盤、子どもの利益を丁寧に整理して申請することが大切です。

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参考資料・出典

在留資格「日本人の配偶者等」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の配偶者である場合 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「日本人の配偶者等」・外国人の方が日本人の実子・特別養子である場合 出入国在留管理庁ウェブサイトより
配偶者に関する届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国審査・在留審査Q&A 出入国在留管理庁ウェブサイトより
資料編 出入国在留管理庁ウェブサイトより
FRESCにおける相談対応・連携事例 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より