Ⅶ-8.海外駐在経験者・国際業務経験者を採用する場合の在留資格

Ⅶ 高度人材・企業内転勤・グローバル人材

海外駐在経験者や国際業務経験者を日本企業で採用する場合、在留資格の選択では、その経験を日本でどのように活かすかが重要になります。

外国人本人が海外勤務の経験を持っている場合でも、日本で予定している仕事が在留資格に合っていなければ、そのまま就労することはできません。

企業からは、次のような相談を受けることがあります。

・海外駐在経験がある外国人を採用する場合、技人国でよいですか
・海外営業経験者を日本で採用したい場合、どの在留資格になりますか
・国際業務経験があれば学歴は不要ですか
・通訳・翻訳経験者を採用する場合はどうなりますか
・海外現地法人で働いていた人を日本法人で雇えますか
・企業内転勤と中途採用は何が違いますか
・高度専門職を検討できる場合はありますか

海外駐在経験や国際業務経験は、在留資格申請で有利に働くことがあります。

しかし、経験があるだけでは足りません。

本人の経験、日本での職務内容、会社の事業内容、雇用契約、報酬水準を整理する必要があります。

検討される主な在留資格

海外駐在経験者・国際業務経験者を採用する場合、主に次の在留資格を検討します。

ケース検討する在留資格
日本企業で専門的・国際的業務を行う技術・人文知識・国際業務
海外拠点から日本拠点へ転勤する企業内転勤
日本で経営・管理を行う経営・管理
高度人材ポイントに該当する高度専門職
会議・商談・視察など短期滞在短期滞在

最も多く検討されるのは、技術・人文知識・国際業務です。

海外営業、貿易実務、マーケティング、通訳・翻訳、海外子会社管理などは、業務内容によって技術・人文知識・国際業務の対象となることがあります。

技術・人文知識・国際業務を検討する場合

海外駐在経験者や国際業務経験者を日本で採用する場合、技術・人文知識・国際業務を検討することが多くあります。

出入国在留管理庁は、技術・人文知識・国際業務について、自然科学又は人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、又は外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事する活動と説明しています。
(出典:在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

対象となりやすい業務には、次のようなものがあります。

・海外営業
・貿易実務
・海外市場調査
・海外調達
・海外子会社管理
・国際物流
・通訳、翻訳
・海外向けマーケティング
・海外顧客対応
・外国語による広報
・国際契約関連業務

海外駐在経験がある場合、その経験と日本での業務内容がつながっていることを説明することが重要です。

実務経験をどう証明するか

国際業務では、関連業務について原則として3年以上の実務経験が問題になることがあります。

本人が海外駐在や国際業務を経験している場合、その経験を客観的に示す資料が必要になります。

確認すべき資料は、次のとおりです。

・在職証明書
・職務経歴書
・雇用契約書
・辞令
・海外駐在証明
・担当業務証明
・給与資料
・取引資料
・プロジェクト資料
・通訳・翻訳実績
・海外営業実績
・顧客対応実績

単に「海外勤務経験あり」と履歴書に書くだけでは不十分です。

どの国で、どの会社で、どのような業務を、どの期間担当していたかを具体的に説明します。

学歴との関係

技術・人文知識・国際業務では、本人の学歴や職歴と、日本での業務内容との関連性が重要です。

大学を卒業している場合、専攻と業務内容の関連性は比較的柔軟に見られることがあります。

一方、専門学校修了者の場合は、専攻内容と業務内容の関連性がより重要になります。

海外駐在経験者の場合、学歴と職歴の両方を組み合わせて説明します。

たとえば、次のような整理です。

本人の経歴日本での業務説明の方向性
経済学専攻、海外営業経験海外営業学歴と職歴の双方から説明しやすい
日本語学専攻、通訳経験通訳・翻訳国際業務として説明しやすい
工学専攻、海外工場勤務生産技術、品質管理技術分野として説明しやすい
学歴不明、海外現場作業のみ日本での現場作業技人国では難しい可能性がある

海外経験があるからといって、どの業務でも認められるわけではありません。

企業内転勤との違い

海外駐在経験者を日本へ受け入れる場合、企業内転勤と技術・人文知識・国際業務のどちらを検討するか迷うことがあります。

企業内転勤は、海外拠点から日本拠点への期間を定めた転勤を前提とする在留資格です。

一方、技術・人文知識・国際業務は、日本の会社との契約に基づいて専門的業務を行う在留資格です。

たとえば、海外子会社の社員を日本本社へ一定期間転勤させる場合は、企業内転勤を検討します。

一方、海外勤務経験のある外国人を日本法人が直接採用する場合は、技術・人文知識・国際業務を検討することがあります。

高度専門職を検討できる場合

海外駐在経験者や国際業務経験者の中には、学歴、職歴、年収、日本語能力などにより、高度専門職を検討できる方もいます。

高度専門職は、高度人材ポイント制で70点以上となる外国人材を対象とする在留資格です。

出入国在留管理庁は、高度人材ポイント制について、学歴、職歴、年収などをポイント化し、高度外国人材に出入国在留管理上の優遇措置を講ずる制度として案内しています。
(出典:高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより)

特に、海外駐在経験、管理職経験、高年収、日本語能力、修士・博士号などがある場合には、ポイント計算を行う価値があります。

企業が確認すべきポイント

海外駐在経験者・国際業務経験者を採用する場合、企業は次の点を確認します。

・本人の在留資格の有無
・海外での勤務先
・海外での職務内容
・勤務期間
・日本での担当業務
・学歴、専攻
・職歴との関連性
・報酬水準
・日本側企業の事業内容
・海外取引の実態
・必要な在留資格申請の種類
・高度専門職の可能性

海外経験をどのように日本で活かすのかを、採用理由と職務内容に落とし込むことが大切です。

まとめ

海外駐在経験者・国際業務経験者を採用する場合、在留資格では、経験の有無だけでなく、その経験を日本での業務にどう活かすかが重要です。

この記事のポイントを整理すると、次のとおりです。

・海外駐在経験者や国際業務経験者の採用では、技術・人文知識・国際業務を検討することが多い
・海外拠点から日本拠点への転勤であれば、企業内転勤を検討する
・日本で経営や管理を行う場合は、経営・管理を検討する
・学歴、職歴、年収等により高度専門職を検討できる場合もある
・海外勤務経験は、在職証明書や職務経歴書などで証明する必要がある
・日本での業務内容と海外経験がつながっていることが重要である
・単なる現場作業や単純作業では技人国に該当しにくい
・企業は、採用理由、職務内容、海外取引の実態を整理する必要がある

海外経験のある外国人材は、日本企業にとって大きな戦力になります。

ただし、在留資格申請では、経験の内容と日本での職務内容を丁寧に結び付けて説明することが重要です。

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参考資料・出典

在留資格「技術・人文知識・国際業務」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 出入国在留管理庁ウェブサイトより
在留資格「企業内転勤」 出入国在留管理庁ウェブサイトより
高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度 出入国在留管理庁ウェブサイトより