在留資格「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」で日本に在留している外国人にとって、離婚や別居は在留資格に大きく関わる問題です。
相談でも、次のような質問がよくあります。
・日本人配偶者と離婚したら、すぐに帰国しなければなりませんか
・別居しただけで在留資格はなくなりますか
・在留期限がまだ残っている場合、そのまま日本にいてよいですか
・離婚後も日本で働き続けることはできますか
・日本人との子どもを育てている場合、在留資格はどうなりますか
・配偶者が亡くなった場合はどうすればよいですか
結論からいえば、離婚や別居があったからといって、直ちに不法滞在になるわけではありません。
しかし、配偶者としての身分関係に基づく在留資格である以上、離婚、死別、長期別居、夫婦関係の破綻がある場合には、届出や在留資格変更を検討する必要があります。
この記事では、離婚・別居した場合に在留資格がどうなるのか、届出義務、在留資格取消し、変更申請の可能性について解説します。
1.別居と離婚は区別して考える
まず、別居と離婚は区別して考える必要があります。
別居とは、夫婦が別々の場所で生活している状態です。
離婚とは、法律上の婚姻関係が終了することです。
別居しただけで、直ちに「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格が失われるわけではありません。
単身赴任、介護、病気、子どもの学校、住居事情、DVからの避難など、合理的な理由で別居している場合もあります。
一方で、離婚した場合は、もはや日本人又は永住者の配偶者ではありません。
そのため、離婚後も同じ在留資格のままで在留し続けることはできません。
2.離婚・死別した場合は14日以内の届出が必要
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」など、配偶者としての身分に基づく在留資格で在留している中長期在留者が、配偶者と離婚又は死別した場合には、届出義務があります。
出入国在留管理庁は、配偶者としての身分を有する中長期在留者が、配偶者と離婚又は死別した場合、その事由が生じた日から14日以内に届け出る必要があると案内しています。
(出典:配偶者に関する届出、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
届出方法としては、インターネット、窓口持参、郵送が案内されています。
(出典:配偶者に関する届出、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
別居しただけでは、この届出が必要になるわけではありません。
しかし、離婚又は死別した場合は、在留期限が残っていても届出が必要です。
3.離婚後も在留期限まではいられるのか
離婚したからといって、その瞬間に在留カードが無効になるわけではありません。
在留期限が残っている場合、その期間中に直ちに不法滞在になるわけではありません。
しかし、離婚後は、配偶者としての身分関係がなくなっているため、在留資格の基礎が失われています。
そのまま放置してよいわけではありません。
特に、離婚後も長期間何もしないまま在留している場合には、在留資格取消しや次回申請で問題になる可能性があります。
そのため、離婚後も日本に残りたい場合には、早めに別の在留資格への変更を検討する必要があります。
4.6か月以上、配偶者としての活動をしていない場合
日本人、永住者又は特別永住者の配偶者として在留資格を持つ外国人については、配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合、正当な理由がある場合を除き、在留資格取消しの対象となることがあります。
出入国在留管理庁の在留資格取消しに関する案内では、在留資格取消し制度の概要が説明されています。
(出典:在留資格の取消し、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
また、法務省入国管理局の資料では、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している場合でも、正当な理由がある場合には在留資格取消しを行わない例があることが説明されています。
(出典:配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
たとえば、DVから避難している、離婚調停中である、日本人の子どもを養育しているなど、個別事情によっては正当な理由が問題になります。
5.別居している場合に確認すべきこと
別居している場合には、次の点を整理します。
・いつから別居しているのか
・別居の理由
・単身赴任、介護、病気など合理的理由があるか
・夫婦関係は継続しているか
・連絡や面会はあるか
・生活費のやり取りはあるか
・今後同居する予定があるか
・離婚協議中か
・DVや家庭内トラブルがあるか
別居していること自体が問題なのではなく、夫婦としての実体があるかどうかが重要です。
単身赴任や介護による別居であれば、その資料を準備します。
一方、夫婦関係が破綻している場合には、在留資格変更を検討する必要があります。
6.離婚後に検討する在留資格
離婚後も日本で在留を続けたい場合には、別の在留資格への変更を検討します。
考えられる在留資格は、個別事情によって異なります。
たとえば、次のようなものです。
・定住者
・技術・人文知識・国際業務
・経営・管理
・留学
・特定活動
・永住者である場合は永住者のまま
日本人との子どもを日本で養育している場合には、定住者への変更を検討することがあります。
就労資格に該当する仕事、学歴、職歴、雇用先がある場合には、就労系在留資格への変更を検討します。
在留資格変更許可申請は、既にほかの在留資格で日本に在留している人が、在留目的に変更があった場合に行う申請です。
(出典:在留資格変更許可申請、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
7.日本人との子どもを養育している場合
離婚後も日本人との子どもを日本で養育している場合は、在留資格上重要な事情になります。
日本人の子どもを現に監護・養育している外国人親については、在留資格「定住者」への変更を検討することがあります。
出入国在留管理庁の資料では、日本人の実子を扶養する外国人親について、諸般の事情を考慮して「定住者」と認めることが相当と判断される場合があることが説明されています。
(出典:資料編、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
重要なのは、子どもがいることだけではありません。
実際に子どもを養育しているか、親権や監護状況、生活基盤があるかが問題になります。
8.DVや家庭内トラブルがある場合
DVや家庭内トラブルで別居している場合、単に「夫婦関係がない」と判断されるわけではありません。
安全確保のために別居している場合には、その事情を説明する必要があります。
FRESCにおける相談対応・連携事例では、「日本人の配偶者等」の在留資格で来日した人が配偶者から暴力を受けたケースについて、離婚後の在留申請手続やDV被害者に対して入管手続上配慮されることを説明した事例が紹介されています。
(出典:FRESCにおける相談対応・連携事例、出入国在留管理庁ウェブサイトより)
DVがある場合には、在留資格の不安だけで判断せず、安全確保を優先し、警察、配偶者暴力相談支援センター、自治体、弁護士、支援機関に相談することが重要です。
9.更新期限が近い場合
離婚や別居の状態で在留期限が近い場合は、特に注意が必要です。
夫婦関係が続いていないにもかかわらず、「日本人の配偶者等」として単純に更新することはできません。
在留期限までに、次の点を整理します。
・離婚が成立しているか
・別居の理由は何か
・夫婦関係は継続しているか
・子どもを養育しているか
・就労資格に変更できるか
・定住者への変更を検討できるか
・必要書類を準備できるか
在留期限直前では資料準備が間に合わないことがあります。
離婚や別居が生じた場合は、早めに相談することが大切です。
10.まとめ
離婚や別居があった場合でも、直ちに不法滞在になるわけではありません。
しかし、在留資格「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」は、配偶者としての身分関係に基づく在留資格です。
そのため、離婚、死別、長期別居、夫婦関係の破綻がある場合には、次の点を整理する必要があります。
・離婚又は死別した場合は14日以内に届出が必要
・別居だけでは届出義務はないが、理由の説明が重要
・6か月以上配偶者としての活動をしていない場合、在留資格取消しが問題になることがある
・離婚後は「日本人の配偶者等」のまま更新することはできない
・日本人の子どもを養育している場合、定住者を検討することがある
・就労資格に該当する場合は、就労系在留資格への変更を検討する
・DVがある場合は安全確保を最優先にする
離婚・別居後の在留資格は、個別事情によって判断が大きく変わります。
在留期限が残っているからといって放置せず、早めに今後の在留資格を整理することが重要です。
次に読みたい関連記事
・Ⅱ-5.配偶者ビザの更新で確認されるポイント
更新時に確認される婚姻実体や生活状況を解説しています。
・Ⅱ-12.夫婦が別居している場合の配偶者ビザ申請・更新の注意点
別居中の申請・更新について詳しく解説しています。
・Ⅱ-15.日本人との子どもを養育する外国人親の在留資格
日本人の子どもを養育する外国人親の在留資格を解説しています。
・Ⅱ-16.DV・家庭内トラブルがある場合の在留資格上の注意点
DVや家庭内トラブルがある場合の対応を解説しています。
・Ⅴ-16.在留カードの氏名・住所・所属機関変更手続き
在留中の届出や変更手続きについて確認できます。
参考資料・出典
・配偶者に関する届出 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格の取消し 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・資料編 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・FRESCにおける相談対応・連携事例 出入国在留管理庁ウェブサイトより
・出入国管理及び難民認定法 e-Gov法令検索より

