5. 外国人社員が転職してきた場合、会社は何を確認すべきか|就労資格証明書の活用

Ⅰ 外国人雇用・就労ビザ

外国人社員を中途採用する場合、「現在の在留資格のまま自社で働けるのか」を確認する必要があります。

すでに日本で働いている外国人であっても、転職後の仕事内容が変わる場合には、現在の在留資格でそのまま働けるとは限りません。

このような場面で検討される手続きが、就労資格証明書交付申請です。

就労資格証明書は、外国人が現在持っている在留資格で、どのような就労活動を行うことができるかを証明する文書です。出入国在留管理庁も、外国人が行うことができる収入を伴う活動、または報酬を受ける活動を証明する文書として案内しています。
(出典:就労資格証明書交付申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

外国人社員の転職時に確認すべき在留資格、届出、在留期間更新・変更申請の全体像については、関連記事「外国人社員が転職した場合、在留資格はそのままでよいのか」もあわせてご参照ください。


1. 就労資格証明書とは

就労資格証明書とは、外国人本人が現在の在留資格で行うことができる就労活動の内容を、出入国在留管理庁が証明するものです。

出入国在留管理庁は、就労資格証明書について、日本に在留する外国人からの申請に基づき、その外国人が行うことのできる収入を伴う事業を運営する活動、または報酬を受ける活動を証明する文書と説明しています。
(出典:就労資格証明書(入管法第19条の2) 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

特に転職時には、次のような疑問が生じます。

・現在の在留資格で新しい会社の仕事ができるのか
・前職と仕事内容が少し違うが問題ないのか
・次回の在留期間更新で不許可にならないか
・採用してよいか企業側として確認したい
・本人の学歴・職歴と新しい業務内容に関連性があるか

このような場合に、就労資格証明書を取得しておくことで、現在の在留資格と転職後の仕事内容との関係を確認しやすくなります。

ただし、就労資格証明書は、新しい在留資格を付与するものではありません。

あくまで、外国人が現在持っている在留資格の範囲内で、新しい勤務先における活動を行うことができるかを証明するものです。

転職後の仕事が、現在の在留資格とは別の在留資格に該当する場合には、就労資格証明書ではなく、在留資格変更許可申請が必要になることがあります。
(出典:在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより)


2. 就労資格証明書は必ず必要か

就労資格証明書は、転職時に必ず取得しなければならないものではありません。

現在の在留資格と転職後の仕事内容が明らかに一致しており、在留期限にも余裕がある場合には、次回の在留期間更新時に転職後の会社資料を提出して審査を受けることもあります。

就労資格証明書は、外国人が転職する際の義務的な許可手続ではありません。

出入国在留管理庁の説明でも、就労資格証明書は、外国人が自らの就労資格を雇用主等に明らかにするための手段として位置付けられています。
(出典:就労資格証明書(入管法第19条の2) 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、就労資格証明書を提出しないことを理由に、外国人を不利益に取り扱うことは適切ではありません。

一方で、就労資格証明書を取得しないまま働き始めた場合、次回更新時に「転職後の仕事内容が在留資格に合わない」と判断される可能性もあります。

そのため、特に中途採用では、就労資格証明書を取得すべきかどうかを事前に検討することが大切です。

外国人を採用する前に企業が確認すべき在留資格の基本については、関連記事「外国人を採用する前に企業が確認すべき在留資格の基本」もご参照ください。


3. 取得を検討すべきケース

就労資格証明書の取得を検討すべき代表的なケースは、次のとおりです。

ケース検討すべき理由
転職後の仕事内容が前職と異なる現在の在留資格に合うか確認するため
職種名は同じでも業務内容が変わる実際の活動内容を確認するため
在留期限まで期間が長い次回更新まで不安定な状態を避けるため
企業側が採用前に確認したい雇用管理上のリスクを減らすため
学歴・職歴との関連性に不安がある更新時の不許可リスクを確認するため
業務内容が抽象的で説明しにくい職務内容を整理する必要があるため

特に「技術・人文知識・国際業務」の場合、職種名だけで判断することはできません。

実際の仕事内容が、専門的な知識や技術、国際業務に該当するかを確認する必要があります。

出入国在留管理庁は、「技術・人文知識・国際業務」について、自然科学又は人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務を対象としています。
(出典:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

たとえば、前職ではITシステムの設計・開発を担当していた外国人が、転職後はIT機器の営業だけを行う場合、職種名に「IT」が含まれていても、実際の業務内容を確認する必要があります。

同様に、前職では通訳・翻訳業務を行っていた外国人が、転職後は店舗での接客、品出し、レジ業務を中心に行う場合、現在の在留資格との関係で問題になる可能性があります。

「技術・人文知識・国際業務」の対象となる仕事・ならない仕事については、関連記事「外国人を営業・事務・IT・通訳で雇うには?技術・人文知識・国際業務を解説」もご参照ください。


4. 取得を急ぐより更新申請を優先すべき場合

転職時に在留期限が近い場合には、就労資格証明書ではなく、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を優先すべき場合があります。

たとえば、在留期限が数か月以内に迫っている場合、就労資格証明書を取得してから更新申請をする時間的余裕がないことがあります。

この場合には、転職後の会社資料、職務内容、雇用条件などを整理したうえで、在留期間更新許可申請を行うことが一般的です。在留期間更新許可申請では、日本での活動内容に応じた申請書・資料を提出する必要があります。
(出典:在留期間更新許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

在留期間が6か月以上の場合、在留期間更新許可申請は、原則として在留期間満了日の概ね3か月前から受け付けられます。
(出典:在留期間更新許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

また、転職後の活動自体が、現在の在留資格とは異なる在留資格に該当する場合は、在留期間更新許可申請ではなく、在留資格変更許可申請を検討します。

たとえば、現在の在留資格が「技術・人文知識・国際業務」である外国人が、転職後に日本で会社経営を行う場合には、「経営・管理」への変更が問題になることがあります。

在留資格の変更申請・更新申請・認定申請の違いについては、関連記事「認定申請・変更申請・更新申請で審査ポイントはどう違うのか」も参考になります。


5. 企業側が確認すべき資料

就労資格証明書を検討する場合、企業側では次のような資料を整理することが多くあります。

資料確認される内容
雇用契約書・労働条件通知書報酬、勤務時間、雇用期間、勤務地
職務内容説明書実際に担当する業務内容
会社案内事業内容、組織、取引先
登記事項証明書会社の基本情報
決算書類事業の安定性・継続性
採用理由書なぜその外国人を採用するのか
組織図配属部署、担当業務、上司

本人側では、在留カード、パスポート、履歴書、職務経歴書、学歴証明書、資格証明書などが必要になることがあります。

企業側で特に重要なのは、職務内容説明書です。

単に「営業」「事務」「エンジニア」「マーケティング」と記載するだけではなく、次のような点を具体的に整理するとよいでしょう。

・配属部署
・担当業務
・業務の割合
・使用する専門知識
・使用する外国語
・顧客、取引先
・作成する資料
・日本人社員との役割分担
・前職の業務との違い
・本人の学歴・職歴をどのように活かすか

会社側の資料と本人側の資料が矛盾している場合、就労資格証明書の審査だけでなく、次回の在留期間更新時にも問題になる可能性があります。

外国人社員の在留期間更新で企業が準備すべき資料については、関連記事「外国人社員の在留期間更新で会社が準備すべき書類」もご参照ください。

6. 転職時の所属機関に関する届出にも注意

外国人が転職した場合、就労資格証明書とは別に、所属機関に関する届出が必要になることがあります。

「技術・人文知識・国際業務」など、日本の会社との契約に基づいて活動する在留資格を持つ中長期在留者は、前職との契約が終了した場合や、新しい会社との契約を締結した場合、原則として14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。

具体的には、次のような場合です。

・前職を退職した
・新しい会社に入社した
・契約機関の名称や所在地が変わった
・勤務先が消滅した

所属機関に関する届出は、就労資格証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請とは別の手続です。

外国人社員の転職では、次の手続を分けて考える必要があります。

・所属機関に関する届出
・就労資格証明書交付申請
・在留期間更新許可申請
・在留資格変更許可申請
・企業側の外国人雇用状況届出

転職時の在留資格と届出全体については、関連記事「外国人社員が転職した場合、在留資格はそのままでよいのか」で詳しく解説しています。

7. 就労資格証明書を取得した場合の意味

就労資格証明書を取得すると、申請時に提出した転職先での職務内容について、現在の在留資格で行うことができる活動であることを確認しやすくなります。

これは、外国人本人にとってだけでなく、採用する企業にとっても安心材料になります。

ただし、就労資格証明書を取得したからといって、その後の在留期間更新許可が必ず認められるわけではありません。

次回の更新時には、就労資格証明書取得後の事情も含めて審査されます。

たとえば、次のような事情が変わっている場合には、改めて確認が必要です。

・申請時と実際の職務内容が異なっている
・雇用契約が変更されている
・報酬が下がっている
・勤務先の経営状況が変化している
・担当業務が単純作業中心になっている
・在留状況や届出状況に問題がある

したがって、就労資格証明書は、「将来の更新を完全に保証する証明書」ではなく、証明書交付時点の活動内容について確認を受けるための文書と理解する必要があります。

8. 企業が就労資格証明書の提出を求める場合の注意点

企業が外国人を中途採用する際、就労資格証明書の提出を求めたいと考えることがあります。

就労資格証明書は、企業が外国人の就労可否を確認する上で有用です。

ただし、就労資格証明書を提出しないことだけを理由として、不合理な不利益取扱いをすることは避ける必要があります。

企業は、次の資料も含めて総合的に確認します。

・在留カード
・パスポート
・指定書
・資格外活動許可の有無
・現在の在留資格
・在留期限
・学歴・職歴
・前職の職務内容
・転職後の職務内容
・雇用契約書

就労資格証明書だけに頼るのではなく、採用前に職務内容と在留資格の整合性を確認することが大切です。

9. よくある注意点

就労資格証明書に関しては、次のような点に注意が必要です。

・取得すれば必ず次回更新が許可されると誤解している
・転職後の仕事内容を十分に整理していない
・職種名だけで申請内容を説明している
・会社資料と本人資料に整合性がない
・在留期限が近いのに証明書申請を先に考えている
・本人の学歴・職歴と業務内容の関連性を確認していない
・現場作業や単純作業が主な業務になっている
・転職時の所属機関に関する届出を忘れている
・就労資格証明書と在留資格変更許可を混同している
・外国人雇用状況の届出を忘れている

就労資格証明書は、転職時の不安を軽減するために有効な手続きですが、万能ではありません。

取得の必要性は、在留資格、仕事内容、在留期限、転職先企業の状況によって判断する必要があります。

外国人雇用で不許可になりやすいポイントについては、関連記事「外国人雇用で不許可になりやすいケースと事前対策」も参考になります。

10. まとめ

就労資格証明書は、外国人が現在の在留資格で行うことができる就労活動を確認するための文書です。

特に転職時には、次のような場合に取得を検討する意味があります。

・前職と転職後の仕事内容が異なる
・現在の在留資格で働けるか不安がある
・次回更新まで在留期限に余裕がある
・企業側が採用前に就労可否を確認したい
・学歴・職歴と業務内容の関連性に不安がある

外国人社員を中途採用する場合には、在留カードの在留資格名だけで判断せず、実際の仕事内容と在留資格の関係を確認することが重要です。

また、就労資格証明書だけでなく、所属機関に関する届出、在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、外国人雇用状況の届出についても、それぞれ必要性を確認する必要があります。

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参考資料・出典

就労資格証明書交付申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
就労資格証明書(入管法第19条の2) 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留期間更新許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留期間の更新(入管法第21条) 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格変更許可申請 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格一覧表 出入国在留管理庁ウェブサイトより