Ⅶ-5.企業内転勤と技術・人文知識・国際業務の違い

Ⅶ 高度人材・企業内転勤・グローバル人材

海外拠点から外国人社員を日本へ呼ぶ場合、よく比較される在留資格が「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」です。

どちらも、IT、設計、通訳、貿易、マーケティング、海外営業、管理部門業務など、専門的・技術的な業務で使われることがあります。

そのため、企業からは次のような相談を受けることがあります。

・海外子会社の社員を呼ぶ場合、企業内転勤と技人国のどちらですか
・企業内転勤なら学歴要件は不要ですか
・技術・人文知識・国際業務との一番大きな違いは何ですか
・海外拠点で1年未満の場合は技人国で呼べますか
・日本法人で直接雇用するなら技人国ですか
・将来的に日本勤務を長期化する場合、どちらがよいですか

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務は、似ている部分があります。

しかし、制度の前提は異なります。

企業内転勤は、海外拠点から日本拠点への「転勤」を前提とする在留資格です。

一方、技術・人文知識・国際業務は、日本の会社などとの契約に基づいて、専門的・技術的な業務を行う在留資格です。

この記事では、企業内転勤と技術・人文知識・国際業務の違いを、企業が外国人社員を受け入れる場面に沿って解説します。

共通点

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務には、共通点があります。

どちらも、日本で行う業務は、専門的・技術的な業務である必要があります。

たとえば、次のような業務です。

・ITエンジニア
・システム開発
・機械設計
・電気設計
・生産技術
・品質管理
・通訳、翻訳
・貿易実務
・海外営業
・マーケティング
・商品企画
・管理部門業務

企業内転勤であっても、日本で行う業務は「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動である必要があります。

したがって、単純作業や現場作業を主たる業務にすることはできません。

この点は、両者に共通する重要な注意点です。

企業内転勤とは

企業内転勤は、日本に本店、支店その他の事業所がある公私の機関の外国にある事業所の職員が、日本にある事業所へ期間を定めて転勤する場合の在留資格です。

出入国在留管理庁は、企業内転勤の該当例として、外国の事業所からの転勤者を挙げています。
(出典:在留資格「企業内転勤」 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

企業内転勤の主な特徴は、次のとおりです。

・海外拠点から日本拠点への転勤である
・転勤期間が定められている
・海外拠点で継続して1年以上勤務していることが重要
・日本で行う業務は技人国に該当する内容である
・日本人と同等額以上の報酬が必要
・会社間の関係を説明する必要がある

企業内転勤は、海外グループ内の人事異動を前提とする在留資格です。

技術・人文知識・国際業務とは

技術・人文知識・国際業務は、日本の公私の機関との契約に基づき、自然科学又は人文科学の分野に属する専門的な技術・知識を必要とする業務、又は外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。

出入国在留管理庁は、該当例として、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等を挙げています。
(出典:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

主な特徴は、次のとおりです。

・日本の会社などとの契約に基づく活動である
・本人の学歴、専攻、職歴と業務内容の関連性が重要
・日本での直接採用でも使われる
・海外在住者の新規採用でも使われる
・留学生の新卒採用でも使われる
・転職者の中途採用でも使われる
・日本人と同等額以上の報酬が必要

技術・人文知識・国際業務は、企業内転勤よりも一般的な専門職採用で使われることが多い在留資格です。

大きな違い

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務の違いを整理すると、次のようになります。

項目企業内転勤技術・人文知識・国際業務
前提海外拠点から日本拠点への転勤日本の会社等との契約に基づく専門業務
海外勤務歴原則として転勤前に継続1年以上の勤務が重要必須ではない
転勤期間期間を定める必要がある必ずしも転勤期間を定めるものではない
学歴・職歴要件海外拠点での勤務実績が重要学歴・職歴と業務内容の関連性が重要
会社間関係海外側と日本側の関係説明が重要日本の受入会社との契約が重要
典型例海外子会社社員の日本本社転勤日本企業による外国人専門職の採用
長期雇用転勤前提のため注意長期雇用と相性がよい場合が多い

最も大きな違いは、企業内転勤が「海外拠点からの転勤」を前提とするのに対し、技術・人文知識・国際業務は「日本の会社で専門的業務に従事すること」を前提とする点です。

海外勤務1年未満の場合

企業内転勤では、転勤直前に外国にある事業所で継続して1年以上勤務していることが重要です。

そのため、海外拠点で採用したばかりの社員をすぐ日本へ呼び寄せる場合には、企業内転勤の要件を満たさない可能性があります。

この場合、技術・人文知識・国際業務を検討することがあります。

ただし、技術・人文知識・国際業務で申請する場合には、本人の学歴・職歴と日本で行う業務との関連性が重要になります。

つまり、海外勤務1年未満だから自動的に技人国で認められる、というものではありません。

確認すべき点は、次のとおりです。

・本人の学歴
・専攻内容
・職歴
・日本での担当業務
・日本の会社との契約関係
・報酬水準
・会社の事業内容
・採用理由

企業内転勤が難しい場合でも、技術・人文知識・国際業務で可能かどうかを別途検討する必要があります。

長期的に日本で雇用する場合

企業内転勤は、期間を定めた転勤を前提とします。

そのため、最初から日本で長期的に雇用する予定であれば、技術・人文知識・国際業務の方が実態に合うことがあります。

たとえば、次のような場合です。

・日本法人で直接採用する
・日本勤務を無期限又は長期前提としている
・海外拠点へ帰任する予定がない
・日本法人の正社員として雇用する
・日本でのキャリア形成を予定している

一方、一定期間日本で業務を経験させ、その後海外拠点へ帰任させる予定であれば、企業内転勤が適している場合があります。

在留資格を選ぶ際には、形式ではなく、人事上の実態を確認することが重要です。

学歴・職歴要件の違い

技術・人文知識・国際業務では、本人の学歴・職歴と業務内容との関連性が重要です。

一方、企業内転勤では、海外拠点で一定期間勤務していたことが重要になります。

ただし、企業内転勤であっても、日本で行う業務は技術・人文知識・国際業務に該当する必要があります。

つまり、企業内転勤だから学歴や業務内容を全く確認しなくてよい、という意味ではありません。

企業内転勤では、特に次の点を確認します。

・海外拠点でどのような業務をしていたか
・日本でどのような業務をするか
・海外での業務と日本での業務につながりがあるか
・日本で行う業務が専門的・技術的な内容か

一方、技術・人文知識・国際業務では、次の点を重点的に確認します。

・大学又は専門学校の専攻
・職歴
・業務内容との関連性
・実務経験年数
・専門性

報酬要件は共通

企業内転勤でも、技術・人文知識・国際業務でも、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが重要です。

外国人であることを理由に、日本人より低い報酬を設定することはできません。

確認すべき点は、次のとおりです。

・基本給
・手当
・賞与
・給与支払者
・海外給与と日本給与の関係
・日本円換算額
・同種業務の日本人給与
・雇用契約書
・出向契約書

海外本社が給与を支払う場合でも、日本での活動に対応する報酬水準を説明できるようにしておく必要があります。

どちらを選ぶべきか

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務のどちらを選ぶべきかは、次のように考えると整理しやすくなります。

状況検討しやすい在留資格
海外拠点で1年以上勤務し、日本へ期間を定めて転勤する企業内転勤
日本法人で直接採用する技術・人文知識・国際業務
海外勤務歴が1年未満技術・人文知識・国際業務を検討
日本勤務が長期・無期限の予定技術・人文知識・国際業務を検討
海外拠点へ帰任予定がある企業内転勤を検討
学歴・職歴と業務内容の関連性を説明しやすい技術・人文知識・国際業務を検討
グループ内の一時的な人事異動企業内転勤を検討

実務上は、会社の人事制度、雇用契約、出向契約、転勤期間、本人の経歴、日本での業務内容を見て判断します。

まとめ

企業内転勤と技術・人文知識・国際業務は、どちらも専門的・技術的な業務で使われることがありますが、制度の前提が異なります。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・企業内転勤は、海外拠点から日本拠点への期間を定めた転勤を前提とする
・技術・人文知識・国際業務は、日本の会社等との契約に基づく専門的業務を前提とする
・企業内転勤では、海外拠点で継続して1年以上勤務していることが重要である
・技術・人文知識・国際業務では、本人の学歴・職歴と業務内容の関連性が重要である
・どちらも日本で行う業務は専門的・技術的な内容でなければならない
・単純作業や現場作業を主たる業務にすることはできない
・報酬は日本人と同等額以上である必要がある
・長期雇用か一時的な転勤かによって選択が変わる

海外拠点から外国人社員を日本へ呼ぶ場合は、企業内転勤と技術・人文知識・国際業務のどちらが実態に合うかを、採用・転勤の前に整理しておくことが重要です。

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・Ⅴ-1.在留資格申請が不許可になる主な理由と事前対策

参考資料・出典

在留資格「企業内転勤」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令 e-Gov法令検索より