在留資格「企業内転勤」の審査見直し|外国人社員の転勤申請で企業が確認すべきこと

近年、外国人社員を海外拠点から日本の本社・支店・関連会社などに転勤させる場合の在留資格「企業内転勤」について、審査や提出書類の取扱いが見直されています。

企業内転勤は、外国にある本店、支店、子会社、関連会社などから、日本にある本店、支店その他の事業所へ、一定期間転勤する外国人社員を受け入れるための在留資格です。一般には「企業内転勤ビザ」と呼ばれることもありますが、正確には在留資格の一つです。

海外拠点で勤務している外国人社員を日本に呼び寄せる場合、企業側としては、単に転勤命令を出せば足りるというものではありません。日本で予定している業務内容、転勤前の勤務実態、海外拠点と日本側事業所との関係などを、在留資格の制度に沿って説明する必要があります。

企業内転勤の審査で重視されるポイント

企業内転勤の申請では、申請人が来日前にどの事業所で勤務していたのか、その事業所が実際に活動している拠点なのか、申請人本人がどのような業務に従事していたのか、といった点が重要になります。

今回の見直しで特に重視されているのは、単に「海外の会社に在籍していた」という形式的な説明ではなく、実際にどの事業所で、どのような業務に、どの程度の期間従事していたのかを、客観的な資料で示すことです。

たとえば、転勤前に勤務していた海外事業所について、法人登記に関する資料、納税状況、取引実績などの資料が求められる場合があります。また、申請人本人の過去1年間の業務内容、地位、報酬などを示す文書や、社会保険加入証明等により、勤務実態を確認することも想定されます。

日本で勤務する予定の事業所についても、事業所の存在や活動実態を説明できる資料を準備することが重要です。

「審査が厳しくなった」とだけ考えないことも大切

このような動きを「審査が厳しくなった」とだけ捉えると、企業や申請人にとっては不安を感じるかもしれません。

しかし、見方を変えれば、企業内転勤という在留資格が本来予定している制度趣旨に沿って、申請内容と実態が一致しているかを、より丁寧に確認する運用になっているともいえます。

従来は、在職証明書や転勤命令書などを中心に説明していたケースでも、今後はそれだけでは十分でない場合があります。海外拠点の実在性、海外での勤務実態、日本で予定されている業務内容、転勤期間の必要性、転勤前後の企業間関係などを、申請書類全体の中で矛盾なく説明することが求められます。

在留期間についても説明の整合性が重要

企業内転勤の在留期間は、5年、3年、1年又は3月のいずれかとされています。

どの期間が認められるかは、申請内容や活動予定、受入れ企業の状況などを踏まえて判断されます。そのため、単に長い在留期間を希望するのではなく、なぜその期間、日本で勤務する必要があるのかを、転勤計画や業務内容と整合する形で説明することが大切です。

たとえば、日本で担当するプロジェクトの内容、予定されている業務の期間、海外拠点との役割分担、日本側での勤務終了後の予定などを整理しておくことで、申請内容に説得力を持たせることができます。

説明や資料に不整合がある場合のリスク

提出資料や説明内容に不整合がある場合、あるいは勤務実態や事業実態について十分に説明できない場合には、在留資格認定証明書が不交付となったり、在留資格変更・更新が不許可となったりする可能性があります。

したがって、企業側としては、「これまで同じような形で許可されたから今回も大丈夫」と考えるのではなく、現在の運用に即して、あらためて資料と説明内容を確認する姿勢が必要です。

特に、海外拠点での勤務実態、日本で予定している業務内容、転勤前後の企業間関係については、申請書、理由書、添付資料の内容が互いに矛盾しないように整理しておくことが重要です。

外国人材の受入れと制度への信頼

近年、日本に在留する外国人の数は増加しており、外国人材は多くの企業や地域社会にとって欠かせない存在となっています。

その一方で、在留資格の制度趣旨に合わない利用や、申請内容と実際の活動内容が一致しないケースがあれば、制度全体への信頼が損なわれてしまいます。

本来、適正な形で外国人社員を受け入れたい企業や、日本で専門性を活かして働きたい外国人の方にとって、制度の信頼性が保たれることは重要です。

短期的には、準備すべき資料が増えたり、説明に手間がかかったりする面があるかもしれません。しかし、中長期的に見れば、制度趣旨に沿った受入れが徹底されることは、企業にとっても、外国人社員にとっても、安定した就労環境につながるものと考えられます。

企業が申請前に確認しておきたいこと

企業内転勤の申請では、単に必要書類をそろえるだけでなく、転勤の必要性、海外での勤務実態、日本での業務内容、受入れ企業の体制を一つの流れとして整理することが大切です。

申請前には、少なくとも次のような点を確認しておく必要があります。

  • 海外拠点が実際に事業活動を行っていることを説明できるか
  • 申請人本人が海外拠点で継続して勤務していたことを示せるか
  • 日本で行う業務内容が企業内転勤の在留資格に合っているか
  • 転勤期間の必要性を合理的に説明できるか
  • 海外拠点と日本側事業所との関係を資料で示せるか
  • 申請書、理由書、添付資料の内容に矛盾がないか

これらの点を事前に確認し、説明に不自然な点がないかを見直しておくことが、不交付・不許可のリスクを下げることにつながります。

まとめ

日本で働きたいと考える外国人の方々と、そうした人材を受け入れたい企業が、安心して活動できる環境を整えるためには、制度を正しく理解し、実態に合った申請を行うことが欠かせません。

企業内転勤の申請では、海外拠点での勤務実態、日本で予定している業務内容、転勤期間の必要性、企業間関係などを、全体として整合性のある形で説明することが重要です。

行政書士としても、企業と外国人の方々の双方にとって無理のない形で、適正な在留資格申請が進められるよう、事実関係の整理、必要書類の確認、理由書や説明資料の作成などを通じて、少しでもお役に立てればと考えています。