0-4. 行政書士は在留相談をどう整理しているのか|所在地・目的・身分から考える基本フロー

∞ 在留資格の基礎知識・総論

外国人の在留資格に関する手続きは、最初に全体像を整理しないと分かりにくくなりがちです。

たとえば、次のような相談があります。

  • 海外にいる外国人を日本の会社で採用したい
  • 日本にいる留学生を卒業後に正社員として雇用したい
  • 外国人配偶者を日本に呼びたい
  • 日本人と結婚したので在留資格を変更したい
  • 外国人社員の家族を日本に呼びたい
  • 日本で会社を設立して経営したい
  • 現在の在留資格を更新したい

これらはすべて「入管手続き」「在留資格申請」と呼ばれることがありますが、必要な手続きや確認すべきポイントはそれぞれ異なります。

この記事では、行政書士が外国人のお客さまや企業のご担当者さまから在留資格に関するご相談を受ける際、本人の所在地・日本での目的・身分関係等の基本情報をどう整理して処理を進めているのか、その基本フローについて解説します。


いきなり在留資格名から考えない

在留資格の手続きでは、最初から「どの在留資格で申請するか」を決めようとすると、かえって混乱することがあります。

たとえば、「就労ビザを取りたい」という相談でも、実際には次のように状況が分かれます。

相談内容実際に確認すべきこと
外国人を採用したい本人は海外にいるのか、日本にいるのか
留学生を正社員にしたい留学から就労系在留資格への変更が必要か
外国人社員を転職採用したい現在の在留資格でその仕事ができるか
配偶者を日本に呼びたい日本人の配偶者等か、永住者の配偶者等か
家族を呼びたい家族滞在に該当する家族関係か
会社を設立したい経営・管理の要件を満たせるか

在留資格は、本人の希望だけで決まるものではありません。
本人が今どこにいるのか、日本で何をするのか、どのような家族関係や身分関係があるのかを順番に確認する必要があります。


第1段階:本人は今どこにいるか

最初に確認するのは、外国人本人が現在どこにいるかです。

① 本人は今どこにいるか
├─ 海外にいる
│ └─ 日本へ呼び寄せる手続き
│ → 在留資格認定証明書交付申請を検討

└─ 日本にいる
├─ 現在の在留資格を確認
├─ 在留期限を確認
├─ 現在の活動内容を確認
└─ 変更・更新・取得などを検討

海外にいる方を日本へ呼び寄せる場合には、通常、在留資格認定証明書交付申請が問題になります。在留資格認定証明書は、日本で行おうとする活動内容が在留資格に該当することなどを、入国前にあらかじめ確認するための手続きです。

一方、すでに日本にいる方の場合は、現在の在留資格を確認したうえで、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、在留資格取得許可申請などを検討します。


第2段階:日本で何をするのか

次に、日本で何をする予定なのかを整理します。

② 日本で何をするのか
├─ 専門職として働く
│ └─ 技術・人文知識・国際業務など
├─ 海外関連会社から日本へ転勤する
│ └─ 企業内転勤
├─ 日本で会社を経営する
│ └─ 経営・管理
├─ 人手不足分野で働く
│ └─ 特定技能
├─ 日本の学校で学ぶ
│ └─ 留学
├─ 家族と一緒に暮らす
│ └─ 家族滞在、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など
└─ 長く日本に住み続けたい
└─ 永住許可申請など

ここで大切なのは、表面的な肩書きではなく、実際の活動内容を確認することです。

たとえば、企業が「海外営業」として外国人を採用する場合でも、実際の業務が海外顧客との交渉、貿易実務、通訳・翻訳、マーケティングなどであれば、就労系在留資格を検討しやすくなります。

一方で、実際の業務が倉庫作業、梱包、単純な製造ライン作業などに偏っている場合は、「技術・人文知識・国際業務」として説明することが難しい場合があります。


第3段階:活動に基づく資格か、身分に基づく資格か

在留資格は、大きく分けると、活動に基づくものと、身分・地位に基づくものがあります。

分類主な例確認するポイント
活動に基づく在留資格技人国、企業内転勤、経営・管理、留学、家族滞在など日本で何をするのか
身分・地位に基づく在留資格日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、永住者、定住者などどのような身分・家族関係があるのか

たとえば、日本人と結婚している外国人であっても、必ず「日本人の配偶者等」にしなければならないわけではありません。現在の就労系在留資格で働き続けることもあり得ます。

反対に、就労系在留資格で日本にいる方が日本人と結婚した場合、今後の生活状況によっては「日本人の配偶者等」への変更を検討することがあります。

つまり、在留資格は一つの事情だけで決まるのではなく、本人の活動、身分関係、生活の実態を合わせて考える必要があります。


第4段階:該当性・適合性・相当性を確認する

在留資格の候補が見えてきたら、次に確認するのが、該当性・基準適合性・相当性です。

③ 審査で確認される主な考え方
├─ 該当性
│ └─ その在留資格に当たる活動・身分か
├─ 基準適合性
│ └─ 学歴・職歴・報酬・事業規模などの基準を満たすか
└─ 相当性
└─ 許可してよい事情があるか

在留資格変更許可申請では、申請する活動が入管法上の活動や身分・地位に該当し、かつ変更を適当と認めるに足りる相当の理由があることが審査基準として示されています。

また、変更・更新の判断では、活動内容、在留状況、在留の必要性などを総合的に考慮するとされています。

このため、「この在留資格に当たりそうか」だけではなく、「要件を満たしているか」「これまでの在留状況に問題がないか」も確認することが重要です。


第5段階:書類で説明できるか

在留資格申請では、本人の説明だけでなく、書類で事実関係を示す必要があります。

確認する内容主な資料の例
本人確認パスポート、在留カード
学歴卒業証明書、成績証明書
職歴職務経歴書、在職証明書
雇用内容雇用契約書、労働条件通知書、職務内容説明書
会社の状況登記事項証明書、決算書、会社案内
家族関係戸籍、婚姻証明書、出生証明書
収入・生活基盤課税証明書、納税証明書、給与明細
特別な事情理由書、説明書、経緯書

たとえば、外国人を採用する場合には、仕事内容、本人の学歴・職歴、会社の事業内容を資料で説明します。

配偶者を日本に呼ぶ場合には、婚姻関係、交際・婚姻の経緯、生活基盤などを整理します。


在留相談を整理する全体フロー

全体を一つの流れにすると、次のようになります。

外国人の在留相談

① 本人は今どこにいるか
├─ 海外
│ └─ 在留資格認定証明書交付申請を検討
└─ 日本
├─ 活動を変える → 在留資格変更許可申請
└─ 同じ活動を続ける → 在留期間更新許可申請

② 日本で何をするか/どのような身分関係か
├─ 専門職として働く → 技術・人文知識・国際業務
├─ 海外関連会社から転勤 → 企業内転勤
├─ 会社を経営・管理 → 経営・管理
├─ 人手不足分野で働く → 特定技能
├─ 就労者・留学生の扶養家族 → 家族滞在
├─ 日本人・永住者の配偶者・子 → 日本人の配偶者等・永住者の配偶者等
└─ 日系人・連れ子・特別な家族関係等 → 定住者

③ 該当性・基準適合性・相当性を確認

④ 申請書・理由書・証拠資料で説明

このように整理すると、自分の状況でどの手続きが関係するのか、どの資料を準備する必要があるのかが見えやすくなります。


よくある誤解

在留資格の相談では、次のような誤解がよくあります。

  • 「ビザを取りたい」と言えば、手続きは一つだと思っている
  • 海外にいる人も日本にいる人も同じ申請だと思っている
  • 結婚すれば自動的に配偶者の在留資格が認められると思っている
  • 留学生を卒業後そのまま正社員として働かせられると思っている
  • 転職しても在留資格は一切気にしなくてよいと思っている
  • 書類をそろえれば理由の説明は不要だと思っている

実際には、本人の所在地、日本での目的、現在の在留資格、家族関係、受入先の状況などを整理しながら手続きを選ぶ必要があります。


まとめ

外国人の在留資格に関する手続きは、まず本人が海外にいるのか日本にいるのかを確認するところから始まります。

そのうえで、日本で何をするのか、どのような身分関係があるのかを整理し、該当性・基準適合性・相当性を確認します。

在留資格名だけで判断するのではなく、本人の状況と資料で説明できる内容を順番に整理することが大切です。


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